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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

銀色の聖花 リリーと愉快な仲間たち

銀色の聖花

作者: あると

ファンタジーな世界と登場人物ですが、ちょいちょい現代のネタが入ります。

ある少女が強く生きていくお話です。ほのぼのでコメディな仕上がりとなっております。

これは神界と魔界、そして人間界の三界で世界が成り立っていると思われている世界の物語。

神々が魔物から人を守ってくださると考えられている古い時代のお話。

迷信深い領主が治める町にあるお告げが下った。


「生贄が決まったって言うのは本当かい?」


「ああ、あそこの孤児院のリリーって子だよ。」

「あのきれいな子かい。しかしなんで生贄なんて・・・そんなに景気がいいとはいえないけど北の町に比べりゃずっと平和じゃないか。」


「神官と領主がそろって神のお告げがあったって言うんだしょうがないだろう。何が目的なんだか知らないがね。」


「それが大きな声じゃ言えないけど、領主の馬鹿息子がその娘にこっぴどく振られたんだってさ。」


「じゃなにかい、腹いせにかい・・・なんてひどい。神への生贄は神殿の塔にいるはずなのに領主の屋敷に軟禁されているそうじゃないか。きれいなのも考え物だねえ。家の子じゃなくて良かったよ。」


町の中ではそこかしこでこんな会話がされていた。町を救うために神が聖女の花の名を持つ美しい少女を望んだと神官が発表したからだ。そして一人の少女が領主の屋敷で神のものになるための準備を行っていた。


「いいか、3日後にお前を教会に移す。な〜に神は純潔の娘とは言っていなかったからな。ただの捨て子が俺に歯向かったりするからだ。おとなしく俺の言いなりになってりゃ良い目を見させてやったのに。」


見るからに親の権力を自分の物だと思い込んでいる男に寝台に押さえつけられている娘は長い黒髪を襟元で一つに結び、青い瞳を怒りできらめかせていた。


「ふん、ただの捨て子に公衆の面前で誘いを断られたからって乱暴して殺そうだなんて!しかも神様のせいにするなんてなんて、意気地がないのこの卑怯者!」


「この女!」バシッ


「たたいたわね!これ以上なんかするんだったら舌噛んで死ぬわよ!生贄にされる前に領主の家で死んだら町のひとが・・いえ、大聖堂が調査に来るわよ!」


「ちっ口の減らない女だ。だがな、知っていたかこの屋敷には今、ミリアがいるんだぞ。お前が逃げ出したり自害しようとすればあの婆を殺す。あの孤児院はあの婆で持っていたようなものだ。あいつが死ねば孤児院の子供たちはのたれ死ぬだろうな。町を救うための生贄を拒んだ女を育てた責任で死ぬんだ・・・町の人間も助けるわけがない。いいか、少し考える時間をやろう。誰につけばいいのかよーく考えるんだな。夜にまた来る。お前が俺を楽しませるならいくらでも抜け道はあるんだからな。」


そういって男・・・領主の息子シャガードは彼女をおいて部屋を出て行った。

 

ドアと窓の下に見張りを2人づつ置かれた2階の部屋に彼女は監禁されている。脅迫もされ、かよわい女性が一人では逃げようもない。そんな状況だ。

 

青ざめた美しい顔をうつむかせその目には絶望の色を浮かべ・・・ていなかった。瞳をらんらんと輝かせ見張りの位置と部屋にあるものを確認していく。


「こんな部屋に軟禁して・・・ふっふっふっ軟禁した積りなのかしらね。甘いわ。まったくやってらんないわよ。さて、このシーツは使えるわね。あとこの燭台は殴りやすそうね。うーん、火事を仕掛けてもいいな。さてミリア院長はどうしょうかな。あのひとのことだから簡単にやられることはないわね。私が自力で逃げ出すってわかってるでしょうし。火事に決定!」にこやかに自分の未来を自分で切り開くことを決め行動に移そうとしたところに抑えながらも美しい声が落とされた。


