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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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おもてなしの準備 1

 一夜明けて、使者団到着まであと二日。本日は私に知識を叩き込んでくれるとの事で、忙しいだろうにディーバさんとエリゴスさんが教師役を買って出てくれた。

「ミーナの為では無い!!使者を迎える時に隣に居るなら、下手を打てば当人のミーナだけでなく私の恥にもなるからだ!!」

 ツンデレ王は今日も健在です。お耳まで真っ赤ですよ〜。バレバレですよ。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「「よろしくお願いしますっ!!」」

 私に付き合ってくれているアルゴス君とマルケス君も元気に挨拶をした。男性陣は子供達の様子に目を細めている。

「では始めましょう。大きさに関わりなく、金貨は森、火山、海を組み合わせたモチーフ、銀貨は狼、鷹、ワニを組み合わせたモチーフ、銅貨は各国の初代王を組み合わせたモチーフとなっております」

 そう言ってディーバさんが私に硬貨を手渡してくれる。

「綺麗ですね〜」

「「でしょ!?」」

 興奮気味に言う子供達の気持ちが分かる。どの硬貨も精緻な細工が施されていて、このまま芸術品として流通してもおかしくないものだった。硬貨に描かれた風景は自然への畏怖を見る者に与え、獣達は今にも跳び出してきそうな呼吸を意識させ、初代王達も威厳たっぷりで疎かに出来ない雰囲気を醸している。だが、そのあまりにも素晴らしい出来栄えの硬貨だけに疑問が浮かぶ。

「硬貨は職人さんの手で一つ一つ造られているのでしょうか?」

「はい。確かに硬貨が誕生した当初は手作業だったようですが、現在は魔法で大量生産しています」

 魔術と魔法と竜のいる、リアルファンタジー世界ならではの解答に納得するが、どこにでも悪い事を考える者は存在する。

「魔術を使える者ならば、偽造出来そうなのですが、大丈夫なのでしょうか?」

「始祖様が居る」

 簡潔過ぎて理解出来ないエリゴスさんの言葉に首を傾げると、ディーバさんが補足してくれる。

「はい。確かに魔法で作成するならば、魔術を組み立てる事で偽造も可能となりますが、始祖様がそのような輩の動きを察知し、防いで下さっています。今まではなぜ未然に叩く事が出来るのかふしぎでしたが、昨夜の説明で解りました」

「ああ!!」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。始祖様は「フォレストで起こった事象は森を通じて知識として蓄積される」と言っていた。ならば、偽造しようと企み、術を組み立てた時点で始祖様には情報が流れるのだろう。

「他国でも始祖様のような方がいらっしゃるのか、偽造硬貨が流れた事はありません」

「そうなんですか。では、各国に始祖様がいらっしゃるかもしれませんね」

「あんな破天荒で無い事を祈ります」

「確かにな」

 眉間にしわを寄せて小さく首を横に振るディーバさんに、エリゴスさんも同意した。三人の始祖様が「わーわー」とはしゃいでいる姿を想像してしまい、吹き出すのを堪えていると、ディーバさんが口を開いた。

「改めまして続けます。硬貨の価値は、大金貨は十万円、中金貨は五万円、小金貨は一万円、大銀貨は五千円、中銀貨は千円、小銀貨は五百円、大銅貨は百円、中銅貨は五十円、小銅貨は十円の価値になります」

 十円未満、つまり九円からは存在していないというわけだ。ふむふむと頷いていると、私の真似をしたのか子供達も、同じく頷いている。

「ここまでで解らない事はありませんか?」

「はい。強いて言うなら物価ですね」

 私の言葉ににっこりと頷いて、ディーバさんが続けた。

「それでは、実際に市場に行ってみましょう」

「「ぅわ〜ぁ!!良いの〜!?」」

 目も口も真ん丸に見開く子供達にエリゴスさんが言う。

「こうして話を聞くだけでなく、自分の目で見て話を聞くのも勉強です」

「「やった〜!!ママとお出かけ〜っ!!」」

 椅子から降りた子供達は手を繋いで円を作り、喜びの舞をクルクルと踊りだした。「ママもっ!!ディーバも!!エリゴスも!!」と呼ばれ、最終的には全員で手を繋いでアルゴス君とマルケス君が満足するまで踊っていた。

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