08
ポプリの口がわずかに開いたまま止まった。
わたしはスプーンを投げ出すと薬を口に含み、そのままポプリの口の中に流し込んだ。
ごくり、と音がする。
飲み込んだこと確認したら、また流し込む。
ごくり。
ごくり。ごくり。ごくごくごく──。
薬を飲み終えると、ポプリはまたすぐに寝入ってしまった。しばらくしたら呼吸が安定しはじめて、汗もそのうち止まっていった。それでも熱はなかなか引かず、わたしはポプリを抱きかかえたまま日中を過ごした。
熱が下がったのは夜になってからだった。
これでも早いほうなのだろう。動物以外の薬の投与ははじめてだったし、解毒薬ができる自信も確信もあったけど、どこまで効果が得られるかはわからなかった。ポプリの治癒能力も幾分寄与してはいるのだろう。
そして明け方、陽がようやく昇り始めるようになった頃。
「エ、ル?」
「目が覚めた?」
むん、と生返事をして大きくあくびをする。
「大丈夫? 気持ち悪いところはない?」
「きもち?」
「頭が重いとか、お腹がぐるぐるするとか、胸が苦しいとか」
「うーうん、ない」
そういいながら、ぐっとわたしに抱きつく。
「エル、あったかい」
「あったかいね」
とんとん、と軽く背中を叩きながら、そのまま身体を少しだけ揺らす。
「もう少し寝る?」
「エルはねないの?」
「わたしは大丈夫。ポプリは眠い?」
「だいじょーぶ」
「お腹は空いてない?」
「だいじょーぶ」
そのいい方が気に入ったのか、ポプリはなんどもだいじょーぶとくり返した。