「逃げ出すつもりか、娘。」


そこには闇をまとったかのような黒いマントをかぶった男がいた。フードで影になっているために顔は隠されているが薄めの唇に通った鼻筋で整った顔立ちなのはわかる。


音もなく部屋に現れた男に彼女は臆することなく見張りには聞こえないように抑えながらも怒りをにじませた声でしゃべりかけた。


「リリーよ!ふん、いもしない神への生贄になるなんて真っ平ごめんよ。神の花嫁なんて大嘘!あの馬鹿息子のおもちゃにされるだけなのよ。ばかげているわ。」


「でも、本当に神がいて、お前が逃げたせいで町が滅んだらどうする?」


「関係ないわ。たかが娘一人捧げなかったからといって滅ぼすような神はいつか絶対に町を滅ぼすわよ。それが遠い先か今かってことだけ。」


「では、お前は自分のせいで町が滅んでも何の良心の呵責も得ない。そういうことだな。」


「なに、馬鹿言ってるの?私のせいで町が滅ぶんじゃない。町を滅ぼすような神を信じた人々のせいで町が滅ぶのよ。生贄を要求する神なんていなくたって領主と役人がしっかりしていれば町は栄えるわ。」


「あくまでも自分の責任ではないと?」


「ええ。あ〜でも私にも責任があるわね。この町を・・・人々を変えなかった、変えようとはしなかったわ。すべてを神のせいにする罪深い人々をね。それが意識的にしろ無意識にしろ。神の所為にすれば自分が楽だもの。領主の横暴も教会の腐敗も神が鉄槌を下さないのだから、自分達も何もしなくてもいいっていう風に思い込んじゃうほうが楽だわ。馬鹿な領主とそいつを崇めていた自分たちのせいで町が衰退していっても、生贄が逃げたから神の加護がなくなったんだって信じたほうが楽だもの。」


「お前は面白いな。神を信じるものを罪深いと称すか。」能面のように表情を動かさなかった男が初めて表情を緩めた、それだけでリリーは自分の周りの空気が軽くなったように感じた。臆していないようにみせても、男の持つ、冷たい闇が凝ったような存在感は恐ろしかった。


「神を信じる人ではなく神のせいにする人よ。自分の人生は自分のものよ。神のものじゃない。自分が行ったこと、自分の運命は自分のものよ。神は何もしないわ。自分で運命を切り開かなくてはいけないのよ。私はなにも信じていないわけではないわ。皆が信じているものとは違うだけ。」


「おまえは何を信じていると?」黒マントの男はおもしろそうに問いてはいても、返答次第ではすぐにでも自分を殺すであろう凄みをリリーは感じ取っていた。


「自分よ。私自身。」


「ほう。孤児院に捨てられ、身寄りがないからこそ生贄に選ばれた不運な自分を信じると」


「ええ。親に捨てられたのは予想外だけど、親に育てられていたって生贄に選ばれたかもしれないわよ。なにせ生贄に選ばれた本当の理由は領主の息子を痛めつけたからだし。っていうか滅ぼすなら早くすれば?あなたがこの町の神なんでしょ。私は生贄になるつもりないもん。あなたに殺される気はないわ。死ぬ気で逃げるわよ。まあ、あなたが私を生贄に望んだわけじゃないでしょうけどね。まさか、本当に神が出てくるとは思わなかったわ。」となぜか悔しさをにじませた顔で彼女は言った。


「私が神だとわかっていながら今までしゃべっていたのか。剛毅な娘だ。」

それを聞いて、今までのように上辺だけではなく本当に楽しそうに男は笑った。それをみて初めて、男が思ったより若いことにリリーは気づいた。


「あなた自分の格好と威圧感考えなさいよ。どうみても真っ当な一般人にはみえないわよ。」


「ふふふ・・気に入った。娘、町は滅ぼさない。生贄にもならなくていい。衣食住も保障してやる。行くところもないのだろう?その代わりに私が飽きるまで私の城で暮らせ。。」


