0003-01
説明回です。もう少し説明回が続きます。
神殿での祝福から3ヶ月経った。
カーミレは順調に成長していき、少しだけ身長が伸びた、気がする。恐らく伸びているとは思う。子供の成長はなかなか早いものだ。
そして、カーミレの日常にシュトラウスによる魔法座学とヨイヅキによる実技が組み込まれた。自らの身を守るための手段として。
この時にカーミレが驚異的な理解力とセンスを持っていた。まるで戦うことを目的としているような。
とにかく相性が良かった。影の属性と。影から影へと縦横無尽に駆け巡り少しずつ攻撃をしていく。そして魔法の回復スピードも早かった。ヨイヅキをも凌ぐスピードである。将来的にはもっと強くなるだろう。
そして、友達も増えた。この事で家にいる時間は少し減ったのだがそれでも楽しそうに笑っているカーミレを見れば満足だった。
それと、シュトラウスがめっきり来る機会が減った。と、言っても毎日来ていたのが二日に一回になったぐらいだが。
「ねぇ、ヨイヅキ。聞いて」
「ん?なんだ?」
真面目な顔をして話しかけてきた。珍しい。いつも、このような表情はしない。いや、最近一度だけ見た。カーミレを拾ってから二日目に仕事が入ったときも同じ表情をしていた。
「十刻災厄の封印が解けそう、いや一部解けたんだよ」
「なっ」
十刻災厄。あまり最近では聞き慣れないようになってきた言葉であるが、近くにいるおじいさんにでも聞いてみればいい。
十刻災厄とは何か、と。
全員が全員。このように答えるだろう。
一体でも放置していれば世界は滅んでしまう。今繁栄している国や町は一度全て滅んでいる。十刻災厄によって。
魔獣のようだが、その脅威は計り知れない。
「先日、壱之刻の封印が解けたんだよ。一つの平野が戦場になってギリギリ討伐できたよ。運良くその付近に《魔力反発》の特異体質の冒険者がいてね」
「な、討伐できたのか?昔は封印が限界だったのに」
「そうみたい。どうやら、封印を破るのに相当なエネルギーを使ってるみたい。討伐出来るぐらいには弱体化してる。でも、騎士団が六つ潰れてるけどね」
討伐にも凄まじい犠牲が必要なようだ。それでも討伐できたことに驚きを覚えていた。
壱之刻は《魔術師》と呼ばれている。
全属性の魔法を使い、遠距離から攻撃してくる。しかも、こちらの攻撃は当てにくいが、向こうの攻撃は当たりやすい。無尽蔵な魔力も有しており魔力切れになることもない。
というハチャメチャな能力を持っていた。《魔力反発》の特異体質を持つ人間が近くに居なかったら恐らく討伐できていなかっただろう。
《魔力反発》はそのまんまの特異体質である。全ての魔力を反発してしまうのだ。魔道具も使えず、魔法に頼りきりな今の生活は不便であろう。
それは攻撃魔力も反発してしまう。だからこそ、《魔術師》を討伐できたのだが。
「気を付けないとな」
「うん。気を付けといて。あと、十刻災厄についての文献の写しを渡しとくね」
大きめの紙を机に置いた。少し古びているが読みやすい、丁寧な文字で書かれていた。
「感謝する。大神殿長」
「やめてよ。それ、あんまり好きじゃないからさ」
笑いながらそう言って、出ていった。仕事がまだ残っていたのだろう。
「十刻災厄か、カーミレ。少し来てくれ」
「はーい」
カーミレを呼び出して、教えることにした。これから戦うことになる可能性の高い十刻災厄について。