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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0004-04

 いつものように早朝、まだ太陽が顔を出す少し前にヨイヅキは朝食を作り始める。


 そして、太陽が顔を出した頃には朝食が完成する。それから、カーミレを起こしに行く。いつもの流れである。



 朝食を終えてから一休みした後に魔術の訓練を始める。最近では難易度の高い魔術も習得し始めてきて、成長が目覚ましい。


 教える師としては、喜ばしいものである。



「ここは幻想なりて現実に在らず。幻想の死は幻想のまま忘却される」

 影と膨大な魔力を消費して現実世界から庭を一時的に切り離す。


 こうする事で、どんな致死性の魔術を放っても死なないと言う訳だ。




「密かに忍び寄る死の氷。敵自らの影から飛び出して、その頭を穿て!」

 カーミレが慣れた手つきで得意な魔術を詠唱する。すると直ぐに、ヨイヅキの影から氷が飛び出してくる。


「茨は幾重にも重なる」

 ヨイヅキの高度な簡略化した魔術により氷が砕け散る。キラキラと太陽の光を乱反射させて地面に落ちた。




「密かに忍び寄る氷。自らの影からその頭を穿て!」

 先程のイメージから詠唱を少しずつ簡略化させていく。いきなり詠唱を簡略化出来たのでカーミレは驚いていた。


「茨は幾重にも重なる」

 しかしそれすらも防がれてしまう。今までで一度もヨイヅキに傷を付けたことはない。



「咲く花のように、氷でできた茨が捕まえるかんじ………うん!」

 ぶつぶつと何かを呟いた後に納得したような顔をして詠唱を始めた。



「茨の氷は絡み付き動きを止める。凍てつくその身は温もりを奪う」

 地面から氷の茨がヨイヅキに絡み始めた。周りの水蒸気が凍る程の冷気を放っているようだ。



「これは一本取られたな。だが、」

 ヌルリと影に沈む。ヨイヅキの姿が一瞬で消える。残ったのは氷の茨だけである。



「これで俺の勝ちだな」

 カーミレの影から現れて、杖で首もとを押さえる。



「負けた!次こそっ」

「だが、成長してるな。最後の魔術もだが、詠唱の簡略化は驚いたぞ。簡略化なんて出来るやつの方が少ないからな」

 杖を下ろして頭を撫でると嬉しそうに笑った。

「えへへ。ありがと!」


 こうしていてものように、訓練が終わる。



 この後は、いつも友達と遊びに行くことが多い。まだなんと言っても子供である。遊びたい盛りなのである。昼前には一度ちゃんと戻っては来てくれるので安心してヨイヅキも遊びに行かせられる。



「ムムル、セール、ゼエシおはよう!」

「おはよう!カー」

「おはよう」

「おはよ」

 カーはカーミレを略した愛称である。ムムルがいつも使っている。


「今日は何して遊ぶ?」

 四人が頭を悩ませる。最近は色々なことをやり尽くしたのである。鬼ごっこはカーミレの驚異的なスペックに普通の子供が勝るはずもなく、かくれんぼは広すぎて誰も見つけきれない。


「ねぇ、大通りを探検しない?」

 ムムルが無邪気に言った。大通りはいつも通る所なので探検と言っても知り尽くしている気がするが、友達と見て回れば違う景色も見えるだろう。


 全員が賛成したのでそのまま大通りに向かった。




 大通りはいつものように賑わっていた。小遣いを持っている訳でもないので何も買えないが見て回るだけでも少し楽しかった。

 ゆっくりと歩くと目に入ってくる街路樹の葉や飛び交う蝶の羽の色彩の美しさ。


「見て見て!あそこ!面白そうじゃない?」

 そこは大通りの右に空いた道路だった。昼間なのに真っ暗で、何もない。だが、恐怖心よりも好奇心が勝っているのは目を見ればわかる。


「入ってみようよ!探検しよ!」

 ムムルがそう言って、カーミレの手を引っ張っていった。大丈夫なのかよ?とセールが言うが、大丈夫!危なかったら逃げればいいとお気楽なことを言われた。そして、二人もまた大通りからそれた道に入っていく。

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