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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0004-05

 その道を進んでいくと森へと出た。薄気味悪いその森をただ好奇心で進んでいく四人。そして、一件の廃墟を見つけた。


 それは、昔の豪華な屋敷だったようで、壁には植物が根をはっているが、崩れる様子はない。


「入ってみようぜ」

 ゼエシが三人の肩を押す。そうして、少しずつ廃墟に近づかせていく。


 だが、他の三人もそんなに怖いと感じている訳でもなく恐る恐るというように屋敷に足を踏み入れいった。



 重い音ともに簡単に扉が開いた。周りは明るいのに中は薄暗かった。見た目と同じような穴が所々に開いていれば普通もう少し明るくても良い気がするが。



「暗いな!」

「怖いよぉ」

 さっきは張り切っていたムムルが突然怖がりだした。


「もう帰ろようよぉ」

「そうだよ。みんな、帰ろうよ」

 カーミレが男二人に進言するが聞いてもらえなかった。


「なら、俺達だけで行こうぜ。弱虫二人は置いてさ」

「え、あ、う、うん。そうだね」

 セールがどもったのが少し気になったが後ろを向いて扉に向かった。



 おかしい、扉は先程まで開いていたはずだ。誰も閉めなかったはずである。なのに、今は閉まっている。


 カーミレが閉じた扉を開けようと押した。全く動かない。ピクリともしない。

「あれ?開かない………」

「もう、驚かさないで!カー」


 もう、恐怖で涙目になっているムムルである。ならなぜ、入ってみよう等と言ったのか不思議である。


「いや、本当だよ。ムムルちゃん。ムムルちゃんも一緒に押して!」

「せーのっ!」

 二人でドアに手をついて押してみるも全く動かない。このドアがとても重い訳ではない。先程までゼエシが簡単に開けていたのだから。


「ほら、開かないでしょ?」

「どうしよう」

 どうやっても、開かなかった。押しても引いてもダメだった。これでは、外に出られない。

 ムムルが絶望的な顔をする。帰れないと理解できたのだろう。窓も高いところにしかなく身長が足りないし、奥に行けば行くほど闇が濃くなっていて入りたくない。


 どうすればここを抜け出せるかを考え出して数十分。突然、声が響き渡った。ゼエシのでもセールのでもない。もちろん、ムムルでもカーミレのでもない声。




──アソボウヨ


──ネェ、アソボウ!



──ボクタチト、イッショニサ




──シヌマデアソボウ!



 不気味な声だ。幼い子供のような声だ。遊ぼう遊ぼうとしきりに声をかけてくる。



 ゼエシとセールも悲鳴をあげて戻ってきた。二人とも汗だくになっている。ずっと走ってきたからでは、ないだろう。




「なぁ、遊ぼう遊ぼうって声がっ」

「したよね!」

 セールとゼエシが凄い形相で聞いてきた。必死だったのだろう。カーミレもムムルも聞こえたと答えた。声が震えている。怖くなってきたのだろう。


「うん。したよ」

「怖いよ。怖いよぉ。ねぇ、誰か助けてよ!」

 カーミレがそのまま普通に返答する。実はカーミレにとって、闇や霊とはあまり怖いものではない。もちろん、怖いのは怖い。一番怖いのが、ヨイヅキがキレた時である。


「外に出ないなんだよ。早く出ようぜ」

 ゼエシがそう言うが、ムムルとカーミレはドアが全く動かないことを知っている。


「うん。そうなんだけどね。ドア、開かないの……」

 それを、しったゼエシもセールも泣きそうになっている。ムムルは泣き出した。カーミレも泣きたかったが、このまま泣いていても何も始まらないのだ。


「もうダメだっ。ここで、死んでしまう!」

 悲壮感を漂わせて、ゼエシが言った。



「おかぁさぁん!おとぉさぁん!助けて!助けてよ、」

 ムムルが大声で泣き出した。それに釣られてセールも、その後をすぐ追うようにゼエシも泣き出した。唯一泣いていないのはカーミレだけである。



「大丈夫!ヨイヅキを怒らせて影の中に閉じ込められた時よりも恐くない」

「ヨイヅキって、カーミレおとうさん?」

「うん、そうだよ」

 カーミレを何をしたのかというと、一度だけヨイヅキの逆鱗に触れたのだ。カーミレは深くは思い出したくないので必死に忘れようとしていた。



 どのくらい時間が経ったのか分からないが、昼時は確実に過ぎたであろう時間だった。突然、地面が揺れたのだ。縦に横にと激しい揺れだ。泣き声は直ぐに悲鳴へと変わる。両親を呼ぶ声が聞こえた。



 そんな時に、カーミレに名案が浮かんだ。


「そうだっ!黒兎!黒兎さん出てきて!」

「お呼びですか?影と茨の魔術師のお弟子サマ」

 やはり、影から黒兎がでてきた。カーミレ以外の子供達は驚きすぎてもはやポカンとしている。


 知っている人は知っているが知らない人は全く知らないのが、情報屋 黒兎である。



「ねぇ、ヨイヅキの所に連絡してくれない?」

「対価は何を頂けますか?」

 カーミレははっとした。忘れていたのだ。黒兎と交渉するには対価が必要だと言うことを。



「対価は、ない」

「なら依頼はお受けできませんね。では、」

 すぅ、と影にまた消えていった。とうとう、カーミレも泣きそうになっきてた。


 現れては直ぐに消えた黒兎を見て、三人は何だったのだろうと首をかしげた。カーミレが何かしたのは合っているが、何をしたのかと。


 ヨイヅキは頼らないようにと、カーミレは思っていた。カーミレの居場所なんて黒兎に聞けば直ぐに分かるからだ。


「助けて………ヨイヅキ……」

「自分で打開策を見つけようと頑張ったみたいだな。偉いぞ。初めから頼るのと考え抜いて頼るのとは意味が違うからな。助けに来たぞ」

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