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11.悪夢を見る猫(21)忍者編3

「ほっ!」


 僕はタイミング良くジャンプしてその落とし穴を避けた。

何となくマロの行動が読める気がする。これが僕の夢だからだろうか?

さあ、次はどう来る?僕は頭上で罠の操作盤を操作するマロを挑発的に睨みつけた。


「序盤の罠を避けたくらいで偉そうに…甘いんだよ!」


 今度のマロは標準のようなものを取り出し僕に狙いを定める。

次は自らが僕を狙うらしい。よく目を凝らすと砲台のようなものが僕を狙っていた。

この状態を前にして僕は逆にそれを利用する事を思いついた。


「くたばれぇ!」


 標準を定めたマロはトリガーを引いた。

それに合わせて砲台からバレーボール大の鉛の塊が放出される。

僕はそのタイミングを見計らって飛び出した。

この射出された砲丸を足場にマロのいる場所まで飛びついてやる作戦だ!

リアルならあり得ない作戦だけどこの夢の中なら!


「ほほいっ!」


 忍者の脚力は常人の数倍、フィクションの世界では常識だよね。

この夢の中の忍びである僕も当然同じくらいの脚力を持っていた。

僕の作戦はうまく行き、砲丸を踏みつけて僕はもう一度大きくジャンプする。


 ガシャーン!


 操作室の前方のガラスを割って僕はその勢いのままマロに直接体当たりをした。

不意を突かれたマロは呻き声を上げる間もなく後方に思いっきりふっ飛んで行く。

どうだ、これが僕の実力だ!今度は僕の方がドヤ顔で奴を見下してやった。


「お、おのれ…出あえ!出あえーっ!」


 マロはそう叫んで部下を呼んだ。流石この城の忍びの棟梁と言うだけはある。

ひと声かけただけでかなりの数の忍びがすぐにマロの周りに集まって来た。

ウチの城の忍びは僕一人だけなのに何だよこの差は…。


「あいつを捉えろ!殺しても構わんッ!」


 マロはそう部下に命令して自分はすたこらさっさと逃げてしまった!

そうしてこの場に残されたのは30人ほどの敵の忍びと僕ただひとり…。

ふぅん…いいんじゃない?僕の実力を図るにはこのくらいの戦力差でちょうどいいぜ…。


「…来いよ、一斉に来ても構わないぜ?」


 僕は手を前に突き出し指を動かして敵の忍び達を挑発する。

訓練された忍びがこんな安い挑発に乗るとは思えないけど…ここは積極的に動いた方がいい。

流石に忍び達はそんな挑発には乗らずジリジリと距離を詰めてくる…くっ、無言のプレッシャーが重い…。


 何か…何か手はないかと体中をそれとなくまさぐると服の中にいいものを発見した。

自分の城を出る時に色々適当につまんで来たものがここで役に立ちそうだ。

僕は早速それを敵の真ん中に投げ込んだ。


「これでも喰らえっ!」


 ボムッ!


 そう、これ煙幕。大量の煙がその場に広がって忍び達は混乱した。

その混乱に乗じて僕はその場を抜け出す。良し!これでこの場を抜け出せる。

僕は姿勢を低くして水のようなしなやかさで敵の足の間を抜け見事部屋の外に脱出した。

ふん、猫の体のしなやかさを舐めるなよっ!


「さて、これからどうしよう…」


 逃げたマロを追いかけてもいいけどそれは本来の目的じゃない。

まずは全てが罠だった事を殿に知らせなくては…つまりこの城から脱出だな。

僕は早速来た道を戻…どこだここーっ?


 からくり部屋を脱出した僕は見た事のない場所に出て来てしまっていた。

これでは簡単にこの城から脱出出来ない。

あんまりまごつくと煙幕が収まった後にあの忍び達が追いかけて来るだろう。

とにかく、ここは逃げながら脱出を図るしかない!取り敢えずは走ろう!


 闇雲に走っても無駄に体力を消費するだけ…きっと外に出れば忍者道具で簡単に城を出られるはず…まずは一にも二にも外を目指そう。

取り敢えず僕は目の前の襖を開けて外を目指した。走っては襖を開けて走っては襖を開ける。

無限とも言えるその繰り返しを繰り返しながら次第に僕は奇妙な違和感を感じていた。


(おかしい…いくら何でもここまでこの城が広いはずは…)


 どれだけ襖を開けても変わらな景色が続いた為、僕は思い立って反対方向に走ってみた。

すると反対側はひとつ襖を開けただけで呆気なく元の廊下に出て来ていた。

これは…ここは夢の世界だけどそれでも普通こんな事は有り得ない!


