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女神の懺悔(2)

お久しぶりでございます。

長らく、大変長らく更新が滞りまして

申し訳ございません。


駄作ではございますが、皆様のお暇つぶし程度にはなると思います。

お時間の空いたときにでもお読みくださいませ。


この話は、一旦投稿しておりますが編集、修正致しますので削除させていただくことがあるかもしれません。予めご了承ください。

私がそう、口にした瞬間全ての時が止まり静寂があたりを包んだ。

兄王は微かに震えながら私に問う。


「それは……、血を濃くして妹の……、神子のチカラを色彩(イロ)を血によって受け継げということでしょうか…………!」

「そうです。私のチカラが及ぶのはシェアリールとその血を濃く継ぐ者です。だからこそ神子に成る前の

彼女と同じ血を持っていた貴方が最適なのです。」


私が口にした言葉は兄王と妹姫、シェアリールを結びつける命である。

相変わらず、人が私に触れることができるほどの実体を伴うことができないが姿と声を他者に示すチカラは回復した。だからこそ、シェアリールが胸を痛めてまで受け入れようとする、受け入れ難い兄王の婚姻を潰す。

それこそがシェアリールの願いだと思って。

しかし、兄王は頑として頷かない。ただただ、シェアリールを大切な(シェアリール)だと言い募る。


「ですが……!!シェアリールは……、私とシェリルは兄妹なのです。たった2人の!そんな、実の妹を娶れなど……!」


頭を振りながら、決してシェアリールを受け入れることができないと口にする兄王をシェアリールはどのような瞳で想いで見つめているのだろうか。

一番最初に、彼等の前に現れた時と同じ場所で同じ位置で兄王やその他の家臣と呼ばれる人たちが私を見つめる。ただ1つ異なるのは、シェアリールが私の後ろにいることである。だからこそ私の位置から彼女の顔が見えない。

兄王が何かを口にするたび、否定の言葉を紡ぐたび、彼女の心は、想いは砕けてしまうのではないかと不安がよぎる。何故、そんなにも(シェアリール)を大切にしながらシェアリール本人を受け入れないのだろう。私には兄王がそこまで固辞する理由がわからなかった。

だからこそ、シェアリールは動いたのだろう。


「陛下」


凛としたシェアリールの言葉は先程まで此方を見ず頭を振っていた兄王の視線を捉えた。

彼女は一歩前に進み出て私の隣に並び立つと着ていたドレスの裾を摘みゆっくりと膝を曲げた。少し前にこのカタチが彼女の国での最高礼にあたると聞いたことがある。そんな礼をとった彼女が小さく息を吐いた。


「わたくし、シェアリール・ディア・ハルティ・エスタシアはエスタシア国の王女としてではなく女神シェリリアール様の神子として申し上げます。」


礼と共に下げていた目線をゆっくりと上げ、兄王を見据えた彼女は姿勢を正し凛としたその声色で、魂で兄王に私の言葉として紡いでいく。


「女神シェリリアール様から貰いしチカラを、この国に留めこれより未来の平和を保つ為に覚悟を決めていただきたい。」

「…………シェリル」

「兄様、もうわたくしは貴方と血の繋がった(シェリル)では無いのです。この国との血の繋がりなんて、ないのです。そして、わたしのことを想ってくれるならーー!……………父様と母様と、……兄様の、血を……、継いだ子供を、わたしにください。」


微かに震える唇が言葉を紡いでいた。

シェアリールはもう血脈で言えば、王族とはいえない。私が神のチカラが馴染みやすいように創り変えてしまったからだ。人が家族として認識するときの一番最重要で、目に見えない血の繋がりがない。

彼女の、妹の揺るがぬ瞳に射抜かれ兄王は張り詰めた息を吐いた。


「…………神子姫よ。そなたを私、アレクサンドラ・ディオ・ハルティ・エスタシアの妻として迎え入れたい。…………承諾してくれるな?」

「陛下の御心のままに」


ゆっくりと頭を垂れ、彼女は腰を折る。

兄王は哀しげな瞳を彼女に向け、シェアリールは伏せられた睫毛を少しだけ濡らしていた。その様子を一番近くで何も言わずに見ていた家臣の1人はただただ哀しげに寂しげに、2人を見つめていた。


ーーこれで、シェアリールは喜んでくれる。


私はそう信じていたし、何よりそれがシェアリールのあの時口にした願いだと思っていた。

だからこそシェアリールはわたしを振り返り笑んだのだろう。ただその笑みに少しの哀しみが浮かんでいたのに疑問を抱いた。

後で話をしなければ、と思いながら沈黙が支配しているこの場を去ろうと実体を消そうとした時、先程の1人の家臣が口を開いた。


「神子様、この老いぼれの話を聞くお時間はございますかな。出来れば彼の方もご一緒に。」


やんわりと柔らかな声色にシェアリールはそちらを振り向く。


「宰相様……」


宰相、とやらの立ち位置を私はあまり覚えていなかった。白髪で白い髭を豊かに蓄えた老人はたしかに豊富な知識と経験を持ち国を支えてきたのだと感じさせる。


「私はシェアリールが承諾するのなら応じましょう」

「わかりました。宰相様、時間を取ります」

「神子様、感謝いたします。さて陛下、しばし休憩をもらいますぞ。さぁ、皆のものも仕事に戻りなされ。」


ぱん、と一つ手を叩き止まっていた時が動き出すかのように空気が変わる。

なるほど、この老人はずいぶんと人望があるのか。地位が高いと傲慢な態度をとる人を多く見てきたが、こういった人もいるのかと新たにわかった。

ふと、シェアリールをみると不安げな様子で老人を見つめていた。


「では、参りましょうか。私の執務室でよろしいかな」

「大丈夫です。シェリリアール様こちらです。」

「わかりました。」


前を歩く2人を見ながらゆっくりと後ろをついていった。

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