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ハジマリ
ゲーム用のシナリオを小説化しています。
目が覚めると、薄暗い路地裏に一人たたずんでいた。
―ここは、どこだっけ。
頭が割れるように痛い。
―何をしようとしていたか思い出せない。
―何のためにここにいるんだったっけ。
あれ?
そもそも 僕は、私は、俺は 誰だった ?
混乱する頭を押さえて手近な壁にもたれる。
―落ち着け。少し休めば、頭痛だって…
「―わからないの?」。
目の前から聞こえた声に顔を上げれば、少年が立っている。
―さっきまで、誰も
いなかったはずだ。と口にしようとして塞がれた。
「―わからない?なら」
「そのからだ、ぼくらにちょうだい」
冷えた声。
背筋が凍る、とはこういうことだろうか。
少年の双眸も声と同じく冷ややかで、鋭さを孕んでいた。
拒否権はないとばかりに、口を塞ぐ手に力を込められる。
「"ぼくら"だってたくさんがまんした。
だからこんどはそっちががまんするばん」
あどけなく彼は言う。
「だからね」
「 ち ょ う だ い 」
視界が、暗転した。
楽しんで読んでいただけたら幸いです。