「幻術かっ!」


 いつからこの幻術かかっていたのかは分からない…もしかしたら最初からだったのかも知れない。

僕はまんまと敵の幻術にかかってしまっていた。これでは永遠に城の外に出る事なんて出来やしない。

心を落ち着かせて周りをよく見てみると…ここはどこにも人の気配ひとつない。

僕は息を整えて手を合わせ精神を集中する…。


「解っ!」


 ここで僕はダメ元で前にアニメで見た幻術を解く仕草を真似してみる。

…するとどうだろう…急に周りの景色が歪んで来た。

どうやらこの方法で見事敵の幻術を打ち破ったらしい。やった!楽勝じゃん!

そうして視界の歪みが正常に戻った特、目の前にいたのは驚いた顔をしたマロだった。


「おのれ…よもやこの儂の幻術を破るとは…」


「中々いい刺激になりましたよ」


 僕はそういってニヤリと笑う。やはりこの夢のマロとは決着を付けなければならないようだ。

僕は忍刀を抜いてマロとの間合いを詰めて行く。いつの間にか緊張で手に汗をかいていた。


「調子に乗るな!この猫如きが!」


 ガキィン!


 激高したマロが先に攻撃を仕掛けて来た!僕はそれをうまく刀で受け流す。

そうして次は鍔迫り合いだ。どうやらお互いの力は拮抗していた。


「うう…やるじゃないか」


「お主こそな…っ!」


 単純な力比べでは決着が着かない。お互いにそれを悟ると後ろに飛んで間合いを取り直した。

お互いの息遣いだけが静かな城内に反響していた。


「この城、忍び以外はいないのか?」


「今夜お主が来る事は分かっていたからあらかじめ人払いをしていたのだ」


「それはお気遣いどうも…」


 この城のひと気のなさは最初から仕組まれていたものだったのか…。

城の人的被害を減らす為の策だろうけど逆に言えば少々暴れた所で増援は来ないって事だな。

ようし…ひとつここは本気で暴れてやろう。さて、ではまずは何をしてやろうか…。

僕は取り敢えず手にした手裏剣をマロに向かって投げる事にした。

忍者戦と言えばやっぱ手裏剣は基本でしょ!


 ビシュッ!


 すっー!


 マロは流石忍者棟梁、軽く僕の投げた手裏剣を交わした。だがこれは小手調べよっ!

次に僕は握れるだけの手裏剣を手にマロを狙った。これも交わしてみやがれっ!


 ビシュッ!

 ビシュビシュッ!


 すっ!

 すすすすっー!


「うげ…」


 必殺の手裏剣多段投げもマロには全く通用しなかった。

うぬぬ…中々にこの犬、やりおる…。

手裏剣がダメとなると次は何の攻撃を…。

僕が次の攻撃の手を考えていると今度はマロの方から仕掛けて来た。


「火遁、火炎車!」


 マロが投げた手裏剣は火を纏って巨大な火の車になって僕に迫って来た!

くっ!忍術を使うとは流石忍者!僕は床の畳を叩いて盾にして対抗する。


 バン!


 僕が盾にした畳はマロの放った忍術で一瞬の内に燃え尽きた。


 ボワッ!


 そしてその勢いは畳一枚で飽きたらずその背後にいた僕にまで火の粉が飛んで来る。

全く、なんて威力だよ…マロの奴、本気で殺しに来てるな…。


「うわっっ!あっち!」


「ほう、よく止めたな」


「僕も忍者なものでね…」


 一応強がりを言ったけど困ったぞ…そもそも僕は忍術を何も知らない。

次からもマロが多彩な忍術で攻撃して来たら全部防ぎ切れるかどうか…。

こんな事ならサキちゃんと一緒に見ていた忍者アニメ、もっと真剣に見ておくんだった。


「強がりを言っても分かるぞ…お主では儂の忍術を防ぎ切れまい」


「なっ…!」


 マロには僕の動揺はお見通しらしい。くそっ…バレるの早過ぎだろ…。

しばらくはハッタリでやり過ごそうかと思っていたのに…。

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