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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第一章 始まりや出会い
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0003-06

 せかせかと急がされて家にたどり着いた。カーミレはそわそわとしている。余程楽しみなのだろう。


「ほら、ローブと靴と杖だ」

 ヨイヅキが持ってきたのはかなり大きい箱だった。ベージュ色に青色のリボンでラッピングしてある。


「開けていい?」

「あぁ。気に入ると良いんだが」

 丁寧にリボンをほどき、中身を覗きこんだ。そして、手を伸ばしてローブを引っ張り出した。


「すごい!ヨイヅキとお揃いだ」

 それはヨイヅキの魔術師としての正装である黒に金の縁取りのされたローブに似ているがかなり意匠が見られて、機能的で可愛らしく仕上がっている。


 黒に青色のラインの入ったローブであり、所々に青色のリボンが入っている。そして、一緒に入っていたのは青水晶のネックレスであった。


 また杖は魔水晶を加工して作られたものである。かなり強固に作ってあるので攻撃を防御するのにも使える。


 それに比べたら靴は地味だった。飴色の革靴である。持ってみるとかなり軽いのだが。


「頑張ったんだぞ。それに、今持っている靴だが、長距離を歩いてもほとんど疲れないようになっているんだ。しかも、履いているだけで疲労回復の効果もある」


 かなりハイスペックな靴である。


「しかも、ローブはシュトラウスにも案を貰って一から俺が創った。自然治癒と対魔防用の魔方陣が書かれている。それに、杖には魔水晶を掘り出した一品だぞ。どれもこれも、カーミレを守ってくれるはずだ」


 全てカーミレを思ってのヨイヅキの自作である。実は、ヨイヅキのローブもカーミレのローブにも竜の鱗が使われている。もちろん、ヨイヅキの鱗である。


 ちょっとやそっとじゃ、破れないのだ。



「こんなの貰っていいの?全部、とっても高そうだけど………」

「良いぞ、貰って。ここで貰われなかったらそっちの方が困る」


 そう言って風呂に入るぞ、と言うと一緒に入る!とカーミレも着いてきた。




 風呂からあがり明日に備えて寝た。







※※※







 朝。日差しが辺りを明るく照らし始める頃。そろそろ鶏が声を上げて鳴き始める。


「ほら、カーミレ!起きろ」

「あと、少しだけぇ」

 声が寝ぼけている。かぶり布団を掴んで離さない。



「今日は依頼を受けるんだろ?」

「いらいぃ?あっ、そうだった!」

 一瞬で眠気を吹き飛ばしたらしい。



 そこから朝食をとって準備を始めた。ヨイヅキもカーミレも揃いのローブを着始める。ヨイヅキはいつも着ているので手慣れているがカーミレはそうではない。苦戦しながらも一人で着られていた。


 シュトラウスには、なにも言っていないがまぁ、今日はきっと来ないだろう。来ないはずである。確証はないが。



「ふぅ。いよいよだね」

「後で怖くなったとか言うなよ?」

 茶化すようにヨイヅキが言う。そうすると、そんなことないもん!と頬を膨らませながら言った。大変、可愛らしい。



「じゃぁ、手始めに」

 ヨイヅキが陰から影へと移動した。移動魔術の《影渡》である。これは何度も失敗をくり返してカーミレも使えるようになっている。しかも、最近はヨイヅキと遜色ない程の出来映えである。


「もう!ヨイヅキの意地悪!」

 ヨイヅキと同様にカーミレも同じ影まで移動する。このような追いかけっこをすること数十回、やっと目的の場所まで来たようだ。



 辺りには木と背丈の低い草が少し生えているだけで後は何もない。岩も石もだ。そんな草原には数十体の猪頭族(オーク)がたむろしていた。


 桃色の肌は薄黒く汚れており、手や口元は赤く染まっている。猪が人の姿を取ったような不思議な姿であり、醜い。


「あそこにいるぞ。じゃぁ、俺はカーミレが大怪我を負う前には助けに来るからな」

 そう言うとすぐにヨイヅキはカーミレの影に入ってしまった。手助けはしないつもりらしい。



「こういう時は、奇襲するんだったよね」

 言ってることはそこそこのえげつないような気がするが、奇襲で数を減らしておくのは定石である。



「あの猪頭族(オーク)の影から氷の槍が飛び出して頭に突き刺さるイメージで、と」

 小さな呟きが聞こえるが、まだ敵は気が付いていない。相当油断しきっているようだ。


「密かに忍び寄る死の氷。敵自らの影から飛び出して、その頭を穿て!」

 魔力を乗せた声と共に、目の前で猪頭族(オーク)達は絶命していく。しかし、イメージが弱かったのか肩等に突き刺さってしまっている個体もいた。


 絶命していなかった猪頭族(オーク)がこちらに向かって走ってくる。まるで、仲間の仇を討つために。だが、カーミレは動けない。顔が蒼白になっている。無理もない。



 初めて自らの意思で生き物を殺したのだから。

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