01
ラノベやアニメなんかで何かと話題になるVRMMO。それは、人が夢見る画期的な技術。実際に出てくるのはもっと後の時代だと、俺も思っていた。
だってそうだろう?フルダイブ式なんて特に、生きているうちに体験出来るなんて誰が想像する?。
この俺こと、黒嶺 白斗もその事件には驚きを隠せなかった。
事の発端はこうだ、世界でも有名なゲーム会社数社と電機メーカー会社数社が合同で作り上げたフルダイブ式ヘッドマウントギア、cross gearを開発し更にそのフルダイブ式ベッドマウントギアに対応したオンラインゲーム、Alpha Ria Cross gate On Lineをリリース。そして、正式サービスを二ヶ月程前に開始した。
当然そのcross gearは決して安い物ではない。寧ろ高額商品と言って差支えない程だ。高校生の俺がおいそれと手を出せる代物ではないが、製作が決まった時点でバイトを始めそれなりに貯めた。
ぶっちゃけ、相当キツかった。金があると欲しいものって増えるわけで、その欲を断ち切るのが苦労した。マジ最後の方は仏の様に物欲が無かったのは俺自身ビビった。
幼馴染の葵、ーー赤崎 葵って言うんだがーーなんて後半の俺を見てガチで心配してきやがった程だ。
まぁ、そんな事もあって今日も嬉々としてA.R.C.On Lineにログインする訳だ。
cross gearを頭にセットして横になり起動させる。後頭部は勿論だが、鼻の辺りまでギアが覆うので寝ているのかゲームしてんのか分からん様な状態になっている。
暫くすると一旦意識が落ちる。だがそれもほんの一瞬で、直ぐにゲーム画面が現れる。
キャラメイキングはかなり豊富でどんだけ有るんだって言いたくなるくらいだったが、お陰で似た様なキャラが出来上がることが無い。皆無と言っていいくらいだろう。
そして俺のキャラ、ハイドの種族はハイヒューマンで髪の色は日本人らしく黒にした。服装はファー付きのコート、これまた白基調に黒と紅のアクセントが付いた良い代物だ。武器は限定クエストクリア報酬のグラムとゲーム内で生産職である鍛冶屋をしているヤツから作ってもらったティルヴィングを使っている。
所謂二刀流ってヤツだな。まぁ、職業が双剣士ってだけなんだがな。因みに、葵もこのゲームをしているんだが俺もあいつもヤバイくらいやってて俺の方のレベルは今の所カンスト。あいつも結構高かった筈だ。
っとと、そろそろ待ち合わせの場所に行かねぇとな。ちょっと時間に遅れそうだな、連絡しとくか。
「葵か?すまん少し遅れそうだ。」
「はぁ?あんた一体どこにいんのよ?」
「アスベルト平原。」
「ちょっ!?それ未開地でしょ!?」
「あぁ、ちょっと腕試しにな…」
「…腕試しって、あんた今レベル幾つ?」
「150だな」
「……。ステのスクショ、送れ!!」
「はぁ、分かったよ。ちょっと待ってろ。」
サッと俺のステータス画面を表示する
名前:【ハイド】 Lv.150
種族:【ハイヒューマン】
職業:【双剣士】
称号:【双蛇】(刀剣を左右に一本ずつ装備しているとき、攻撃力小UP)
HP:736/736
MP:563/563
STR:999
VIT:295
DEX:999
INT:438
MDF:627
AGI:999
LUK:99
所々カンストしているのは愛嬌という事にしておいてくれ。
「そんな訳で、こっから戻るのには少し時間がかかる。いつものメンバーと先に狩りでもしててくれ」
ザザ。
なんだ?今視界がブレた?。気のせい、か?。このゲームはバグが無いと言っていいくらいに完成度が高い。
さらに、このゲームの特徴は戦闘スタイルや使用武器によって職業の幅が広がったり狭くなったりする。生産職においては別のプレイヤー同士が同じレシピを使って作っても別の代物が出来るという独自生成がより大きな特徴になっている。
