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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第一章 始まりや出会い
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0002-06

 図書館でカーミレが本を読むこと一時間。シュトラウスの方が根をあげた。


「カーミレちゃん、ほら他のところも見て回ろうよ」

 ぺらりとページを捲った。どうやら聞こえてないらしい。もしくは、聞こえていても無視しているか。


「おーい、カーミレさんや。聞いているのかい?」

 さらに数十分後。ようやく一冊読みきったようで、シュトラウスの顔を見た。




「どうしたの?おねぇちゃん」

 どうやらまったく聞こえていなかったらしい。


「帰ろっか、もうそろそろヨイヅキも帰ってくるだろうし」

「わかった。かたづけてくる!」

 先程まで読んでいた『災厄の伝記』を片付けにいった。私もあの本は読んだことあるけど、あの歳で読んでいる子供は見たこと無い。内容がとてつもなく難しいのだ。




「じゃ、帰ろっか?」

「うん!」

 またしてもカーミレを抱いて歩き始める。それにしても、今日は楽しかったと思い返していた。


「もしかしたら、もう帰りついてるかもね」

「えぇっ、困るよぉ。おねぇちゃん、走って!」

 私をじぃっと見る目が訴えていた。先程の言葉を言った自分をぶん殴りたい。はやく、はやくと言っている。



「わかった。ちゃんと捕まっていてよ!」

 少しずつスピードを上げて走り出した。種族的に筋力に秀でているのでカーミレを抱いて走っても支障はない。



「はやいっ!すごい楽しい!」

 きゃっきゃ、笑いながら私の胸元ではしゃいでいる。とても楽しそうだ。そして、直ぐに家についた。



 疲労が一気に襲いかかってきた。ゆっくりとカーミレを下ろして直ぐにソファーに向かった。眠気はないが、とりあえず横になりたかった。



「おねぇちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ~。少し疲れただけ」

「カーミレのせい?」

 声が少し震えていた。


「違うよ。久しぶりに全力で走ったからさ。体力の配分を間違えた私のせい」

「ごめんね」

 それだけ言って、どこかに歩いていった。どこに行ったのかは分からなかった。体が重くて確かめる気力がなかった。



 そして数十分後、ヨイヅキが帰ってきた。夕飯はとても美味しかった。なんちゃら鳥の串揚げとサラダだった。お酒に合いそうだがヨイヅキは一滴も飲まない。



 美味しいのになぁ。



「ヨイヅキ!あのね、これあげる!」

 昼間に可愛くラッピングしてもらった箱を渡していた。


「買ってきて暮れたのか?ありがとう」

 嬉しそうにヨイヅキが笑っていた。珍しい。いつもほとんど表情らしい表情がないのに。


「黒水晶のネックレスか、大切に使うよ」

 さっそくネックレスをつけていた。黒い髪にそのネックレスは調和していて美しかった。男の癖にっ。



「あ、そうそう。明日は大神殿で祝福の日だからね。お昼には神殿にいてよね?それと、明日は私は朝からこないよ。用事が入っててね」

 私はそれだけ言うとなにも言わずに飛び出していった。


 なんで飛び出したのだろう?自分でも分からなかった。




※※※





「行ってしまったか」

 ヨイヅキは不思議そうに首を傾げた。なぜ、逃げるように走っていったのか。


 考えていても仕方がないので、黒兎から貰った緑と陽の魔術師いや、竜から貰った手紙を開けた。



影と茨の竜殿へ

 この度は、私の眷属である竜を天の空へと駈ける為にあの魔術を使わせてしまったことを感謝し、そしてお詫びします。ヨイヅキ、あなたは優しいから必ず使ったのでしょう?

 あの竜の過去を覗きこむ魔法を。


 また久しぶりにあなたに合えることを願っています。そうそう、ようやく眷属を作ったようですね。喜ばしいことです。

 しっかりと育てなさい。


 緑と陽の竜 リョクハ



 竜言語で書かれたその手紙には、謝罪と感謝が書かれていた。久しぶりに思い出した。


「久しぶりに合ってみたいな、リョクハ」

「ねぇ、リョクハって?」

 カーミレが聞いてきた。知らない名前だったからか、興味が湧いてきたのだろう。



「俺の同僚、かな?」

「へぇ。いつか合ってみたいな」

「俺もだ。明日は大神殿に行くんだろ?早く寝ようか?」

「うん!」

 ささっと風呂を済ませてから眠った。

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