11.悪夢を見る猫(8)学園編2
「もう大丈夫なのかー?そうなら戻って来いよー!」
多分間違いない、あの教室が囲碁部の教室なんだろう。
参ったな…囲碁なんてした事もないのに…。
でも何だか呼ばれた事であの教室にすごく興味が湧いて来た。
ここまで来たらやっぱりあの教室まで行ってみるしかない気がして来たぞ。
僕は校舎の外側から教室の場所を大体把握してその場所に行く見当を大体つける。
そうしてまた校舎に入り囲碁部の教室に向かう事にした。
階段を上がって廊下に出て…あれ?その教室だと思う場所の近くに人影が?
もしかしたら無関係かも?僕はそう思ってその人物を余り気にせずに教室に向かった。
「ちょっと!」
その人物を無視して通り過ぎて行こうとしていると僕は突然呼び止められた。
どうやらやっぱり無関係じゃなかったっぽい。
その人は顔がよく分からなかった。でもそう言うの、夢ではよくある事だよね。
僕はちょっと怖かったのであんまり刺激させないように恐る恐る彼女と話をする事にした。
「あの…僕?」
「そう、あなた!あなた今から屋上に来てくんない?」
「え?何で?」
「話があるのよ!ちゃんと来てよね!」
その子は言いたい事だけを全部言い切るとすぐに走り去ってしまった。
何この説明不足感。
本当はこの話を無視してすぐに囲碁部の教室に入っても良かったんだけど
何だかこの話がすごく気になってしまって気が付くと足は自然に屋上に向かっていた。
でも一体屋上に何が待っているって言うんだろう?
ガチャ…。
「おおお…」
屋上にやって来た僕は屋上の開放感に圧倒された。
これが屋上…何て素晴らしいんだ。
見事な青空と空を吹き抜ける風が気持ち良い。
ああ、こんなところでお昼寝が出来たらなぁ。
屋上に来た僕は取り敢えず話に出ていた人影を探した。
ここに呼んだ以上きっと誰か居るはずなんだ。
広い屋上はでも遮るものなんて何ひとつなくて注意して見渡せば人影はすぐに見つかった。
「あの人かな?」
僕は何の警戒心も持たずのその人影に近付いた。
思えばこの時はすっかり忘れていたんだ…。
そう、まだこの夢に出て来ていないアレの存在の事を。
「あの…ちょっとすみません」
「来てくれたのね…」
「私はずっと待っていた…でもあなたは来てくれなかった」
「え?」
何だか話がおかしな方向になって来たぞ…この人は一体何を言っているんだ?
僕は関わっちゃいけない人と接触した気がして怖くなっていた。
どうしよう?こんな人とうまく会話する術なんて何ひとつ持ってないよ…。
「今日はとても幸運だったのよ…あなたにボールを当てられた…」
「あの…あのボールは確か野球部の」
「そうよ!私が呪いで当てさせたの!あなたが振り向かないから!」
「あの…言っている意味が…」
「私の物にならないなら今すぐこの世から存在を消してあげるわ!」
その子はそう言って振り向いた。
ああ…ここで出て来るんだ…僕は何だか不思議と安心してしまった。
そう、こんな闇たっぷりの怖い事を言うその人物こそがきゅうりだった。
きゅうりがセーラー服を着ている…こんなシュールな光景ってないよね。
そのきゅうり女子はいきなりものすごい力で僕の首を絞めてきた。
やっぱり怪しい人物に警戒もせずに無防備に近付き過ぎたのがまずかったんだ。
まさかこんな展開になってしまうなんて…。
「うぐぐ…」
首を絞めらながら僕は言葉にもならないうめき声を上げる。
いきなり首を絞められて僕は何も抵抗する事が出来なかった。
「うふふ…猫は高い所から落ちても上手く着地するって言うけど…強引に落としたらどうなるかしら?」
「う…僕が…一体…何を…?」
「あなたは私の気持ちに気付かなかった!私がこんなに想っているのに!」
そんな無茶苦茶な…僕はそう思ったけど反論する力なんてもうとっくに残っていなかった。
きゅうり女子は僕を持ち上げてそのまま力任せに僕を屋上から放り投げた。
何なんだ…何でこうなっちゃうんだ…。
投げられた僕にものすごいスピードで地面が迫ってくる!僕はパニックになって大声で叫んでいた。