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11.悪夢を見る猫(39)原始時代編3

 しかし日食は世界規模の現象のはずなのに何故その程度離れただけで危機を回避出来るんだろう?

その日食でこの土地がダメになるならこの辺一帯のみがダメになったって言うのはどう考えてもおかしい。被害がピンポイント過ぎやしないだろうか?

それにそのダメになる期間が3年。3年間の間は何がどうダメになるのか?元に戻るとはどう言う事なのか?

マロの話は現代科学に当てはめるとおかしな事が聞けば聞くほど出て来るのだった。


 奴の話を聞いたみんなは集まって今後の事を相談し始めた。その結果、予想通り賛成派と反対派に別れた。

賛成派は女性に多く、反対派は男性に多かった。こう言うのって似たようなのが今でも続いているよね。

で、お互いの派閥の話し合いが折り合わずにずっと平行線に終わるところも…。


 こう言う時は中立派がうまく場を取り持たないと永遠に話は進まない訳で…。

この集落の中での一番の中立派は僕…つまり僕がこの問題の解決に尽力しなくちゃいけなくなってしまった。

全くマロめ、やっと僕がこの集落に馴染んで来たって言う時に来余計な問題を持ち込みやがって…。

取り敢えず僕は双方の話をうまくまとめるために動く事になった。


「皆さん落ち着いてください!それから今後の事を話し合いましょう」


「だから、あんなの嘘っぱちだって言ってるんだよ!太陽が食われるなんて…!」


「いえ、それは有り得る話です」


 オオタさんには悪いけど流石に日食自体まで嘘って言うのは否定させてもらった。

現実を知っているものとして譲れないところは譲れない。

僕がそんな態度を取ったものだからオオタさん、逆上しちゃった。


「何だと?お前はヤツの肩を持つのか?」


「問題はそこじゃないんです。一番の問題は彼の言うこの村を襲う何かについてです」


「俺は信じないね。今まで生きて来てそんな事は一度も起こらなかった!」


 まだ起こっていない事を信じないのは仕方のない話でこればっかりは言葉でどうこう出来るものでもない。

僕はマロの話の一番の問題点を指摘したんだけどその前の話で行き詰まっちゃって次の言葉が出なかった。

うーん、これは骨が折れそうだなぁ。一体どう言えば良いものなんだか…。


 僕がオオタさんの扱いに苦慮していると今度は別の方向から言葉が飛んで来た。

今度はマロの言葉を信じよう派のミズモトさんとその一派だ。


「何もしないでこのまま一ヶ月経って本当に何か起こったらどうするつもりよ!責任取れるの?今すぐ逃げるべき!」


「マロさんは沢山の困難を乗り越えて命懸けでこの村にそれを伝えに来たの!それが分からないの?」


「俺はなあ、この目で見たものしか信じないんだよ!口だけなら何とでも言えるからな!」


 議論は中々に白熱していたものの、やはりお互いがお互いの主張を受け入れようとはしなかった。はぁ…。

僕はみんなを鎮めようとこの件についての自分の考えを話す事にした。


「いいですか皆さん。このまま話がまとまらないと何も出来ないままその日を迎えてしまいます。

確かに何も起こらない可能性も高いですけどまだ時間に余裕はあるんです。それまでにやれる事をやってみませんか?」


「それは…どう言う事だ?」


 お互いの考えが出揃ってようやく僕の話を聞く土壌が出来たみたい。

オオタさんもこの頃には少しは落ち着いて僕の話にも耳を傾けてくれるようになっていた。

ふぅ、ようやくここからまともに話が出来そうだよ。

僕はこれからどうするか叩き台として自分の考えを目の前にいるみんなに話した。


「まず避難する場合ですけど、安全な場所に行くには彼の話の通りの場合最短で10日かかる距離です。つまり準備出来ていれば10日あれば避難は出来る…」


「まぁ、確かにな」


「僕は彼の言っていたダメになった集落に行ってみます。彼の言葉の裏付けを取るんです」


