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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第一章 始まりや出会い
21/65

壱之刻と剣鬼

0004話ではありません。すいません。


壱之刻討伐者が、どのように一人で討伐したかが書かれています。

 妾はアズサ・ツキノキじゃ。東の最果て、トウヨウの出じゃ。まぁ、妾は特異体質《魔力反発》のせいでトウヨウを追い出されたの身じゃがのぉ。


 自慢になるが、妾。剣士としては右に出る者は居ないと思っておる。もっとも、剣士自体がほとんど居らんがな。


 妾がそあ自負する理由は、斬りたいモノだけを斬る、トウヨウの里でも妾以外誰一人として出来なかったことができるからのう。頂に立つ者、剣鬼、剣聖などと言われていたものじゃ。少しの間だけ、だがの。ま、それも昔の話じゃ。



 だが、今のこの世。特異体質《魔力反発》は足枷じゃ。魔術が使えねば魔獣を狩れぬのが一般常識。剣や弓は魔獣には効かぬのは周知の事実、妾クラスになれば剣のみで倒せるがのぉ。ゆえ、いつも一人じゃ。誰も妾の相手などしてくれぬ。もはや、この体質は呪いのようなものじゃ。



「きっ、緊急事態発生!緊急事態発生!直に神殿に避難を!戦えるものは城門前にっ。敵は一体!恐らく、十刻災厄の壱之刻と思われる。これは、黒兎から得た情報であるっ」

 おうおう、町を眺めていたら面白いことになったのぉ。十刻災厄か。妾達の祖先も戦ったと言われているのぉ。確か、壱之刻《魔術師》だったかの?それに黒兎、か。あの者、本当にどこにでも現れるのはじゃな。驚きじゃ。


 これは、妾が行かぬとダメじゃのお。なにせ、特異体質《魔力反発》の本当の名は《魔術師殺し》なのじゃ。


 なぜなら、魔術を放てぬ変わりに妾に向かって放たれた魔術は魔術を放った本人に跳ね返っていくか逸れて地面に暴発するかのどちらかじゃ。


 壱之刻は、魔術に特化しておる。だからこそ、妾のような体質の戦士がひつようであろう。


 さて、準備して行くとするかのぉ。





※※※





 ふむ、少し遅かったかのぉ。轟く悲鳴に濃い血の臭い。所々、土が抉れておる。そして、平野の真ん中には壱之刻がおったわ。真っ白な体に赤い瞳。禍々しいのぉ。


 火を氷を風を土を、全属性の魔術を放ち誰も近づけておらん。


 先程までは俺が首を取ってやると意気込んでおったろうに。情けない。奴らじゃのぉ。



「行くとするかの!星天紅華(セイテンコウカ)

