11.悪夢を見る猫(22)忍者編4
「ふ、ふふん…僕が対忍術戦が苦手だって?馬鹿言っちゃいけないよ?」
「ほらほらその態度、虚勢が丸分かりじゃ」
流石マロは忍びの棟梁だけあって相手の心理を読むのも得意と見える。
僕は図星を突かれてうまく言葉が返せなかった。
「ぐっ…そっ、それくらいで優位に立ったつもりか?」
「ならば儂のこの技を見事返してみるがいい…返せるものならな」
「何だと!そのくらい余裕だっつーの!」
くそっ…今は何を言ってもマロには勝てそうにない。
こうしてハッタリですら優位に立てないようではこの勝負の雲行きは怪しくなるばかりだ。
ああ神様…どうかマロの次来るだろう忍術の攻撃が自分でも返せる程の大したものではありませんように…。
僕がそう天に祈っている間にマロは素早く印を組んでその忍術を発動した!
「夢幻流忍術影きゅうりの術!」
「えっ?」
僕はそのマロの忍術の名前を聞いて思わず耳を疑った。
ここで?ここできゅうりが出て来るの?マロの忍術で?嘘だろ?
【悲報】この夢でのきゅうり、マロの忍術だった
ポン!
ポンポンポン!
マロの忍術の宣言と共に奴の周辺に複数の影が立ち上がってくる。
その影はやがてきゅうりの形になり一斉に僕めがけて襲いかかって来た。
今までの数々の夢エピソードできゅうりに対して恐怖心を植え付けられてしまっていた僕はもうこの時点でまともに思考が働かなった。
「どうだ…これが我が城に伝わる禁断の巻物から儂が習得した禁術のひとつだ。お主にこれが…」
「うわあああー!」
僕は思わずしゃがみこんで身を固めた。
過去の夢からのトラウマでもうそれ以上の動きが取れなかった。
影きゅうりは容赦なく僕に攻撃を加える。まさにそれは集団リンチ状態だった。
ドカッ!ボカッ!バキッ!
「…お主、きゅうりが弱点だったのか」
マロは呆気にとられた顔をして影きゅうりになすがままの僕を見下ろしていた。
こんな、こんな屈辱的な最後ってあるかよ…。せめて、せめてマロに一太刀…。
ああ…駄目だ…意識が遠くなる…こんな、こんな所で…無念…。