平凡な日常の歯車は狂い始める
一年前、人類は超能力者の開発に成功した。
そのニュースは瞬く間に世界中に広がり
この日本はすぐに超能力開発に力を注ぎ始めた。
才能がある者は能力に目覚め優秀な学校に集められるらしい。
普通の学校でも今では能力という科目があるほどだ。
そんな中俺、天道歩は天才能力者として日本に君臨し、
数多の敵をバッタバッタとやっつけ、国民の英雄と……prrrr
「なんだよ、こんな朝早くから……」
眠気眼を擦りながら電話の元へと歩く。
「はい、もしもし天道ですが」
「おはよう〜天道君。早速だがここでお知らせだ。
悪い知らせともっと悪い知らせ、どっちがいい?」
……朝から夢だと思いたい。
電話の主は俺の学校の担任だった。
怒り狂っているのはわかるのに口調が優しいから尚のこと怖い。
「……もっと悪い方からでお願いします……」
「よしわかった。お前このままサボり続けたらマジで留年になるぞ?」
な、なんだと……まだ高校に入学して2ヶ月しか経っていない6月に早くも留年の話が出るとは……
「普通の悪い方はなんでしょうか……?」
聞きたくはないが聞かざるを得ないだろう。
渋々ながら聞いてみた
「今日からちゃんと学校に来て先生の補習フルコースを受けろ。
そしたらなんとか進級はさせてやれる」
「……」
と、言うわけで俺は今絶賛登校中である。
超能力が目覚めた世界で俺はひきこもりをしていた。
え、なんでかって?
俺が中学3年の時に超能力者が現れた。
それからきっと俺も秘めたる力で天才として〜なんて考えたさ。
だけど結局現実は甘くなかった。
--君に能力の才能は欠片もない--だとさ。
今でも言われた時のことはハッキリと覚えている。
周りは強力な能力ではないにせよ、ある程度の能力を持ち
能力を手に入れなかったのはほんの数十人。
もちろん俺の周りだけ多くの人が能力を手に入れたという可能性もなくはないが、元々成績がそこそこよく優等生として扱われていた俺のプライドを折るのには充分だった。
と、あれこれ考えてる内に入学式以来となる学校が見えてきた。
果たして担任にどれほど怒られることやら……
考えるだけで足取りが重くなるが、流石に留年になっては親も黙っちゃいないだろう。一人暮らしを辞めさせられるかもしれない。それは嫌なので鉛のような足を無理矢理動かして歩いた。
「はぁ……」
1時間だ……1時間もひたすら話し続けるってあの熱血男の口はどうなっているのだ……
しかも疲れたのにこのまま3限目の授業から入れって……
あの人は鬼か!?鬼なのか!?引きこもりになんて重労働を……
考えていても仕方ないので教室に入る
「--!?!?」
みんな歩の登場に驚いているようだ。
それも仕方ないだろう、何せ知らないやつが入ってきたんだから。
「よっ!久しぶりだな、歩」
話しかけてきたのは小学校時代からの親友 桜井和也。
身長も割と高くよく気が回る男だ。
昔からよくゲームをして遊んでいた仲。
「よぅ。久しぶりだな」
とりあえず挨拶を返し他の知り合いを探す。
地元の公立高校なので居てもおかしくはない。
なぜ今更探すのかと言うと入学式の時はまともに通うつもりがなかったので寝ていたからだ。
「やっと来たのね。天道、久しぶり」
「……小鳥遊か。久しぶりだな」
中学時代から何かと歩と言い争っていた小鳥遊舞。茶髪のセミロングで身長は高くも低くもなく美少女でモテそうだが性格が男勝りなので中学時代から男子と口喧嘩することが多かった。主に歩だが。
他にもいないかキョロキョロ探していると小鳥遊に口を出された
「他に探しても中学の時の知り合いは私と桜井君だけよ」
そうなのか。まぁ和也がいれば話し相手は出来る。むしろゲームの話が出来てラッキーだ。
というかこいつは……俺のことは呼び捨てで和也は君付なのかよ……。
別に言わないがなんかイラつくぜ……。
「ところで、先生はなんて言ってたんだ?」
和也が疑問そうに聞いてきた。
つーか、何故俺が何か言われたと知っている。
「あぁ、えーと、今日から毎日放課後補習だってさ」
「引きこもったりしてるからだよ。あの先生の補習めんどくさいよー?」
和也は笑いながら言ってきた。
確かにその通りなんだけどな。
「それに君が来ない間小鳥遊さんがずっと先生に……「ちょっと待って!!!」……どうしたの?」
急に小鳥遊が話を遮って和也に耳打ちし始めた。
なんだろうか。俺が休んでる間に俺の暴露話でも先生にしたというのだろうか。それとも俺の課題を増やすように頼んだとか?はたまた……
「おーい、帰ってこーい」
「あ、ごめんごめん」
和也に話しかけられて現実に意識を戻された。
「んで、小鳥遊がなんだって?」
「いやさー、小鳥遊さんが君の心配を……「ちょっと!?」どうしたのさ……?」
小鳥遊がまた耳打ちし始めた。
……一体なんだというのだ。
「小鳥遊さんそのくらいいいでしょ?