そんな完成度の高いゲームに、画面がブレる様なバグがあるとは思えないが…。
「ちょっと、どうしたの?。急に黙っちゃって?」
「いや、何でもない。気にするな。」
「そう?、なら良いんだけど。」
「すまんな、一旦切る。」
「はいはい、さっさとこっち来なさいよ?」
「あぁ、分かったよ」
ザザ。
まただ。なんだ、これは?。バグ、にしてはおかしい。他の奴らも気付いていいと思うが…。
そこで俺はおかしな事に気が付いた。そう、周りにいたプレイヤーが誰一人としていない。
待て待て、ついさっきまで少人数だがいた筈だろう?。時間にして1分も経っていないはずだ…。ログアウトしたにしても急すぎるし、敵モンスターも一切いないのはそれ以上におかしい。
なんだ?一体なにが起きている?。
「考えても分からんな、ひとまず葵達と合流しよう…」
そう思い一歩を踏み出したその時だった。
ザザ、ザザァァァァァァァ。
「なっ!?なに!!」
俺の視界が乱れ、何も見えなくなり同時に俺の意識も落ちてしまったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は白斗のステータス画面を見て絶句した。何よ、一部カンストしてるって何!?。マジありえないんですけど!?。
いやいや、レベル私も結構高いんだけど10差が出てるって…。やってやろうじゃない!私だってレベルカンストしてやるわ!!。
「アオイちゃーん、ハイドくん何だってー?」
パーティメンバーの少女に声をかけられ、我に帰る。
「遅れるから先に狩りしてろってー」
しょうがない、今日はアイツ抜きかなぁー。一番のアタッカーの白斗が居ないと、正直火力が足りないかもしれない。そこはもう手数でカバーするしかない。
「はぁ、明日が休みで良かったわ…。」
そう、今日と明日で追いついてみせる!。そう思いいつものパーティメンバーで狩りに行くのだった。
いつものパーティメンバーとひたすらレベル上げし、ようやく私もレベルカンストした。あいつ、白斗と連絡取ってから凡そ12時間が経過していた。私もメンバー達も没頭していたせいか、このおかしな状況に気付くのが遅れていた。
なにがおかしいって?こんだけ時間が経っているのに白斗が来ていない事がおかしい。
白斗のあの様子だと、急いで合流する筈。それなのに12時間も来ないのは何かあったのかもしれない。
「アオイ、ハイドくん遅すぎない?」
「うん、ちょっとおかしいわね。あいつの実力ならどのエリアからでもとっくに合流していてもおかしく無い筈なんだけど…。」
嫌な予感がする。ゲーム内じゃなくて、リアルで何かあったのかもしれない。私はそう思うと、いても経ってもいられなくなった。
「ちょっと、リアルの方で様子見てくる」
「そうだな、アオイならハイドの幼馴染だし適任だろう。」
「家も近いしねー☆」
「じゃあ、一旦私はログアウトするわ。何か分かったら連絡するから。」
そう言って私はスパッとログアウトした。
急いでcross gearを外し部屋を飛び出した。さっきから胸騒ぎと言うかなんと言うか、嫌な予感が止まらない。
今日はおば様もお仕事らしく、今は白斗一人だった筈。そう思いながら、渡されている合鍵を差し込み鍵を開けガチャッと玄関を開く。
階段を急いで上がる。
ドクドクと自分の心臓の音が煩い。手が何故か震えているし、呼吸も荒くなっているのがわかる。
(落ち着け、落ち着け私!)
目を瞑り言い聞かせるように心の中で呟く。
思いきって部屋の扉を開け、中に入ると同時に目を開く。
白斗の部屋をぐるりと見回すが、ベッドの上で静かに、そしてただそこにcross gearが鎮座しているだけだった。
と、言うわけでようやく始まったね。
此処まで長かったよ。今日の後書きは一人だけど、次からは二人だからね!