表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/93

11.悪夢を見る猫(33)SF編2

 事前調査の結果、川が遺跡の近くまで流れている事は確認済み。なのでまずは特製ホバーで川経由で現場の側まで近付く事になった。

ここで僕は選抜隊に一応の注意事項を告げた。みんなプロだから分かっているとは思うけど念の為にね。


「上空からの調査では特に危険な生物はいないって事だったけどまだ水の中は未知数だから気をつけてね」


「一応対危険生物用の装備も持って行くから大丈夫です」


 そう言って宇宙船から持ってきた手持ちの武器を誇らしげに掲げて見せたのはサイトーさん。ああ、何て頼もしいんだ。

後はこの惑星の危険生物がその武器で倒せるようなものばかりであって欲しいと願うばかりだよ。


「未知の惑星だけに何が起こるか分からない…くれぐれも油断しないように…」


「了解です!」


 こうして僕らはホバーに乗り込んだ。この先にどんな危険が待っているかも知らずに…。


 水路での移動は意外と楽に進めた。突然の未知の部外者の侵入に原生生物が怯えたのか移動中に僕らの障害になる事は何も起こらなかった。

ただ、川の中を泳ぐ生物を見ると見た事もない生き物がたくさん泳いでいて流石にここが地球とは違う惑星だって言うのを認識させられた。


「あれも魚って分類でいいのかな?」


 ホバーでの移動中、川の中を眺めながら僕はシノハラさんにそれとなく聞いてみた。質問を受けた彼女は目を輝かせながら僕に答えてくれた。


「この星の中では魚って認識でいいと思いますよ、詳しく調べないと正確なところは分かりませんけど」


「キャプテ…隊長!遺跡が見えて来ました!」


 そう、僕は選抜隊に自分の事をキャプテンではなく隊長と呼んでもらうように言ったんだ。だってこう言うのは雰囲気も大事じゃん?こう言う探検隊のリーダーの呼び名と言えばやっぱり隊長だよね!

隊長と呼ばれて気分の良くなった僕は遺跡に接近した報告を受けて早速メンバー全員に声をかける。


「よし、上陸しよう!」


 こうして僕らはホバーを降りてジャングルに足を踏み入れた。

川が近くまで通っていたとは言え、それでもここから遺跡まで歩きで1kmは歩かねばならない。普通の場所と違ってここはジャングルの奥地、僕らはかなりの体力消耗を覚悟していた。


 この場所の気候から言ってかなり熱と湿気が高いはずなのに不思議とそう言うのを感じさせないのはやはりここが夢の中だからだろうか?

少し臨場感には欠けるけど実際にジャングルを歩き回る事になればそれこそ恐ろしい程体力を消耗してしまうはず。

この時、僕はこの体験が夢の中で本当に良かったと思った。


 一緒に歩く隊員たちもそれほど辛そうにしているメンバーはいない。選抜したとは言えみんなタフだなぁ。

ジャングルの中は道なき道、まっすぐ歩くだけでも大変なのにみんな愚痴ひとつ言わずに僕についてくる。もう遺跡の近くまで来ていた為、視線を上げれば常に目的地が見える状態でこれなら道に迷う事もなさそうだ。

僕は一応メンバー全員に今の自身の体調について聞いてみる事にした。


「みんな、疲れてないか?」


「大丈夫です!遺跡の調査に向かっているのにそこに着くまでに疲れている訳には行きません!」


 探検隊のメンバーの中でも一番体力的にキツそうなユウキ君が力強くそう答える。

こう言う雰囲気からも彼らの熱意を感じて僕は仲間の存在を心強く思っていた。


「そうか、頼もしいな。うん、頼りにしているよ」


 僕はそう言って隊員達を労った。さて、今どれくらいジャングルの中を歩いたんだろう?どうか遺跡に着くまで何もトラブルが起こりませんように…僕はこの星にもいるであろう神々にそう祈っていた。


