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11.悪夢を見る猫(32)SF編1

「うわああああああ~っ!」


 ガバッ!


 目が覚めた僕は見慣れない部屋に…結局また別の世界に僕は飛ばされていた。

今度の世界はどこだ?キョロキョロ見渡すとどうやらこの部屋は周りが無機質な人工物に囲まれている。

病院?いや、もっと密閉されているような…って言うか僕は大きなカプセルの中で眠っていたらしい…それに重力の感じも何かおかしい。


「もしかしてここは…」


 僕が自分の置かれている状況を確認していると突然部屋の自動ドアが開いて誰かがやって来た。


「キャプテン、起きました?」


「え?」


 僕が目覚めたのを確認しに来たのはなんとサキちゃんだった。彼女はまるで宇宙船の乗組員のような服装をしていた。

僕は思わず彼女に質問する。起きたばかりで何も分からないからね。仕方ないね。


「こ、ここは?」


「やだキャプテン、寝ぼけてる?ここはキャプテンの指揮する宇宙船えびす号ですよ」


「あ…あ、そうなんだ」


 宇宙船だって?また舞台がえらく飛んだなぁ。さっきまで天上界とか魔界とかだったのに。

で、今度の僕は宇宙船のキャプテンなのか…出世しちゃったなぁ。しかし宇宙船の名前がえびす号って…。

まぁ夢だから何でもありだけど。しかし宇宙か…この夢の着地点はどこなんだろうな…。


「キャプテン、来てください!」


 今度はまた別のクルーから何かの要請があった。取り敢えず行ってみるか…今の状況も分かるだろうし…。

ここは初めて見る宇宙船のはずなにその内部構造は不思議と頭に入っていて全く迷う事はない。流石は夢補正。


 でもああ…待ち受けているのが厄介なトラブルだったらどうしよう…キャプテンってアレだ、確か責任ある立場なんだよね。

部下に色々指示したりとか…僕そう言うの苦手なんだよなぁ。ほら、猫って基本単独行動だしさ。

これが犬だとわんわんって言って張り切ってそう…そう、例えばマロみたいな奴の方がこの役職って合ってるんだよな。


 と、色々考えている内に取り敢えずブリッジまで来たぞい。さて、一体ここで何が起こっているのやら…。


「あ、キャプテン、おはよう御座います!」


「おはよう…何があったの?」


「ついに到着したんです、念願の生物が存在する惑星に!」


「お、すごいな…」


 どうやらクルーからの報告はトラブルではなく吉報のようだった。厄介事が待っているのではなくて僕はほっと胸を撫で下ろす。クルーのこの発言の様子から言って多分この宇宙船の目的は生き物の住める惑星の調査なのだろう。

僕は取り敢えずこの報告を素直に喜ぶ事にした。目覚めたらいきなりゴールだったみたいな感覚で宇宙空間での冒険を体験出来ないのは少し残念にも感じたけど。


 ここから見えるその惑星は実に地球によく似ている。ベタなSFみたいにアレって実は地球なんじゃないかって思うくらいに。

僕が宇宙船の窓から見えるその惑星をじっと見ているとクルーから質問が飛んで来た。


「どうします?すぐ調査に向かいます?」


「うーん、まずは無人機で安全を確認してからだろう、ここは」


「ですよね!もう準備は出来ています!」


 僕が判断を下すとまるでその答えを予期していたかのような返事が返って来た。ま、ああ聞かれたら誰だって同じ判断を下すだろうね。

ここはあまり重い感じにならずに軽く流したんでいいみたいだな。みんなやる気になっているみたいだし任せよう。


「じゃあやっといて」


「分かりました!」


 しかしクルーのみんな、本当に嬉しそうだなぁ。きっとこの惑星に来るのが目的だったんだろうから当然かな。

僕はすぐに自分の席に座って色んな情報を端末で調べて行く…これも夢の中だからこそ出来る芸当だね。


 今までの夢だと物知りな他人に色々話を聞いて状況を把握していたけど、流石舞台がSF、みんな自分で調べられるわ。

早速マウスを適当に操作してポチポチーっと。ふむふむ、何々…?


