流星雨の空の下
「今日は獅子座流星群の極大の日ですが、今年は月明かりもないため、とても良く見えるでしょう」
テレビのお天気お姉さんが、朗らかに教えてくれる。
と言われても、一緒に見に行く相手もいないから、今年も一人さみしく、ラジオを聞きながら酒を呑みつつ鑑賞しようと考えた。
毎夜し恒例になっているから準備は慣れたものだ。
ベランダに白いデッキチェアを置いて、ワンカップの酒とつまみをサイドテーブルに置くと、準備は完了だ。
何か連絡があるかもしれないから、携帯はサイドテーブルにおいておく。
さあ、鑑賞開始だ。
今年は1時間に10〜20個見えるということだったので、かなり期待をしている。
その時、携帯がなった。
「もしもし」
「あ、佐津さんですか」
声の主は簡単にわかる。
会社の後輩で俺が技術指導をしている、黒川渚沙だ。
「今、星を見ているんですが、どんな感じですか」
「きっとそっちと変わらんさ。綺麗な星空だよ」
「そうですか。なら、きっと見えますよね、流星」
「この天気だと、そうだろうな。きっと見えるだろうな」
「じゃあ、お願いごと考えなきゃ……ありがとうございます。失礼します」
電話はすぐにきれた。
「…まったく、女てのはいつまでもロマンチストなんだからな」
とはいったものの、確かにただ見ているだけというのも味気ない。
だから俺は、明日からは黒川が、仕事で失敗しないことを願った。