もふもふパニック 7
「あれが食べたい、これが食べたい」と言われるままにちびもふブラザーズの口にサンドイッチを運んでいると、一通りの味を制覇して満足したのか、アルゴス君は私の膝から下りて、人の姿になった始祖様を椅子にして、食べさせて貰っていた。「ママがお膝痛くなったら大変でしょ」との配慮もあるらしい。
「野菜なのに、さんでっちのなら食べれるぞ!!やっぱりママは魔法使えるんだな〜」
「ね〜。でもやっぱり可愛いから大丈夫だったね〜」
「だな」
美味しいお顔を惜し気も無く見せてくれながら、アルゴス君はどうしてもサンドイッチが発音出来ないらしく、開き直って「さんでっち」を呼称している。そんなアルゴス君の頭を優しく撫でながら、小さめな丸パンとは言えどもサンドイッチを一口で食べる始祖様に、喉に詰まらせやしないか、子供達が真似をしたがらないかとはらはらしてしまう。私の老婆心に気付くはずも無い始祖様はご機嫌で口を開く。
「サンドイッチは一気におかずまでいけるし、青空ごはんにゃサイコーだな。サンドイッチと青空ご飯、皆に教えりゃ、流行るんじゃね?」
「はい!!美味しいし、青空ご飯、こんなに楽しいし、一人占めはダメだしな!!」
「そうだね〜。僕たちも青空ご飯初めてだけど、にこにこが止まらないもん。皆もしたいよ。きっと」
始祖様の言葉に千切れんばかりに尻尾を振るちびもふブラザーズは、「ディーバに言って、おっちゃんや皆に教えなきゃ」と鼻息も荒い。そんなちびもふブラザーズと始祖様に、疑問がするりと口から零れた。
「外でこうして食べる習慣はフォレストには無いのですか?」
「無ぇな。フォレストに生まれてから、始祖様になってからもこれが初めてだ」
告げられた答えに疑問を被せる。
「畑仕事などの外で仕事する人達や旅する人々はどうしているのですか?」
「どうしてるって……、ああ、ミーナちゃんの世界では青空ご飯が定着してんだもんな」
「はい」
心得たとばかりに頷く始祖様に返答していると、「スープ飲みたいから下ろして〜」とマルケス君に言われる。そっとシートの上に乗せると嬉しそうにテチテチとスープを舐めている。
「こっちじゃ、飯は家だったり、メシ屋だったり、職場の食堂だったり、必ず屋根のある所で食べるんだ」
「それは、屋外だと危険があるからですか?」
そう言えば、こちらは竜も居る立派なファンタジー世界だ。料理の匂いに誘われて、魔物などが寄ってくる可能性もあるかもしれないと考えて青くなる。だが、始祖様は私の恐怖を一蹴してくれる。
「うんにゃ。ただ、そうあるもんだと言われてるだけだ」
「あれ?でも、セインさんの父上より、食べ歩ける何かを教えてほしいと言われているのですが……」
「小腹塞ぎの食いもんと飯とは違うからな」
あっさりと返されたそれになんとなくモヤッとしたが、確かに、クレープやタコ焼きの買い食いを「食事」とは言わないしな、と納得する。私達を尻目に食事を進めていたアルゴス君が叫ぶ。
「野菜に入ってるマヨ、サイコー!!」
「これかけてくれるなら、野菜もへっちゃらになりそう〜」
興奮して雄叫びを上げるアルゴス君に続いてマルケス君も「うぉ〜ん」と鳴いている。二人のマヨネーズ大好き発言に、ふと「マヨラー」なる、度を過ぎたマヨ熱を抱く人々の存在を思い出す。
アルゴス君もマルケス君も、お願いだからマヨネーズを啜るのは止めてね。