 えぇと、僕らは地球を出て生命の住める惑星の調査に出かけた、と。

出発は今から30年前と、なるほどねぇ。みんなコールドスリープで眠っていて最初のクルーが目覚めたのが今から一週間前、と。

それから徐々に目覚めていって最後に僕がさっき目覚めてそこで全員目を覚ました、か。うーん、一番の寝坊助だったのか僕は。

クルーは全員で27名…みんなそれぞれの分野のプロフェッショナルなのね、はいはい。


 僕は興味本位でクルー全員のプロフィールを確認した。あ、これキャプテンの義務だから!興味本位じゃないから!

で、やっぱり知った顔が次々出て来るわ出て来るわ…顔は知っていて名前の知らない人もこうして名前を知る事が出来た。

いやぁ、テクノロジーの進化って素晴らしいね。


 でもおかしいんだ…サイトーさんやサキちゃんまでいるのにこの中に肝心のマロがいない?これ、どう言う事なんだろう?

今までの夢の皆勤賞であるあの腐れ縁の柴犬がこの夢に出て来ないなんて有り得ない…僕はここでちょっと悪い予感がしていた。


 確か今までの夢で奴が敵として出て来た事もあったから…もしかして…。

僕はそんな悪い予感をとりあえずは胸に仕舞って今はこのキャプテン業務を全うする事にした。


 その後、探査機での惑星の調査は順調に進み特に危険がない事が確認された。そして驚く事にその惑星には文明の痕跡すら見つかっていた。

しかし地上にはその文明を作った生物の存在は一向に確認されなかった。うーん、これは一体?

しかもその遺跡があったのは鬱蒼と木々の茂るジャングルの真ん中…上空からこの宇宙船で直接そこに行くのはちょっと無理そうだった。


「多分文明が放棄されてその後そのまま木々が浸食していったものかと…」


 こう話すのは宇宙船のクルーで考古学者のユウキ君だ。彼はまだ10代なのに考古学の天才としてこの船に乗り込んでいた。

未知の惑星の事を調べるには柔軟な若い頭脳の方が有効だとの判断…なんだろう、多分。

僕は考古学は全くの専門外なのでここは彼の意見に従う事にしよう。


「で、どうする?やっぱり調べたい?」


「当然です!ですが…」


「うん、そう…ちょっと危険だよね」


 彼もやっぱり未知の惑星の文明に触れる危険性を十分認識していた。それはまぁ当然だよね。

でも目の前に絶好の研究対象があるのに手をこまねいて見ているだけって言うのも歯痒い訳で…。

そこでユウキ君はノーリスクよりリスクのある選択肢を選んでいた。


「でも、船にある装備を使えば問題ないとは思うんです」


「じゃあ行く?僕も一緒に行くよ」


「え?キャプテン自ら?」


 僕が一緒に行くと言ってユウキ君は目を丸くしていた。だって部下だけをそんな危険な目に遭わせる訳には行かないじゃないか。

それにこんな面白そうな話、乗らない方がどうかしてるよ。あの未知の遺跡を見ているで胸がワクワクする!

僕はユウキ君の不思議がる顔を見ながらニカッと笑ってこう言った。


「僕はねぇ、冒険が大好きなんだ!」


 探査船からの調査結果は他にも色々な事を伝えていたけど今一番重要度が高いのはやはりこの遺跡の事だった。

遺跡の近くに知的生命体がいる可能性も高い。可能ならば彼らとの接触だって果たしたい。


 そんな訳で僕らの宇宙船はその遺跡に一番近い平地に着陸して早速遺跡調査隊を組織した。

大人数で移動するのも危険なので僕が選んだ少数精鋭でそこに向かう事になった。

メンバーはまずはリーダーの僕にサキちゃん、サイトーさん、コンドーさん、ユウキ君、シノハラさんの6人。


 サキちゃんは通信のオペレーターだけど電子工学にも詳しくて冷静な総合的判断能力も高く…まぁ志願してくれたから来て貰う事に。

サイトーさんは筋力担当で、後武器を扱う能力も高いと言う事で。彼の活躍がないのが一番だけど。

コンドーさんは新進気鋭の植物学者でこの分野での若手の注目株…らしい。この惑星の原生植物について調査したくて志願して来た。

シノハラさんは同じく若手の将来有望な動物学者、志願の理由はコンドーさんと一緒だ。

ユウキ君は…さっき説明したよね。若手で将来有望な優秀な考古学者。


 結局僕が選んだって言ってもみんな積極的に志願してくれてその中から選抜したって言うのが正しいね。

実際、志願者を募ったらクルー全員が手を上げたので厳選する僕もかなり頭を悩ませたよ。

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