「それって愛人みたいね?愛人になるのと生贄になるのとどっちがいいのかしら?」

訝しげに聞く彼女を男は意地が悪そうな微笑を浮かべ面白そうに見た。


「私の生贄は悪夢を見せ続け恐怖で気が違えていくさまをみせるもののことだが。そのほうがいいのか?」


「遠慮しておく。それであなたと暮らすデメリットは?」自分より数10センチ高いところにある男のフードに隠された顔を睨むようにリリーは聞いた。


「私の領地からは出られない。私が飽きたらお前を捨てる。まあ命は保障するよ。それに手は出さないから安心しろ。客人として扱うよ。」


「空は見える?私、空が好きなの。空が見えるならいいわよ。」


死は免れても今までの生活を捨ててこの神の元で暮らさなくてはいけない、そんな不安をまったく感じさせずに彼女は笑顔でうなずいた。


「こんな人間界の汚れた空よりずっと我々の世界の方が美しいぞ。契約成立だな。」


そんな彼女の笑顔をどこか眩しそうに見ながら彼も微笑んだ。


「あなたの名前は?本名はいいけど、なんて呼べばいいの?」


「くっくっ・・・フェイと。」


神の名には力が宿るため、本当に信頼されているものにしか本名は明かされない。それを知っているからこその発言だ。自分の立場が良くわかっていると彼は彼女を見直した。


「わかったわ、フェイ。さっきも言ったけど、私の名前はリリー。捨てられていたときに持っていたペンダントにユリの花が彫られていたから院長が付けたの。」


「聖女の花か。」


「ええ、これからよろしく。」


「ああ、さあ我が城に行こう」

彼が差し出した手を取ろうとしたが、彼女は考え込むようにしてその手をとめた。


「ねえ、ちょっと待って。私がいなくなったら逃げ出したって皆は認識するの?領主が全部、私に責任押し付けそうね。

ここに火を付けて逃げて大聖堂と隣の領主に訴えようとしていたんだけど。隣の領主はここの領主を嫌っていて足を引っ張りたがっているし、奴隷解放とか人権面に力を入れているから絶対に助けてくれると思うのよね。

そうすれば教会にも領主にも調査が入るし。院長や子供たちはたぶんもうどっかに隠れているわね。そういう人たちよ。現状認識に聡いの。

ここに連れて来られる前に逃げようかなとも思っていたんだけど。

聖女の花の名を持つなんて大雑把なことをばか神官が言ったから、他にもいるのよビオラとかベロニカとかその子達に迷惑はかけられないもの。

一度、神官が私を生贄だと正式に認めてから逃げる必要があったの。

だからおとなしく軟禁されたんだけど、あなたに着いて行く前に後のことをどうにかしないと。」とマシンガンのように話すリリーは自分だけが助かればいいとは欠片も思っていない。後々のことまでも考えることができるこの時代にしては珍しい女性だ。


「そうだな、ただの脱走だと神官と領主への罰が何もないな。

最初は私の名を騙った罰として自分のものにしようとした生贄の娘を惨殺してやろうと思って来たのだが…そうだ、聖なる娘が人の醜い欲望で殺されるところだったのを神が救いにきてそのまま神界に連れて行くというべたな物語を夢で見せる。

全員が見たら領主たちも何もいえんだろう。大聖堂と隣の領地にも見せてやろう。」


「ほんとにべたね…。聖なる娘って…でもみんながいっせいに眠るとは限らないじゃない。夜には馬鹿息子も来るって言っていたし。私がいないってわかったら大騒ぎになって眠るどころじゃないと思うわよ。」

小首をかしげながらも冷静に判断をする彼女をますます面白いと思いながら彼は補足説明をしていく。


「白昼夢のようなものだ。眠りにつかずとも脳裏に浮かぶ。他になにか疑問はないか?」


「ん。それならいいわ。孤児院の皆も安心するだろうし。聖女がいた孤児院だってことで同情もされるだろうし寄付金もきそうね。安心だわ。」


そうにっこり笑って彼女は彼の手を取った。

フェイはリリーを片手で抱きよせ何か呪文を呟き、マントをひらめかせた。

次の瞬間には二人は領主の屋敷ではなく森に囲まれた城の塔の中にいた。


「わあー簡単に神界に来られるのね。わー空が高いーきれー」

彼女は子供のように歓声を上げながら塔から見える風景に見入った。

「気に入ったか?」そんな彼女はほほえましげに見つつ、彼はやっとフードをはずした。彼が素顔をあらわにしていることに気づきもせず、彼女は率直な疑問を彼にぶつける。


「ええ!ところでフェイって神族よねえ。何でこんなところに住んでいるの?暗い森に囲まれた古いお城ってどっちかって言うと魔界のイメージなんだけどって・・・」

そこまで言って、やっと振り向いた彼女は初めてみる彼の素顔に一瞬かたまり、あのフードのしたはこうだったのかとか整っているとは思ったけどこれは反則だ、なんで隠すんだとかぶつぶつ呟いた。

