03
「痛くなかった?」
「ちょっとだけピリピリした」
「危ないからもう触っちゃダメだよ?」
「においは?」
「においは嗅いでも大丈夫」
ポプリは嬉しそうな顔をして、また鼻を近づけた。どうやら気に入ったらしい。
しゃぼん玉は麦藁の先を少し加工して、息を吹き込むだけで作れるようにした。しゃぼん液も砂糖を入れて粘り気を強くしたし、これならポプリでも大丈夫だろう。
試しにわたしが作ってみたそれは、なかなかの大きさだった。
「すごい! おっきい!」
ゆっくり舞い上がっていくしゃぼん玉にポプリがぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「ポプリもやってみる?」
「やる!」
意気揚々と麦藁を咥える。でも息が強すぎたのか、すぐにわれてしまった。でもめげずに再度挑戦する。今度はわれない代わりに小さなしゃぼん玉がたくさん流れ出てきた。どうも少し息が強いらしい。
「ゆっくり、ゆっくり……あらら。大丈夫、もう一回作ろっか」
そうして幾度の失敗をくり返した後。
「できた! みて、エル。できたよ。おっきい!」
「おっきいね。ほら、ポプリ。上がっていくよ」
しゃぼん玉はゆっくりと揺れながら、空へ向かって上昇していく。それを追いかけるかのように、一羽の鳥が地面から飛び上がってきた。細かい声で鳴きながらしゃぼん玉を追い越し、高い位置でぐるぐる回る。
「とりさんだ」
「この声はヒバリね」
「ひばり?」
「そう。この季節になると地面に作った巣に卵を産んで、ああやって縄張りを主張するの。近くに巣があるのかもしれないわね」
「す? たまご、たべちゃうの?」
「食べないよ。鶏とは違うの」




