交易の提案 2
「陛下達と一緒に食べたい!!」との子供達の言葉に頷いた私達は、王様の執務室へとキャンディーを携えておじゃましている。コンポートの作り方しかメモれなかったエリゴスさんは、子供達の「お手伝いしてもらったの!!エリゴスを怒らないで!!」という弁護も虚しく、怒り狂ったディーバさんに首根っこを掴まれ、連行されていった。「アルゴス様とマルケス様が頼んでも良いと判断される隙を作ったのが悪いんです」との言葉には、その場に居る皆が思わず納得してしまった。
「こちらがキャンディーになります」
残された王様、ソルゴスさんへアルゴス君とマルケス君にキャンディーを配ってもらう。始祖様は、城の中を自由に出入りするので今はどこにいるか分からないとの事だった。それを聞いて、ちょっぴり残念そうな子供達の口にはそれぞれ、林檎と桃のキャンディーを入れる。
「大変固いので、かじらずに嘗めとかして下さい。 アルゴス君、マルケス君、喉につまるとものすごく苦しくなっちゃうから、お口にキャンディーが入ってる時は走ったり遊んだりはダメだよ?」
「「はい!!美味っしい〜!!なにこれ〜!?」」
注意になんとか頷いてはくれたが、頬っぺたを押さえた子供達は「キャンディーじゃ〜ん!!」と笑いあっている。すっかり、キャンディーの虜のようだ。
「本当にカチコチだな!!」
「でも、ず〜っと甘いね〜」
「これは良いな。手も汚さずにすむし」
王様の感想にソルゴスさんも頷いている。宰相や外交官である二人が居ないのは痛いが、今、ここでプレゼンをしてしまおうと決めた。
「少々、お時間を頂いてよろしいでしょうか?」
「うむ。良いぞ?市場を歩いて何か思う所があったのだろう?」
「お分かりでしたか」
鋭いな、と感心していると王様が頷いて口を開いた。
「ディーバがな、何かミーナが考え込んでいたようだとな。もしそうなら、鏡で中継しても?」
「はい」
王様のブレーンは本当に人を見る目が凄いなと思っていると、一言二言会話した後で鏡が机に置かれた。
「「お〜い。ディーバ〜、エリゴス〜」」
「こら。今はそういう時ではない」
「「は〜い」」
鏡に向けて子供達がキャッキャとはしゃいでいると王様に諌められてしまい、しゅんとしている。その頭を撫でると「えへへ」と笑ってくれた。
「今、召し上がって頂いてるのは果汁と砂糖を煮詰めて作るフルーツキャンディーです。他に、果実と砂糖を煮て作る、コンポートとジャムも作成しましたが、晩餐で披露致します。キャンディーとジャムは日保ちしますので、お土産に最適と思います。又、皆様のお眼鏡に適うのであれば、これらの作り方をフォレストの民に流布してここでしか買えない、限定品として交易の商品にする事も視野に入れています」
「交易の商品に?」
「はい。日保ちしないと言う理由で加工食品は他国への流通は油やバター、チーズを除くと、ほぼ無いと伺いましたので、提案しました。又、農作物が輸送中に腐ったり鮮度が落ちる事前提で大量の荷物となるとも聞きました。加工してしまえば、荷は小さくなりますし、お金と運搬の負担も軽減されると思われます。作り方さえ覚えれば、どこでも作れますが、鮮度の違いはもろに味に影響されます。農業の盛んなフォレストだからこそ、鮮度の落ちる前に加工する事で、ここでしか買えないという付加価値を生みます」
「確かにな」
思案するように王様が顎に指をあてている。
「使者殿へお土産として渡し、お気に召したら城ではなくて、フォレストの市場へどうぞと言う事で商人達にも手が出しやすく、又、携わる人々にも恩恵が……」
「「ママ!!わかんない!!」」
勢いに乗って話し続けた私に子供達がストップをかけてきた。確かに子供達には、ちんぷんかんぷんだろう。