 ジャングルは生物の宝庫って言うのは地球もこの星も変わらない。

森の中を歩いていると聞いた事のない鳥の鳴き声が聞こえる…不快ではないけどそこまで美しいとも感じられない。

これは僕の感性がおかしいのかも知れないけど…聞き慣れてくると変わってくるのかな…。

動物学者のシノハラさんが早速その鳥達の鳴き声を録音していた。僕は興味本位で彼女に聞いてみる。


「どう?」


「あ、はい、興味深いです。どうにか鳴き声の主も分かればいいんですけど…」


「ここはジャングルだからちょっと分り辛いよね。障害物が多過ぎて」


「ここにテントを張って一日中観察していたいくらいですよ」


 そう語るシノハラさんの目は本気だった…この熱気を冷ましてしまっては可哀想だな。

そう思った僕は出来るだけ彼女の期待に応えたいと思ってこう答えた。


「うーん、この調査が終わったらそうしてもいいかもね」


「本当ですか、隊長!」


「それはそれでまた後で考えよう。今はこっちに専念してくれ」


 僕の答えを聞いてシノハラさんはランランと目を輝かせている…よっぽど好きなんだなぁ。同じように目を輝かせていると言えば植物学者のコンドーさんもそうだった。

この鬱蒼とした植物が生い茂る歩きにくいジャングルを歩きながら隙を見てはめぼしい植物を次々に採取している。


 彼らの知的好奇心を満たせるならと僕はその行為について何も言わなかった。

何より人が楽しそうにしているのを見るのが好きなんだ、僕は。

隊員達はみんなその道のプロだからこの探索に掛ける意気込みが半端ない。

この分だと遺跡の調査も結構白熱したものになりそうな予感がしていた。


 シャーッ!


 ジャングルを歩いてた僕らに突然襲いかかってきた生き物がいる、蛇だ!この星でも蛇はひと目ですぐ分かる、何故なら地球の蛇とほぼ同じ姿をしていたから。

蛇のようなシンプルを絵に描いたような見た目の生き物は違う環境でもやっぱり似てしまうものなんだろう。


「ほいっ!」


 そんな蛇の来襲にサイトーさんが余裕の体捌きで対処していた。

全長6m程の巨大な蛇だったけどサイトーさんの手によって見事に動きを封じられた。


「これ、どうします?」


 サイトーさんに聞かれた僕は少し考えて周りの隊員達の声を聞いてみた。

予想通りやはり誰もこの蛇に対して残酷な結果を望んではいなかった。

なのでその声を参考に僕は決断を下した。


「今後の研究の為に一部の体組織の採取とチップを埋め込んでそれから開放しよう」


 シノハラさんによってその処理を施された蛇はその後開放されて森への奥へと逃げて行った。

うんうん、やっぱり無駄な殺生は良くないもんね。


 その後は特に大きなトラブルもなく順調に冒険は続いた。

自慢の腕を振るえないサイトーさんだけはこの事に少し物足りなさそうだったけど。


 そうして歩いて行くと段々視界が開けて来てやがて目的地の遺跡が目の前にドーンと現れた。

見た目は中南米のピラミッドにどことなく似ている…この地にも似たような文明があったのだろうか?

目の前の異星の遺跡を前にしてどのような調査をするか早速話し合いが行われた。

やはりここで話の主導権を握るのは考古学者のユウキ君しかいないだろう。


「僕が思うにこれはピラミッドです。みなさんも形状からそう思ったと思われますが…」


「まぁ多分そうだろうね。地球にあるものと同じとは限らないけど」


 ユウキ君の言葉に僕が反応する。みんなも無言で頷いていた。

すると彼はピラミッドの中腹を指差して説明を続けた。


「仮に構造が似たものだと仮定すれば入り口はあの辺と言う事になります」


「問題は全員でそこに向かうか、それとも二手以上に別れるか…」


 入り口が分かった所で僕は次にピラミッド探索部隊をどうするかという問題に着手した。単純に全員で探索する手もあるだろうけど何かあった時にそれは逆に障害にもなりかねない。

そこでサキちゃんが凛とした声で自分の意見を述べた。


「やはりここはリスク回避の為に二手に別れた方がいいと思います」


「だな、みんなはそれでいい?」


 みんなこの意見に頷いた。異議を唱える者はいない。

みんなの意見を確認した僕はそのまま話を続けた。


「それじゃあ探検組と待機組とに別れよう…みんな、希望は?」


「私は探検したいです」


 サキちゃんがまず最初に声を上げた。彼女、意外に行動派なんだ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