0002-04
竜は毒を受けても、心臓が止まっても、そして意識を失っても魂が生きている。
そして、甦っていくのだ。だからこそ、竜が不死である由縁なのだ。
「ふぅ。確かにこれでは堕ちるな」
ゆっくりと立ち上がる。そして、元来た道を戻っていく。
三人は元々いる場所で隠れていた。見る勇気はなかったのだろう。
「あの、大丈夫ですか?」
「あぁ。大丈夫だ。全員町に戻るぞ。それで、依頼は終わりだ」
長い時間経っていたので心配された。それも、大丈夫だとだけ答えて帰るように促す。
倒れていた一人も立てる程には魔力が回復していたことに、どれだけ意識を失っていたのかと驚いた。
※※※
「今回は有難うございます」
「あぁ、次からは気を付けろ。俺は帰るぞ」
町に着いてから直ぐに三人とは別れた。もう日が暮れ始めている。そろそろ帰らないとまずい。
家に帰るように全力で走る。それはもう早かった。体力には自信があったのだが、さすがに記憶の追体験したばかりで疲れているのかかなりの距離を走った後に少しバテて止まった。
辺りには人が居なかった。珍しいことにだ。
「お疲れさまでした。影と茨の魔術師様」
昨日の夜見た黒兎がいた。
「それで?それだけをいいに来たわけでは無いだろう?」
「そう急かさないで頂きたいですね。依頼は達成です。報酬と緑と陽の魔術師様からの封書です。では、まったく。私は情報屋であって連絡係では無いのですがね」
一言愚痴って昨日のように消えていった。
「まさか、アイツの眷属だっとはな。それに報酬はこれか」
ずっしりと重い麻袋には金貨が大量に入っていた。これで当分は暮らせるだろう。
あと少しで家に着く。息も整ったのでまた走り出した。鞄にいれた麻袋の中身が重たかったが頑張った。
「帰って来た」
「おかえり!ヨイヅキ」
カーミレが扉の前で待っていてくれたようだ。扉を開けたら直ぐに抱きついてきた。
「ちゃんと帰ってきたぞ。怪我もない」
「良かった!ねぇねぇ、あのね!あのね!今日は、おねぇちゃんとね!」
とてもテンションが高かった。まるで、久しぶりの再開のようだが今朝、会っている。
「そうか、少し待っててくれないか?着替えてくる。シュトラウスは何処だ?」
「うん!おねぇちゃんはね、ソファーにいるよ」
シュトラウスはソファーに居るらしい。感謝の意味も込めて頭を撫でて中に入った。
「そして、今日は何をしていた?カーミレ」
「町に行ってね、たっくさん良いものを見てきたよ!」
カーミレが言うにはナルトリア大神殿の中を見たり、図書館で本を読んだり、露天市場を見て回ったりとしたそうだ。
そして無尽蔵な体力と好奇心のカーミレを抱いて、見回っていたシュトラウスはソファーで撃沈していた。
「ありがとな」
シュトラウスに声を掛けたのだが、尻尾が動いただけで返答は無かった。相当、疲れているようだ。
「今から夕飯作るが何かリクエストはあるか?」
「んぅー。特に無い。づがれだぁ」
返答は返ってきたものの、本当に疲れているしい。ずっと、もぞもぞしている。
「カーミレ、手伝ってくれるか?」
「うん!いいよ」
笑顔でこちらに向かってきた。シュトラウスは疲れているようだが、カーミレはまだ疲れていないようだった。
今日の出来事を思い返しながら、キッチンへと向かった。