「あの、一緒について行っていいですか?証言は多いに越した事はないですし…それに私も確かめてみたいんです」


 この時点で僕の提案する真実探求班として心強い味方が加わった。前の夢でも探索隊として一緒に旅をしたコンドーさんだ。

最初は僕ひとりでその場所に向かおうと思っていただけにここで賛同者が現れたのは素直に嬉しかった。

そしてこの話を聞いたオオタさんが急に声のトーンを落として心配そうに言葉を漏らした。


「でもよ、もしそれでヤツの話が真実だったとしたら…」


「その時はその時でまた考えましょう…逃げるのはギリギリで始めたっていいのですから」


「…流石フクだぜ…俺はコイツの判断に賛成だな!みんなはどうだ?」


 僕のこの考えを聞いて納得してくれたのかオオタさんが僕の味方になってくれた。

彼が味方になってくれたならもう集落の半分は味方になってくれたも同然だった。

それほどまでにオオタさんの影響力はこの集落では大きかった。

そして彼の呼びかけのお陰で僕の考えは集落の全員の支持を受ける事となった。


「私もそれでいいわ」


「俺だって構わないぜ」


「それじゃあみなさんこの方針でよろしくお願いします!」


 ふぅ、何とか話はまとまったぞ…でもきっとこれからの方が大変なんだろうけど…。

それから僕らはダメになった集落探索隊と集落脱出準備隊の2つに分かれて行動を開始した。

勿論日々の生活だって大事だから日常生活班もそれなりの数は確保させないといけないって事で脱出関係班は少数精鋭となった。


 ちなみにこの事を伝えた流れ者のマロとサキちゃんはその日が来るまでここに留まるらしい。

自分が言い出した以上その責任もあってずっと見届けようとしているのか、それとも…。


 そんな波乱の夜が終わって次の日の朝、僕ら探索班は早速そのダメになった集落を目指して旅立った。

場所をマロに聞くと案外近い…とは言え昼夜休みなく歩いて3日の距離だったけど。

その集落もまた日食によって去年ダメになったらしい…日食ってもっと広範囲を覆うような気象現象だったと思うんだけどなぁ。

昨日のマロの話の反応から見てウチの集落はその時に日食を誰ひとり見ていなかったみたいだし…まぁここは現実の世界じゃないからな…。


 集落に辿り着くまでの間は特に大きな出来事もなかったので割愛するとしてこの探索班のメンバーは3人。

内訳は僕とユウキ君とコンドーさん。そう、前の夢でも仲間だったメンバーで固めたんだ。僕ら3人は長い道中をそれぞれの得意分野の話をしたり雑談したりしてずっと話しながら歩いていた。そうした方が楽しいし疲れないからね。

そして特にトラブルも起こす事なく僕らはその打ち捨てられた集落へとやって来た。


「本当にあったよ…マロの話、やっぱり嘘じゃなかったんだ…」


 そこには急いで逃げてもぬけの殻になった集落の跡があった。

これが現代なら色んな装置を使って残留している何かを計測するところだけど残念ながらこの時代にそんな便利な物はない。

だからこの集落を見て、触れて、嗅いで…五感で感じたその感覚に頼るしかなかった。

僕はこの集落跡地に着いてすぐ同じ班の2人にこの場所についての感想を聞いてみた。


「どう思う?ここで何かあったと思うかい?」


「人の手を離れて1年くらい経って広場に雑草ひとつ生えていないのはちょっとおかしい気がします」


「確かに…ちょっとおかしいね。原因は分からないけど」


 流石前の夢で植物博士だっただけあってコンドーさんはこの集落の異常に対し植物関係で意見を述べた。

これだって僕ひとりだったら気付かなかったかも知れない。この人を連れて来て正解だった。

対してユウキ君は…コンドーさんに手柄を取られてちょっと寂しそうだった。


 でも確かに見た目からすぐにはっきり分かる事ってそれくらいかも。

僕はこの集落跡を念入りに調べながらふと思い出した事をみんなに話してみた。この状況の打開策になるようなそんな気がして。

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