0002-05
「カーミレちゃん。今日は、色々な所を見て回るよ!」
ヨイヅキを見送った後に、カーミレを呼んだ。
「うん‥‥‥」
「やっぱり寂しい?寂しいよねぇ。あの男は、なんでまた今仕事を入れるかねぇ」
明らかに暗い顔をしているカーミレの着替えをさせる。昨日大量に買った洋服の中から私のベストセレクトを選ぶ。
「ほら、着替えましょうね」
テキパキと着替えさせていく。やはり、私の見立ては完璧だった。
真っ白な長袖のワンピースに、黄色い薄手のパーカーを着せる。少し寒くなってきたのでこれで暖かいだろう。
ちゃちゃっと自分の着替えも終わらせて身支度を終える。いつもはヨイヅキに払わせているので、手持ちはそこそこある。
ヨイヅキには秘密だが。教えたら自分で払えと言われそうだし。
「ほら、カーミレちゃん行くよー」
「うん」
カーミレを抱いて歩き始めた。さすがに二日目と言えども、ヨイヅキに認められていてもまだ自分で歩かせるのは怖い。
無理しても、表に出さないと勘が告げている。
「今日はナルトリア大神殿とか図書館とか行こうか」
「なるとりあだいしんでん?」
「着いたら教えてあげる。とっても綺麗なんだ!」
こてん、と頭を傾げた姿がたまらなく可愛い。もしかしたらヨイヅキもそこに惚れ込んだ、とか。いやいや、ないない。アイツが、ロリコンな訳。
はっ、何を考えているんだろ。私は。
「どうしたの?おねぇちゃん?」
こちらの顔をじっと見ていた。なにかを感じ取ったのだろうか。
「何でもないよ。ほら、着いたよ。あそこのが大神殿」
「すごくおおきいね!」
白塗りされているその神殿はこの町でも有名な場所である。所々にステンドガラスが嵌め込まれている。
それらは、一つの絵物語となっていた。
神がどのようにして世界を造ったかが描かれている。
「明日、ここで祝福を受けるの」
「へぇ、」
キョロキョロと辺りを見回していて、返事が少し簡単に思えたがそんなのはどうでもいい。少しでも、興味を持って貰えたら万々歳だ。
「じゃぁ、次は図書館に行ってみる?」
「うん!」
町の風景を見せながら歩いていく。活気に溢れた町並みに、カーミレが興味を持った場所には積極的に連れていった。
小さな雑貨店では、硝子で作られたペンダントやコップを見て回った。赤、青、緑、黄と色とりどりのガラスを綺麗と言っていた姿が微笑ましかった。
近くで行商人が露天を出していたのでそこも見て行った。この町にはない不思議な物が沢山あった。私自身知らない物もある。世界はとても広いことが感じられる。
その中で、黒水晶のネックレスを見てカーミレが、ヨイヅキに似てると呟いていた。
「これ、ヨイヅキにあげる?喜ぶんじゃない?」
「でも、カーミレお金持ってないよ?」
そうしたいけど、お金が無いと言っていた。どうやら私はお金を持っていないと認識されているようだ。まぁ、いつもヨイヅキに払わせているし、仕方がないが。
「大丈夫よ。私がお金を持っているから」
えっ、と言う顔をされた。少し、いやかなり傷付いた。
「これを、貰うよ」
「毎度あり」
釣りの無いように銅貨を渡した。そこそこ高かった。でもまぁ、たまには贈り物も良いかな?
「ありがとう!おねぇちゃん!」
にっこりと笑顔で言った。むぅ、かわいい。
気の利いた店員だったのか、黒水晶のネックレスには可愛らしく包装されていた。渡すのは男なのに。
だが、感謝だけ伝えておく。
「ほら、着いたよ。ここが図書館!」
蔦の生えた、古びた館があった。大神殿よりも狭いがそれでも大きい。
「ここも大きいね」
「だろ?」
ニヤリと笑って、中に入っていく。
カラリと乾いた風にひんやりとした風に包まれた。そして、古びた紙とインクの臭いもした。
「や、くさ、いので、んき?」
「読めるの?文字」
「うん。読めるよ?それに書けるよ?」
どうして当然のことを聞くの?とでも言わんばかりの顔だった。
「いや、うん。そうだね。文字を読めるのか偉いね。普通の子じゃまだ読めない子も多いのに」
誉められて嬉しそうに笑った。