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5.執念深いヘビ

 ある所にヘビとうさぎのラブラブカップルがいました。

 2人は空いた時間があればいつもラブラブしていました。

 この幸せな時間は永遠だとお互いに思っていました。


 そんなある日、となり町からネコが引っ越して来ました。

 新参者のネコは周りに溶け込もうと色んな団体やら集会に顔を出しては町の人々と親睦を図ろうとしました。

 そう言う交流の中でネコはヘビたちカップルと出会いました。


 最初こそぎこちなかったものの、お互いの趣味が合ったりして話が弾みやがて3人でよく遊ぶようになりました。

 ネコもヘビとうさぎがラブラブなのは知っていましたのでその仲を壊さないようにしていました。

 いつしか仲良し3人組と言われるほどに3人は仲良くなっていました。


 ネコはラブラブカップルに気を使い2人がデートの時はそっと距離を置いていました。

 なので仲良く騒げる時だけ2人に合流する形をとっていました。

 楽しい時間はいつだってあっという間に過ぎるものです。

 その頃はずっとこのカタチで上手くやっていけると3人共そう思っていました。


 けれど時間の流れに心の変化はつきものです。

 長い時間を共に過ごす内に段々とラブラブカップルの方にもネコの方にも心境の変化が訪れていました。

 それは避けようにも避けられない運命のようなものだったのかも知れません。

 もしそうだとするならば、運命の神様は残酷です。

 それとも心を弄ぶイタズラ好きとでも言った方がいいでしょうか…。


 最初に心の変化に気づいたのはネコでした。

 ヘビのパートナーのうさぎの事を思う気持ちが友達としての好きではなく恋愛としての好きに変わっていました。

 けれど相手は友達の彼女…ネコは自分の気持ちを抑えました。

 自分がこの気持ちを伝えたらどうなるか…きっと良くない未来しか待っていません。

 だからこそこの想いをずっと秘密にしようと心に誓いました。


 けれどその気持ちは口に出さなくても何となく伝わってしまいます。

 うさぎもまたネコの変化に気付いて意識するようになってしまいました。

 一度意識すると心の天秤は急速に傾きます。

 元々ネコの事をそんなに悪くないと思っていたうさぎはすっかりネコを好きになってしまっていました。


 そうして抱いてはいけない想いが二人を引き寄せてしまいます。

 うさぎはずっと行動に移せないネコに対してついに自分から告白しました。

 それで二人はお互いが同じ気持ちだとはっきり自覚しました。

 もうこうなってしまっては歯止めは効きません。


 ネコとうさぎはヘビの目を盗みながら愛を育みました。

 いけない事をしているという背徳感がお互いの感情をさらに燃え上がらせていました。

 いつか終わる関係だと割りきりながら二人の情事は燃え上がるのでした。


 しかしそんな二人の変化をヘビもずっと気付かない訳がなかったのです。

 2人の様子がおかしいと感じたヘビはずっと2人の様子をチェックしていました。

 綿密な調査の末、やがてヘビは決定的な証拠を掴みました。

 友達と遊びに行くと言ったうさぎは本当はネコの家に行っていたのです。


 元々ネコとうさぎは関係がバレたら別れるつもりでいました。

 しかしそんな事を当のヘビは知るよしもありません。


 ネコの家を突き止めたヘビはその家に突撃しました。

 その時ネコは外に買い物に出掛けていて、家の中にいたのはうさぎ1人だけでした。

 嫉妬に怒り狂ったヘビはうさぎの弁明も聞かず勢い余ってうさぎを絞め殺してしまいました。


 ちょうどその時、買い物を終えたネコが家に戻ってきました。

 家の扉を開けたネコの目に映ったのは絞め殺されたうさぎと復讐に燃えるヘビの姿でした。


シャーッ!


 嫉妬に狂ったヘビの雄叫びにネコは一瞬で全てを理解しました。


「うわああああああ!」


 ネコは逃げました。

 一目散に、全力で逃げました。

 ここで一瞬でも躊躇すれば自分もやられると悟ったのです。


 ヘビもまたネコを許す気なんてありません。

 ネコと同じくらいの勢いでネコを殺す気迫で彼を追いかけました。

 ネコとヘビの命懸けの追いかけっこは一晩中続きました。

 どちらかの気力が尽きるまでこの攻防は止まりません。


 ネコが逃げ切るかヘビが追いつくか。

 それは土地勘があるかどうかも重要な要素でした。

 ヘビの地元を走っている時はヘビが有利でしたが段々とヘビの知らない土地に入ってくるとその土地をよく知っているネコの方が有利になってきました。


 どれだけ2人は走り続けた事でしょう。

 いつの間にはネコは引っ越す前のとなり町まで走って来ていました。

 この町でなら土地勘のあるネコの方が有利です。

 自分の知っている秘密のルートを駆け抜け振り向いた時、そこにヘビの姿はありませんでした。

 1日中走り続けたネコはそこでやっと安堵しました。

 体力を使い果たしたネコはその場に倒れ込んでしばらく動けないでいました。


 その後、風の便りにヘビはあの後うさぎ殺しの罪で捕まったと聞きました。

 それでももう二度とネコはヘビたちと暮らしたあの町に行く事はなかったと言う事です。


 今でもネコはヘビが復讐しに来ると言う悪夢に悩まされています。

 この悪夢はネコが死ぬまでずっと背負わなければいけない十字架なのでしょうね。


 後、追いかけられた時の恐怖でネコはすっかり長細いものを見るのが苦手になってしまいました。

 長細いものが近くにあるだけで発狂したようにびっくりしてしまうのです。

 だからみなさん、ネコの側に長いもの、例えばきゅうりを置いてはダメですよ。

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