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9.魔女との約束(9)

「もう質問はないかい?」


 ネコからの質問が途切れたので魔女はこの話題を打ち切ろうとします。

 ただ、改めて打ち切られるとなるとやっぱり何か勿体無い気がしてネコは無理矢理にでも質問を探しました。


「…じゃあ、魔女さんには名前が幾つもあるのはどうしてなのにゃ?」


「名前って言うのはそれだけで呪文になるんだよ。同業者なら名前を知るだけで相手を操る事も出来る。どこで繋がっているか分からないから他人に名前を知られてはいけないんだ」


 名前が呪文になるだなんて…ネコは魔女のその答えにびっくりしました。

 でも自分の本当の名前を呼ばれないのはちょっと寂しいなとネコは思いました。

 そこでネコは思わず魔女に聞いてしまいました。


「ちなみに魔女さんの本名は何て言うのにゃ?」


「今の話を聞いていたかい?相手があんたでも言えないよ。誰にも教えられないね」


「ケチにゃ…」


 ネコは魔女が名前を教えてくれなかったので思わすつぶやいてしまいました。

 すると魔女は少し怒った感じでこう言いました。


「何とでもお言い!」


「じょ、冗談にゃよ…」


 魔女の気迫に思わずネコは気弱に返します。この反応に魔女に名前の話は出来ないなと思いました。

 それからしばらくして落ち着いた魔女はネコに諭すように言いました。


「どうしても名前で呼びたい時はシーラって呼んどくれ。私の5番目の名前で結構気に入ってるんだ」


「わ、分かったにゃ」


 ネコはこれ以上名前の話題で引っ張るのは難しそうだったのでこの系統の質問はここで止める事にしました。

 本当は名前関係でもう少し色々聞きたい事もあったのですが…。


「これでもう質問は終わったかい?私もそろそろ話すのも飽きてきたよ」


 どうやら今までネコからの色んな質問に答えて来た魔女も答えるのに疲れてきたようです。

 そこでネコは最後の質問をする事にしました。


「じゃあ、あの最後に…魔女さん…シーラはこれからどうするのにゃ?」


「そうだねぇ…じっとしていてもあんたみたいなのがまたやって来るかも知れないし、しばらくは様子見かね」


「分かったにゃ。色々質問に答えてくれて嬉しかったにゃ」


 自分の質問に全て答えてくれた魔女にネコは感謝の言葉を述べました。

 魔女はその言葉を穏やかな顔で聞き入れていましたが…最後に念を押すようにもう一度ネコに忠告しました。


「いいかい?他言無用だよ。もし誰かに話したら…」


「話したら?ど、どうなるにゃ?」


 あんまり魔女が真剣な気迫のこもった顔でそう言うものだからネコは改めて不安になりました。

 約束を破った罰…魔女のそれはかなり厳しいものだと昔どこかで聞いた事があります。

 不安におののくネコに魔女は約束を破った時に下るとてつもなく恐ろしい罰を言いました。


「あんたの体はきゅうりになるよ!」


「ふにゃあああ~!きゅうりはもうイヤにゃ~!」


「せいぜい秘密を守る事だね!」


 魔女はそう言ってまた優しい笑顔に戻りました。

 その為この罰が本当にくだされるのかどうかは分かりません。

 ただ、魔女のこの言葉はネコの心には重くのしかかり絶対にここで知った事はバラさないぞと心に誓ったのでした。


 こうして悪夢の呪縛から解き放たれたネコは魔女にお礼を言って元の生活に戻りました。

 その後、魔女や裏の世界の方々がどんな行動をしたのか部外者のネコには知るよしもありません。

 元々そう言う動きが表に出ないからこそ裏の方々の存在意義があるのです。

 ひとつ言えるのはそれからも平穏な日々が続いていると言う事。

 これはつまりまだ魔王は復活せず、復活を企んだ勢力の野望は達成されていないと言う事です。

 勿論今もまだ闇の中で復活派と阻止派との激しい攻防は続いているのかも知れませんが…。


 話をネコに戻すとその後のネコは悪夢に悩まされる事なく平穏無事に暮らしています。

 ただ、あんな出来事があったからかきゅうりにすごく敏感になってしまいました。

 知らない内にネコの側にきゅうりを置くと死にそうなほどびっくりしてしまうようになったのです。

 皮肉な事にネコは悪夢に悩まされない代わりに今度はきゅうりに悩まされる日々を送る事になってしまいました。

 それでもネコはそうなった事に対して魔女を恨んだ事はありませんし、今でもたまに彼女の事を思い起こしては懐かしんでいると言う話です。

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