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02

「いいにおいがする!」

 どれどれとわたしも鼻を近づけたら、優しくなでられるような刺激を感じた。少し前まではまだつぼみだったのに、いつのまに咲いたのやら。

「トゲトゲしてる」

「触っちゃダメよ」

 という注意も遅く、ポプリは茎のトゲに触れ、指を切ってしまった。

「エル、まっかっかな水がでてきた」

「水じゃなくて、血っていうのよ」

「ち?」

「そう、血。痛くない? 見せてごらん」

 きずあとから、少しだけ血がにじみ出している。大したケガでもなく、ポプリ自身も痛がっている様子はなかった。治療するほどでもないし、しばらくしたら傷口もすぐにもと通りになってしまうだろう。とはいえこのままは少し不衛生だ、と指を咥えて応急処置をほどこす。

「ゆび、おいしい?」

「そういう意味で舐めたんじゃな……って、こら、舐めちゃダメ」

 わたしの真似をして指を咥えたけど、おいしくない、とすぐに口から出すポプリ。ただ血のほうは気になるようで、しばらく不思議そうに眺めていた。

 そういえばケガをしたのはひさしぶりだな、と今さらのように思い出す。傷口に滲んでいる血を見て、このはしっかり生きているんだな、とわたしは改めてそう感じた。


 ポプリは、普通の女の子とは少し違っている。背丈はわたしの腰辺り、肌はミルクように柔らかい色で、たしかに髪がつるのようにくせっ毛だったり、瞳が琥珀色だったりするところは特徴的だけど、違うというのは他でもなく、ポプリはわたしが生んだホムンクルスということだった。

 ホムンクルスというのは、錬金術によって造られた人間のこと。古文書テキストでは小人であることがほとんどだけど、いろんな偶然が重なってポプリははじめからこの大きさで生まれてきた。造ったのではなく、わたしが生んだのだ。

 そういうわけで、身体の作りも異なっていて。

「血、なくなっちゃった」

「傷がふさがったからね」

 指先はもと通りになり、痕も残っていなかった。

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