顔も赤らめずに自分の顔をみてあまつさえ文句を付けている彼女の反応に面白いものを拾ってきたと機嫌を良くしながらフェイは彼女の問いに答えた。


「神族と魔族というのは人間が勝手に作った区分けだ。我々は同じものだ。

我々を見たものたちが勝手に我々を区別しただけだ。

呼び出した人間によっては私を魔族として認識するだろう。神族と魔族の違いなんて血や狂乱を好むか好まないかという人の判断だ。

お前の町の生贄の風習はあれは初代の町の主が町の守護として私を呼び出したときにフードをかぶりっ放しでいたら私を死の神と勘違いをして勝手に始めたんだ何かが起きるとくれるというからもらっていただけで私が欲しがったわけではない。

人はみな恐怖を感じると同じ行動をとってつまらんからな。

それに我々は人間に多少の手出しはしても町や国を守護することはめったにない。たいていは名前だけだ。私のようにな。

だから生贄の風習も100年ぐらいで廃れて私もすっかりあの町のことは忘れていたんだがな。私が生贄を欲しがったなどと愚かなことを言うから罰を与えに行ったんだ。」


「あの町はこの前200周年やったからそれ以上生きているってことね。

なんでフードかぶってたのよ?

ただのマントにしていたら死神には間違えられなかったんじゃないの?

けどその銀の長髪に黒のマントの美形って人から見たら吸血鬼にしか思えないか・・・。」


「あんなナルシストの集団と一緒にするな!

あいつらが鏡に映らないって言うのはうそだぞ。

鏡をみると自分に見とれてしまって仕事にならないからわざとやっているだけだぞ。何しろ自分に見とれている隙に獲物に逃げられたり、反撃されたりするから高位のもの以外は人間界では鏡に映らないように術をかけているんだ。」


この怒りよう、見かけでよっぽどいやな目にあってきたのねと月の光を縒ったような銀糸の髪を背の半ばまで伸ばしアメジストのような紫色の目をした一度見たら忘れられないほどの美しい青年に同情しつつため息混じりに彼女は呟いた。


「意外な秘密を知ってしまった・・・。ダサいのね・・・」


「お帰りなさいませ、旦那様。それが今回の貢物でございましょうか?」


塔から城の玄関ホールに移動した彼らを初老の落ち着いた雰囲気の男性が恭しく迎えた。若いころはさぞもてたであろう面影を残した紳士だ。


「いや、これはこれから私とともに暮らす。客として扱え。」


「ちょっと!人のことそれとかこれとか失礼でしょ!リリーって呼ばないならフェイの事だってこの銀髪!ってよぶわよ。」


「なっなんという暴言を・・・旦那様このばかな人間の小娘は何なんですか!」


リリーを睨みつけるようにして怒る彼はフェイよりよりよほど主人らしかった。


「だからリリーだって言ってんでしょ。お・じ・さ・ん。」


「落ち着け、二人とも。りりーは面白いから拾った。

リリー、彼はセイレス、執事だ。

セイ、リリーは私が飽きるまでこの屋敷に滞在する。

その間の面倒はすべてお前が見るように。

私は彼女に衣食住と命の保障を契約した。

この領地から出ないことと引き換えに。

リリー、もう少し年長者に対する言動を考えてくれ。」


「確かに失礼だったわ、ごめんなさい。これからよろしくね、セイレスさん。」


「わかりました。しかし我が主人をフェイなどと軽かるしくお呼びしないで頂きたい。」


「セイ、私が呼べといったのだ。」


「あなたはこの侯爵家の当主なんですぞ。今回のことだって、あれほど部下を連れていくようにお願いしたのに、お一人で行ってしまわれて!どれほど心配だったか!」


「すっすまん・・・」

使用人としての立場を忘れ、本気でフェイを叱っている姿はまるで、親子のようだ。彼が主従の域を超えて主人であるフェイのことを大切に思っているのがよくわかる。

そしてフェイ自身も彼のことを大事に思っていることが。


「わかったわ、でも私は彼に仕える為にここにきたんじゃないわ。だから、様とか主人はやだなー・・・んー銀紫の君とかは?通り名っぽくてよくない?あし〇がおじさんとか紫のとかはもうあるしさ。」