大丈夫だってー」
「だめよっ!そんな事言ったらまたなんかからかわれるじゃないっ!」
「もう……分かったよ……」
話が終わったようだ。
ったく……小鳥遊はどんな話を先生にしたのやら。
「んで、何?」
「まぁ、やっと学校に来てくれてよかったよって話だよ。
そろそろ3限目始まるし席に行こうか」
「ったく……なんだったんだよ。」
結局真相は闇の中だ。
俺達は席に戻った。
その後授業も乗り越え休み時間も色々興味を持ったクラスメイトに話しかけられるが特に人見知りとかはないので普通に話をしていた。まぁ引きこもっていた理由は流石にはぐらかしたが……。
その後、特に問題なく放課後になった。
「んじゃな歩。補習がんばれよ。オンラインで待ってるぞー」
笑いながら帰っていく和也。
ちくしょう……俺も帰りてぇ……帰ってオンラインゲームがやりてぇ……。
顔を机につけて項垂れて先生を待っていると聞きたくなかった先生の声が聞こえてきた。
「よーし、それじゃ補習するぞー。
ん?どうした小鳥遊」
小鳥遊と聞こえて顔を上げてみるとたしかに教室には小鳥遊がいた。補習は俺だけのはずなんだけど。
「私も復習したいので受けていいですか?」
あれ?あいつってそんなに勉強出来ないやつだっけ?中学の時は俺より出来てた気がするんだけど……
まさか復習じゃなくて俺に復讐だったり……?流石にその発想は馬鹿か。
「おー。勉強熱心なのはいいことだ。いいぞー。それじゃ補習を始める」
何はともあれ勉強したくねぇな……
地獄の補習が始まった。命名和也
「はぁ……」
今日何度目のため息だろう……授業中も何度もしていたから覚えていない。
引きこもりには堪えるぜ……
「なにこのくらいでバテてんのよ。」
同じ量の補習のはずなのにサクッと終わらせた小鳥遊はケロッとしていた。
「よく疲れないよな、お前」
「このくらい普通でしょ?」
さも当然のように言ってはいるが外は既に暗くなりつつある。
6月で暗くなっているのだからかなり遅い。
まぁこの時刻までかかった理由は主に俺が理解できなさすぎて先生と小鳥遊が基本から教えてくれていたからなのだが...
2ヶ月の勉強量を舐めてたぜ...
「まぁいいや、帰ろうぜ。家まで送ってく」
「うん。え、えぇぇぇぇぇぇ!?」
なんでそんなに驚く……
「いや、嫌かも知らないが流石にこの時間帯に女子1人はな……それに遅くなったのも俺が原因だしそのお礼も兼ねてだ。我慢してくれ」
「いや、別に嫌じゃないんだけど……ちょっとビックリして……」
そんなにビックリすることかねぇ……
「ていうか、お礼っていうなら飲み物くらい奢りなさいよね!」
なぜ、そうなる……俺の食費が……
「はぁ……わかったよ。早く帰ろうぜ」
「うん!」
その後ロイヤルミルクティーとかいう何故かミルクティーより断然高いものを買わされたりしたが無事小鳥遊を家まで送り届け、
スーパーで夕食を買った頃には9時を回る頃だった。
「ったく……あいつあんなに高いもの買いやがって……第一ミルクティーと何が違うんだよ……」
などと愚痴を零しながら家への近道である裏路地を歩いていた時、
--平凡な日常の歯車は狂い出す--
裏路地の曲がり角。
その曲がり角を曲がった先にあったのは……
血だらけで倒れてる女の子とおそらく自分と同じくらいの年であろう男、そして男を纏う炎
一瞬体が硬直したようだった。ただ一つだけ瞬時に理解した。この能力者はやばい……と。
だけど女の子を放っておくわけにもいかない。
考えるよりも先に言葉が出た。
「お、お前っ!何してんだよ!!!」
男は何も言わない。何も言わずこちらを振り返る。
見られたと言うのに何も驚く様子はない。
「なんだよ。めんどくせぇな」
ただ、その一言。他に何も言わない。
男の手には爪のような金属の武器のようなものが付けてあった。
おそらく女の子はそれで刺されたのだろう。
とにかくこの場から男を離さなくては……
「死体が増えるのかーめんどくさいなー」
男は淡々と語る。口封じということだろう。
何も殺すことを怖いと思っていないような冷たい声、鋭い目つき。見れば見るほど恐怖に襲われる。
足が震える、口が乾く。
だがこのまま迷っていても死ぬだけだ。
俺は行動しなければならない……!
読んで下さってありがとうございますm(*_ _)m
素人なので色々教えていただけると嬉しいです!
三点リーダやダッシュは今使ってるフォントを変える方法が分からなかったので代用しております
感想やブクマなどして頂けたら嬉しいですm(*_ _)m