表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

六:更衣室の視線

 とうとう最後か。じゃあ気合い入れて聞けよ。


 最後はプールの更衣室の話だ。女子のほうのな。


 あそこは今でも現役で使われてるけどよ、ずっと昔にある事件が起きたんだ。


 事件っつーか、怪奇現象っつーか。

 ある日を境に、女子たちが騒ぎ始めた。女子更衣室で、誰かに見られてるような気配を感じる! ってな。


 自意識過剰だって思うだろ? いやでも、華の女子高生だからよ、やっぱこう、覗きとかそういうのは実際あるかもしれねーわけじゃん。


 だから、先生も原因を突き止めようって調査を始めたんだ。

 でもダメだった、分かんなかったんだよな。

 視線を感じはするけど、何処からかってのがわからない。

 じゃあとりあえず人が隠れられそうな場所を片っ端から潰していこうってなったが結局改善しなかった。


 打つ手なしってことで、調査はいったんそこで打ち切りになった。

 でもやっぱり女子たちは視線を感じてた。気持ちが悪いし、なにより段々腹が立って来てた。なに勝手に人の裸見てんのよ、それもタダ見ってどういう了見よ、って。

 いや、そういうことで怒ってたのかは知らねーけどな。


 でまぁ、自分らで犯人をとっちめてやろうって考えたわけだ。

 まずは、視線を感じる場所を特定することにした。

 いろいろ試した結果、どうにも右側に立った時だけ視線を感じることに気付いた。

 ってことは犯人は部屋の左側に居ることになる。


 が、左側にはロッカーが隙間なく詰められてて、人が隠れる場所なんてもんはない。

 もちろんロッカーの中身はすべて改めたさ。

 カメラ一つだって出てこなかった。


 ロッカーを全部動かして、裏まで確かめた。

 でもやっぱりなんにもない。ぴったりと壁にひっついてて、埃すらそんなにたまってないほどだった。


 じゃあ何処から見てんのよ!

 イライラはたまるが、もう隠れられる場所なんてない以上は気のせいと思うしかない。


 女子たちはみんな諦めかけていた。

 そんなある日、一人で着替えていた女生徒が例のごとく視線を感じた。


 でも後ろはロッカーが立ち並ぶだけで、隠れるような隙間はない。

 女生徒はわざとらしくため息をついてみせた。その時に、ふと結んでた髪がほどけた。

 ヘアゴムが切れたらしい。パツンと弾けるような音がして、立ち並ぶロッカーの手前に敷かれたすのこの下にゴムが落ちてしまった。


 げっと思いながらも、お気に入りのゴムだったもんで彼女は渋々、すのこの前まで来た。

 どうやらゴムは板の真下に行ってしまって、指を入れただけじゃあ取れそうにない。


 めんどくさいが、すのこごと持ち上げるのが早い。

 そう判断して、彼女はすのこを勢いよく持ち上げた。

 目が合った。目が合ったんだ、視線の元はこいつだったんだな。


 すのこの下にな、顔があったんだよ。半分の。

 それがじーっと女生徒を見つめてた。いやぁ、犯人が分かって良かったな。


 なんて悠長なことを言っていられるわけもなく。

 女生徒は絶叫して気絶。駆けつけたクラスメイトもまた、じーっと女生徒を見つめている半分だけの顔を見つけて悲鳴を上げた。


 ま、それきりその顔は忽然と消えてしまったから、たぶん幽霊の類だったんだろう。少なくとも、死体が遺棄されてたってわけではないらしい。警察は来なかったからな。


 え? 今?

 すのこはもうねーはずだ。撤去されたって聞いたぜ。今は女生徒のほうだけ、吸水性の良いマットが敷かれてる。

 半分だろうと顔が隠れられないようにな。


 確かめたけりゃ行って来い。俺は責任取らねーぞ。たぶん、幽霊見るよりおっかねぇことが待ってるぜ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