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07

 解毒薬は当然ながらその毒がないと作れない。そして解毒薬を作れるところは、わたしの知る限りふたつだけ。ひとつはここから数日かけていく薬屋で、もうひとつは。

 ここだ。


 トゲで視界を奪われたヘビは、バラのそばでぐったりとしていた。ふと思いたって二、三バラの花を摘み取ってからわたしは蛇と一緒に家へと引き返した。

 かまどに火を焚き、古鍋の縁に蛇の口を噛ませて毒を搾り出す。搾り切ったらそのまま蛇は火にくべて、古鍋の中に水を加えて色が変わるまで温める。普通はここで馬の血を注いで半年間同じ温度で熱し続けなければならないのだけど、そんな時間はないし、またその必要もない。


 なぜなら、わたしは錬金術師アルケミストだから。


 水瓶を取り出し、馬の血の代わりに聖乳ミルクをたっぷり注ぐ。

 この聖乳は、錬金術師としてのわたしの結晶だ。これがなければ、ポプリは生まれてこなかったといってもいい。なにしろ身体の三分の一はこれでできているのだから。

 しばらく煮詰めて再び色が変化してきたら、そこにできたばかりの石鹸を六ついれ、バラで香りづけしていったん蓋をする。そこでひと言添えて、灰汁アルカリしたら解毒薬の完成だ。

 できたばかりの薬を持って、ベッドへ向かう。


「ポプリ」

 でも、返事はなかった。重そうに身体を横たえて、熱も明らかに上がっていた。汗ばんだ額に髪の毛が乱れたままべったりと張りついている。

 そっと半身を起こしてやって、口もとにスプーンで薬を流し込む。

 でも飲み込もうとせず、むせるようにして吐き出してしまう。

 なんど試しても、薬は喉を通らなかった。

「エ……エ、エル」

 うわごとのようにわたしの名前を呼ぶ。

 小さな手が、わたしの服を手探りでつかむ。

「大丈夫、ここにいるから。さあ、薬を飲みなさい」

 でも、やっぱり吐き出してしまって。

 困ったな、と息をついた時、ポプリのまぶたが薄らと開いた。

 琥珀色の瞳がわたしを探す。そしてパクパクと口を動かす。

 それはでも、もう言葉にならなくて。

 代わりに聞こえてきたのは、ヒバリの鳴き声だった。

 風を細かく刻むような響きが耳の奥を揺さぶる。

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