 一振りの剣いや、刀を抜く。抜刀術も好きだがこちらの方が慣れておる。


 刀の銘は、星天紅華(セイテンコウカ)。赤を薄く水で溶いたような色の刀身に落ち着いた青色で編まれた柄の特注品じゃ。


 後は、ただゆっくりと壱之刻に向かって歩いていくだけ。周りで死にたいのかっ!とか、無謀だとか叫ばれているが耳も貸さない。貸せばその分、敵に隙を見せることになる。


 少し近づいた所で業炎が妾に向かって飛んできた。当たれば痛そうじゃ、だが当たればの話だがのぉ。


 いつものように魔術を見る。ただ見るのではないぞ。どこに一番魔力が集まっているか見るのじゃ。



 そして、その一点を集中して斬る。




 さすれば、魔術と言えども斬れるのじゃ。どうじゃ?凄いだろう。秘技の一つじゃ。



 そして、この星天紅華は斬った魔術を吸収することが出来るのじゃ。妾が魔術を使えぬ変わりに刀が吸収し切れ味を底上げする。これで、多少堅くても問題なかろう。



 走る。走る。ひたすら壱之刻に向かって。夥しい量の魔術が雨のように向けられる。しかし、それら全てが右に逸れ左に逸れる。


 地面が魔術の生け贄となり轟音と共に破ぜる。


 砂煙が舞う。視界が奪われる。それでも、音を頼りに近づいていく。




 砂煙が晴れて数メートル先には壱之刻がいた。大きい。三メートルは確実にある。


「妾は、アズサ・ツキノキじゃ。壱之刻《魔術師》と見受けた。その首、頂いていくのじゃ」


「あらあらぁ、怖いわぁ。おねぇさん、こ、わ、が、り、だから。それに、私は知っての通り、十刻災厄が一人ぃ。マジシャンよ?よろしくね?そして、さようならっ!」


 なんと気の抜ける口調じゃ。最後だけ野太かったのじゃ。じゃが、相手は十刻災厄。多少、不思議でも問題なかろう。



 突き出された石の刃を投げつけらる。魔術で飛んでいない。壱之刻(マジシャン)の純粋な腕力で飛ばされたソレを剣で叩き斬る。



「不意打ちとはのぉ。じゃが、妾には当たらぬ」

「そうみたいねぇん。おとなしく、死ねぇ」

 やっぱり攻撃の時、野太くなるのかの?なんだか、無理矢理男が女のフリをしているように見えるのじゃが。



 土を動かし足場を悪くし、石剣で息の根を止めようとしてくる。


 久しぶりに妾は歓喜しておる。魔獣は剣は使わぬ。己の牙で爪で戦う。剣と戦うのは久しぶりじゃ。贅沢を言うならば、刀と戦いたかったがのぉ。



 右から来た石剣には身体の重心をずらして少し動くことで回避していく。こちらが、斬ろうとしても強引に石剣で守られる。型なんてない。ただ振り回しているだけ。


 それでも充分脅威だった。


 そんな光景が、何度も何度も繰り返された。斬られ斬り、避け避けられていく。



「このっ、やるわねっ」

「魔術が使えぬのじゃ。それくらいやらねば、妾は死んでしまうほど弱い存在じゃった」


 過去を、思い出した。兄様はいつも、炎を刀に纏わせた自己の剣技(オリジナル)を持っていた。妾には無い。魔術師としての才じゃ。刀だけなら里で最強の兄様にも勝てる。じゃが、魔術を使われれば勝てないことぐらい分かっておる。




「これで、オシマイよっ。おらっ」

 左腕が妾の前までくる。確かに、避けても右腕が襲ってくるじゃろう。しかし、妾は剣鬼ぞ?


「逆じゃ。仕舞いはヌシじゃ。楽しかったぞ?剣舞・桜吹雪!」


 舞うように、刀をそして自身を動かしていく。紙一重でマジシャンの連撃を交わしていく。


 そして、突き出された左腕が、星天紅華により切断される。ゴロリと地面に落ちる。地面を緑色の液体が汚す。だがそれで、終わらない。次に右肘が切り取られる。左腕と同じように地面に落ちる。


 右肩から心臓に向かって斬られ、ドロリとした液体があふれでる。その間に、マジシャンが声をあげることもなかった。


 額にあった目のような宝石が砕けた。砕けると同時にマジシャンが死んだように動かなくなった。



 チンっ、と小さな音がした。アズサが星天紅華を納刀したのだ。



「ふぅ。楽しかったのじゃ?壱之刻よ。さて、この場はこの場の者に任せて妾は違う町にでも行こうかの?」


 巨体な壱之刻が倒れたのだ。魔術師達がこちらに向かってきている。



「荷物もない、あてもない旅じゃ。金ははあるのでな。思い立ったら吉日という訳じゃ」


 魔術師達の制止も聞かずに、逃げ出すように次の町に向かっていた。

キャラクター紹介!Part2


ヨイヅキ・ソーレイド

性別:男

種族:竜人

 影と茨の竜であり、影と茨の魔術師でもある。黒い髪に瞳で短髪から、細長い耳が出ている。

 最近はカーミレから貰った黒水晶のネックレスをお守り変わりに首からかけている。割りと身長が高い。最近の悩みは、未だにカーミレに本当の事を言えていないこと。


カーミレ・ソーレイド

性別:女

種族:半竜人

 ヨイヅキにより延命のため竜人へと変化させられた少女。金の瞳に藍色の髪から、ヨイヅキよりも少しだけ短い耳が出ている。ここ数ヵ月で髪が伸びてより少女らしくなっている。

 最近、ヨイヅキから貰った戦闘用のローブと杖と靴が宝物であり幸せそうに眺めていることも。


シュトラウス

性別:女

種族:獣人(狐人)

 いつも食事をヨイヅキの家に食べに来る女性。

茶色の髪と瞳。狐の耳がはえている。ナルトリア大神殿の神殿長であった。良く逃げ出しているようだ。それと、元聖女。本人はこの呼ばれ方を嫌っている。

 かなりの酒好きであるが、ヨイヅキが一滴も飲まないので一人で酒を飲みに行く。


黒兎

性別:???

種族:???(恐らく兎人だと思われる)

 誰もその正体を知らない。情報屋であるが、どんな状況でも影か水があれば現れる。

 カーミレの身長の半分程の大きさであるが、人の姿も取れるようだ。ヨイヅキ達の前では子供のような姿をとった。

 ちなみに、対価を払えばなんでも教えてくれるしやってくれる。どこにでも現れる事が出来るので連絡係や郵便配達までやってのける。情報屋なのに。

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