「なんで家で通り名でよばれなくてはならないのだ。なあセイ・・・セイ?」


突拍子もないことをいうリリーにさぞ怒るだろうと執事の顔色を窺って見れば、どこか幸せそうな顔をしてぼうっと上を見ている。

物心がつく前からこの城を取り仕切っていた厳格な執事の初めて見せる表情に戸惑いと気味悪さを隠せはしなかった。


「銀紫の君・・・ネーミングセンスはありますね。娘いや、リリー様。私のことはセイとおよび下さい。」


「ありがとう。セイさん。

でも私は様付けで呼ばれるような人間ではありません。

リリーで結構ですわ。それにただ養われる気もありません。

お払い箱になるまで炊事洗濯裁縫に、庭仕事畑仕事家畜の世話なんでもやりますわ。」


「客だといったろ。何もしなくていい。」


「いやです。何もやらせてくださらないなら、そのマントいっぱいにバラの刺繍をして、おまけに銀紫の君って書きますよ。」


「好きにしていいが、それだけはやめてくれ。何を想像しているんだセイ!」


「いや、旦那様にバラはお似合いだなっと」


「もう、勘弁してくれ・・・私は休むからセイ、あとは頼んだ。彼女にはあの部屋を使わせろ」


「かしこまりました」


「セイさん。銀紫の方ってあんなきらきらしい見た目なのに派手なの嫌いなんですね。あのカーテンだってもっときれいな刺繍を入れたらぐっと素敵になるのに。」


「そうなんですよ、リリー。あの方は黒しか身に着けませんし、あの銀の髪にたしかに黒は似合いますが、絶対にほかのお色だって素敵なはずです!!

宝飾品だって付けられませんし、もったいないです。

あんなにお美しいのに地味な格好で、こんな暗い城でメイドもおりませんし。

他の高貴な方々にはご隠居などと呼ばれて・・・」

ここぞとばかりに自分の身なりにかまわない主への不満をぶちまけるセイレスに若干引きながらも解決法を示すリリー。彼女がこの城になじむのもすぐのことだろう。


「・・・わかったわ。まず屋敷を明るくしましょう!セイさん、まずカーテンを洗って、窓をきれいにしましょう!あと庭にお花はあるかしら?」


「庭師はいるのですが旦那様に興味がないためほぼ菜園になっています。」


「こんなお城なのにバラ園がないなんて・・・まず部屋に荷物をおいてそれから庭に行って・・・」


お屋敷改造計画を楽しげに考え始めてしまったリリーを微笑ましく見つめながら、彼女が主人を変えてくれるきっかけになることを祈った。


「リリー、まず部屋に行きましょう。」


「このお部屋をお使いください。」


「あら素敵。ほかの処と雰囲気がまったく違うわね。」


そこは花の刺繍にあふれた部屋だった。オールドローズ色のカーテンにリネン類、見るからにかわいらしい女性の部屋だったとわかる。


「旦那様のお母様が使われていた部屋です。」


「・・・ってそんな大切なお部屋使っていいの?」


「旦那様がそうおっしゃったのですし、あなたはメアリ様と同じ人間ですので。この部屋にふさわしい方だと思いますよ。あの方もおっとりしているのにまったく物怖じしない方でしたよ。聖女のような外見と違い、剣が得意なエクソシストでしたしね。」


「銀紫の方ってハーフだったのという驚きよりも、そんなすごそうなお母様から生まれたからちょっとかわっているのかしら?ってもしかしてお父様は助け手として?退治される側としての出会い?どちら?」


「もちろん退治される側です。あの時は先代の親友の方が奥様の助け手として敵になられるは恋のライバルになられるはで大変でしたが、今はいい思い出です。」


「もちろんなんだ・・・奥が深いわ・・・」


銀糸の方の家庭事情の複雑さに頭を悩ませながらもこれから、もしかしたら一生を過ごすことになるなんて思いもよらなかった彼女だった。




初めて作品を公表しました。リリーちゃんを気に入っていただけたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、紙魚です^ ^ リリーも可愛かったですが私はセイレスが好きです(*^^*) 面白くて短時間で読み終わってしまいました(;^_^A 続編があっても良いと思います☆*:.。. o(≧…
[気になる点] 「あの町はこの前200週年やったから 周 「りりー、まず部屋に行きましょう。」 リリー 「銀糸の方ってハーフだったのという 銀紫 [一言] >あんなナルシストの集団と一緒にするな!…
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