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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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意見交換と晩餐 8

「「ルーにい!!」」

 ルッツォさんを確認した毛玉ちゃん達は、始めこそ驚いていたようだが、嬉しそうに尻尾を振っていた。

「お?なんだ?ちび達はなんでもふもふなんだ?」

 ルッツォさんは子供達に質問しながら、ア然としているセインさんとおじさんに構わずに、皿を二人の前に並べていく。

「「ママとあ〜んでご飯でお風呂して、一緒にお眠だから」」

 ふふ〜んと誇らしげに胸を張る毛玉ちゃん達に、うらやましそうにルッツォさんが言う。

「なんだよ〜。俺も混ぜろよ〜」

 ぎょっとしてしまった私をよそに、子供達は自慢げに答える。

「「ダメ〜。入って来たら噛み付いちゃうから」」

 器用にくふくふと含み笑いをする毛玉ちゃん達は、人の姿のままなら、に〜んまりと悪戯っ子そのものな表情を浮かべたに違いない。

「あ〜。じゃ、しゃあねぇな。 あ、茶色いのがコロッケ、赤いのがミネストローネ、熱いから火傷に気をつけて食え」

 ルッツォさんはアルゴス君とマルケス君に笑って答えた後、おじさん達に勧めていた。それに被せるように毛玉ちゃん達も、「あっついけど、うんまいんだぞ〜」とか、「フーフーしないと火傷しちゃうよ?」とか教えていた。子供達の言葉に背中を押されたのか、親子は恐る恐るミネストローネを口に運ぶと、後は無言で食べ進めていく。

「どうして、ルッツォさんが?」

「いや、ミーナに説明しろって言われてたのと、ディーバに呼ばれたから、調度良くね?って事で」

「私に説明とはなんでしょうか?」

「実は、民にミーナ様発案の食べ物の作り方を流布するに辺り、お願いがございます。それの説明兼説得です」

 を?説得?

 ディーバさんの言葉から察するに、私がゴネかねない何かをお願いしようと思っているらしい。しかし、今、私がゴネるならば、子供達と引き離された場合か接近禁止命令を出されたかの二択しか無い。他であればゴネはしないが、ルッツォさんが出てきたと言う事は料理に関する事柄かもしれない。

「キャンディーとジャムを教えるにしても、やっぱ誰でも、元祖とか始祖とか言われる奴から習いたいもんだろ?だから、不公平感を出しちゃなんねぇってんで、ミーナ自らじゃなく、(おれ)厨房(とこ)から派遣してこうっつう事になってさ」

 確かに、「史上初」とか「○○の生みの親」とされる人物が手の届く場所に居て講習会を開くとなれば、そちらに行きたくなるし、いくら「直伝された」と言われても、当人以外から伝授されなかった人達から不満の声が上がらないわけはない。だったら始めから、私を出さず、料理だけを流布した方が要らぬ混乱も不満もよばないだろう。料理人であれば、不服となるかもしれない決定も、素人の私はなにも問題は無い。

「ミーナ様はアルゴス様とマルケス様とご一緒でないとよろしくないかと思いましたので、申し訳ないのですが、容赦下さい」

「もちろんです。お手数かけてすみません」

 私が頭を下げると驚いたような表情でディーバさんがこちらを見ていた。ルッツォさんがポリポリと頭を掻いて言う。

「市のたたない日に順番に志願者を集めて作りましょってなったんだけどな?いっそ、国営工場にしちまった方が色々と楽な気もするけどなぁ」

「確かに……、セイン、申し訳ないが父上の時間の許す限り、話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「は、はいっ!!もちろんでふっ!!」

 いきなり名指しされたセインさんはよほど慌てたのか噛んでしまう。

「「それい〜っ!!」」

 大人達はスルーしたが、なにがどうお気に召したのか、その後しばらく子供達は興奮気味に「でふ、でふ」言いまくり、可哀相にセインさんは顔を赤く染め、小さくなっていた。

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