意見交換と晩餐 2
「このコンポートっつの、美味いな。甘いだけじゃねーのも良いな」
「ありがとうございます。果物を煮詰める時にレモン汁を入れたので、引き締まったように感じるのではないかと思います」
森と知識を共有している始祖様は知っていても、皆は知らないだろうと説明する。ちなみに、王様とアルゴス君がりんご、始祖様とマルケス君が桃、ディーバさんとエリゴスさんが各種少量づつ、ソルゴスさんと私はアルゴス君とマルケス君の選択した桃とりんごを少しづつ選択していた。コンポートを食べ進めていると、アルゴス君からチラチラと、どこか焦るような視線が送られている事に気付く。
「どうしたの?」
問い掛けに答えず、アルゴス君はフォークを置くとエリゴスさんを上目遣いで見つめる。
「エリゴス〜、俺達、ママに、あ〜んしてもらいたいけど、ハレンチ?」
アルゴス君の発言に、マルケス君は激しく首を縦に振り、男性陣は見事に吹き出した。おそらく、前回、知らずにやった儀式もどきの時に私が「ハレンチな!!」と叱られた事を覚えていたのだろう。叱っていたエリゴスさんに聞けば良いよなと思ったに違いないアルゴス君に罪は無いが、破壊力抜群の爆弾発言だ。
「「エリゴス?」」
顔を真っ赤にして咳込むエリゴスさんにお構いなしで子供達は返事を催促している。こちらの常識非常識は分からないので、代わりに答える事も出来ない。なんとか持ち直したらしいディーバさんが右手を上げて注意をひいた。
「私から。成人なされていないアルゴス様とマルケス様は儀式にもなりませんし、破廉恥ではありません。ですが、どうしても気になるなら……」
「「はい!!わかった〜」」
ディーバさんの言葉を遮るように返事した子供達は次の瞬間、毛玉ちゃんへと変身していた。
キターッ!!久々の毛玉天使ちゃんキターッ!!
あまりの嬉しさに我を忘れて、毛玉ちゃん達を胸に抱え上げる。「食事中に変身したらダメだ」とか「マナーが」とか言わなければならない事はたくさんあったのだが、見事に吹っ飛んだ。
「「これなら大丈夫〜」」
尻尾をぶんぶん振る毛玉ちゃん達はぺろんと私の頬を嘗めてくれる。言い出しっぺになってしまったディーバさんは苦笑している。
「「あ〜ん」」
かぱっと大きく開けられたお口に、小さくしたコンポートをそれぞれ入れる。
「あ!!お返し出来ない!!」
「そうだね。戻って……」
機嫌良く食べた毛玉ちゃん達は、途端に慌て始めたが、私はやんわりと言葉を遮り止めた。
「大丈夫。アルゴス君とマルケス君に、あ〜んして、一緒にお風呂入って、一緒にお眠して貰えると嬉しいな〜」
私の野望とも言える提案に毛玉ちゃん達はキラキラお目々で私を見た後、エリゴスさんを振り返った。
「「エリゴス、ハレンチになる?」」
落ち着こうとお茶を飲んでいたらしいエリゴスさんは、子供達の追加攻撃に、可哀相にも盛大に噎せ始めてしまった。
「大丈夫ですよ」
「「やった〜!!」」
代わりに答えたディーバさんに毛玉ちゃん達はぴょんぴょん両足でジャンプして喜んでいる。「マナーが悪いよ」と叱らなければならないのは分かっているのだが止められなかった。
はい。教育係失格です。「ミーナちゃん。あ〜ん」
口を開けて催促する始祖様に、無言で文字通り噛み付いた時は、当然、叱りました。