おもてなしの準備 6
「切り方は別でも、同じ果物のボウルの水分だけを半分、一つの鍋に集めて下さい。それがキャンディーの素になります。残った水分と果実で、コンポートとジャムを作ります。まずはコンポートから作ります」
「はい!!」
調理人さん達が大きな返事をして、各自、作業へかかる様子を、椅子に座ったアルゴス君とマルケス君が元気無く見つめている。危険性を理解はしても、自分達が参加出来ないのは悔しいのだろう。そんな子供達に粉を敷き詰めたバットを見せる。
「「なにこれ〜?」」
「トウモロコシの粉だよ?ここに熱いキャンディーを入れて固めるから、アルゴス君とマルケス君には、底までいかないように指で穴を開けていってほしいの」 バットを見た子供達は目を真ん丸くした後、顔を上げる。
「「お手伝い?」」
「そう。いっぱいあるんだけど、お願い出来る?」
「「任せてっ!!」」
キラキラと輝き始めた瞳の子供達に、一列お手本として穴を開けて見せる。
「ママ!!皆!!俺達も頑張るから美味しいの作って!!」
「お願い!!あ!!エリゴスは僕達のお手伝い!! そだ!!アルゴス!!手を洗ってからだよ!!」
俄然張り切り始めた子供達は、メモを録っていたエリゴスさんにも指示を飛ばす。
「おまえら!!ちび達に負けんじゃねぇぞ!!」
「おうっ!!」
ルッツォさんと調理人さん達に、「頑張ろうね〜」と手を振る子供達は最高に可愛らしかった。
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鍋で綺麗な色と良い匂いを放つコンポートをボウルに移しながら言う。
「汁ごとボウルに入れて、粗熱を取ります。ボウルを素手で持っても支障が無くなった所で冷蔵庫に入れて冷やしてコンポートは完成です」
「はい!!」
「「エリゴス!!こっち!!」」
「……はい」
ふらふらと吸い寄せられそうになっていたのだろうエリゴスさんが子供達に叱られ、顔を赤くしている様子に笑いを堪える。エリゴスさん甘党疑惑は確信となった。
「それでは、ジャムを作ります。コンポートと手順は一緒ですが、砂糖の量と煮詰める時間が違います」
頷きながら聞いていたルッツォさんが手を勢い良く上げる。
「ミーナに質問!!砂糖の量が違う上に、煮詰めるのはなんでだ?」
「はい。コンポートはそのまま食べるのに対して、ジャムはパンなどに付けて食べます。又、砂糖の量を多くして、余計な水分を飛ばす事で日保ちするんです」
「じゃ、砂糖の量がジャムに比べて少ないコンポートは日保ちしないんだな?」
「はい。そうです」
私の説明に、皆からも「パンに!?」とか「甘くした果物はくどくないか?」とか意見が出る。それでも作業する手は動き続けるのはさすがとしか言いようが無い。
「「味見した〜いっ!!」」
「ダメ!!完全に冷めてからでないと食べちゃダメ。 皆さん!!ジャムもキャンディーも完全に冷めるまでは絶対に手を当てないで下さい。思わぬ火傷を負う可能性があります」
「はい!!」
「「は〜い」」
しょんぼりと子供達がお返事するが、火傷は負わせたくない。
「だってよ〜。エリゴス、盗み食いすんなよ〜?火傷すんぜ〜?」
「するか!!」
ニヤニヤと笑いながら言うルッツォさんに、エリゴスさんは噛み付かんばかりに睨み付けた。
いや、でも、ごめん。エリゴスさんと子供達なら共謀してやりそうって思って注意したの。
「「エリゴスも一緒に我慢っ!!」」
ビシッと直立して宣言した子供達にエリゴスさんは目を白黒させ、私達は堪え切れず、笑いを爆発させていた。