意見交換と晩餐 3
毛玉天使ちゃん達は、一緒にママのお膝抱っこ満喫中だ。彼等の毛波を撫でてから口を開く。
「先ほどから気になっていたのですが、始祖様はフォレストで起こった事象は把握なさっているんですよね?」
私の言いたい事が分かったのか、始祖様はにやりと笑う。
「知ってるよ?」
「では何故、不在中の出来事を皆に聞いているのでしょうか?」
あまりにも自然に、自分の不在中の出来事を聞いていた為、私もその事実に気付くのが遅れた。
「「あ!!」」
小さく声を上げた毛玉ちゃん達は「そうだった」とばかりに私を見上げている。始祖様を除いた男性陣も声こそ上げなかったが、目を丸くしたり、頷いたり、のリアクションをしている。国の中枢を担う彼等がそんなにうっかりで良いのかとしょっぱい気持ちを抱くと共に、それだけ世界は平和なのだなとも思う。
「でもさ?聞いた方が面白いから」
軽く胸を張り、ニヤリッと笑った始祖様に脱力感を覚えたのは私だけでは無いはずだ。空気を変えたかったのか、こほんと小さく咳ばらいをしたディーバさんが口を開いた。
「ミーナ様が心配されていた瓶の事ですが、ヴォルケーノには問題無いと注文を受けて貰えました。こういう食べ物を入れたいのだとジャムとキャンディーは転送魔法で贈りました」
「ありがとうございます。お手数かけました。あ!!体型を気にする方とあまり体を動かさない人に注意事項があります。クッキーやケーキ、キャンディーやジャムなどの甘い物は食べ過ぎると面白い程に簡単に太ります。先方にも注意するように伝言お願い出来ますか? アルゴス君もマルケス君も、お腹壊しちゃう前に丸々と太っちゃうよ?」
「「え〜っ」」
間髪入れずにブーイングする毛玉ちゃん達は、余程不満なのか、ぐるると小さく唸っている。「すぐにヴォルケーノに伝えます」とディーバさんが席を立つと、何故かソルゴスさんも着いて行った。首を傾げていると、エリゴスさんが「副長が休みだから、定時報告を受けに行ったんだろう」と教えてくれた。
「「本当にダメ?」」
「お代わりいっぱいしちゃうとダメ」
私の言葉にショックだったのだろう二人は、耳も尻尾も頭も力無くうなだれている。太りすぎて動けない毛玉ちゃんは可愛いだろうが、おデブな王族は「民の血税で好き勝手してます」と印象づけてしまいそうな気がする。トップが守るべき民に眉を潜められたらおしまいだ。平和なこの国では無いとは思いたいが、疎まれてしまったら、最悪、クーデターなど起こされかねない。それだけは避けたいと、しょんぼりしている毛玉ちゃん達の被毛を何も言わずに優しく撫で続けた。
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思っていたより早く戻って来たディーバさんが、私の顔を申し訳なさそうに見た後、着席せずに口を開いた。
「ミーナ様、申し訳ありませんがただ今より、九日後にと約束した店主と面会願えませんか?」
「今からですか?いらっしゃってるのですか?」
疑問だらけになったが、ディーバさんは嫌な顔をせずに答えてくれた。
「はい。別室に通しております。実は、ミーナ様が購入した先の店主がセインの父親だったそうです。休暇で帰省していた彼が、興奮した父親から事情を聞いて、まさかとソルゴスに問い合わせたようです」
「セインって誰だっけ?」と首を傾げる子供達に、「武術訓練の時に行進を見せてくれた人」と言うと、興奮が蘇ったのか、足踏みしながら楽しそうに笑った。とは言え、毛玉ちゃんなので、前足で踏ん張って、後ろ足だけを動かすという中々に器用な足踏みだったが。
「「ざっざってカッコ良かった!!あれの声かけた人だよね?」」
「そのセインです」
ソルゴスさんの返事に、興奮していた子供達がぴたりと動きを止め、むむと顔をしかめた。