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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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運命の出会い 7

 両頬の濡れた感触に、私は目を覚ました。

「ん。冷た・・・・」

「ママッ!!」

「ママ〜!!ぅあ〜ん!!」

 身体を起こしたそこに、自分達の顔の毛をグシャグシャに濡らした毛玉ちゃん達がいた。寝ている私を起こそうと、二人で顔を舐めていたらしい。人の姿になるという考えに至らなかった程に混乱させたのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「俺達、起きたら、居なくてっ!!」

「っでっも〜、居たの〜!!ママ〜!!」

 目を覚ました二人は、傍に私が居ない事から、ママを召喚する夢を見たのではないのかと疑ったらしい。王様に私の所在を聞くと、「まだ早い。寝ていなさい」と言われ、やはり夢だったのではないかと疑心暗鬼にかられ、記憶にあるママの匂いを必死に辿って、ベッドで眠る私を見つけたようだ。夢でなかったと安堵すると、今度は目覚めない私に不安になって、起こそうとしたらしい。

 王様ももうちょっと良い言い方があるでしょうに。相手は子供なんだから。

 いや、王様が二人を思って寝ていなさいと言ったのだろう事は理解しているつもりだ。それにしても私はいつの間に眠り、この子達はいつから私の傍らに居たのだろう。

「アルゴス君もマルケス君も心配させてごめんね」

 謝った私に声も無く頷いた毛玉ちゃん達は、私の腹に顔をぐりぐりと擦りつけてくる。その背中を優しく撫でていると、安心したのかスースーと寝息をたてていた。

「ありがとう。今度はここにいるよ」

 二人が目覚めた時に私の姿が無いと寂しがるだろう事は想像に難くない。さてどうしたものかと辺りを見回すと、ナイトテーブルの上に置いてある私のバッグに目を止める。バッグの中から時間潰しに調度良いと、折り紙を取り出した。

 何故、仕事用バッグに折り紙が入っているのか?それは折り紙も私の営業活動の武器だからだ。入社してすぐに「営業マンはどんな形でもクライアントに顔を覚えてもらう事から始まる。それが良い感情で覚えて貰えれば最高である」と教わった私は、差別化を謀る為に、配る名刺に名前と同じ楓を折り紙から切り取り貼付けた。又、渡す名刺をニ種類用意した。初対面の方には楓の物を、二回目以降の方には小さな折り紙細工を。わずかながらも区別する事で、初対面の方への自己紹介時には「その折り紙は自分の名前と同じなんですよ」と添える事で記憶に留めてもらい、それ以降の方には「私は貴方をちゃんと覚えていますよ」と言う自尊心をちょこっとくすぐるアピールになるのだ。

 折り紙付き名刺を思い付いて相談した時、「やる前から失敗を恐れていては仕事にならん。やって失敗した時はその理由を考えろ」と背中を押してくれた佐々木さんには今でも感謝している。おかげ様で名刺交換での掴みもバッチリだ。この折り紙付き名刺、外国人営業マンに非常に受けが良い。「折り紙のミス・ミーナ」と呼ばれ、外国人には区別がつきにくいとされる日本人な私が間違われずに応対されるほどだ。

 そんな事をツラツラ思い出しながら折り紙を折っていると、毛玉ちゃん達が起きたようだ。

「「ママ、おはよ〜」」

「おはよう。アルゴス君。マルケス君」

 元気に挨拶してくれた二人に返すと、くすぐったそうに笑いながら、「ママ、居たね」と言い合っている。

「ママ、それなぁに?」

「・・・・まずっ!!」

 不思議そうに折り鶴を前足で突くマルケス君と、風船を口に入れてペッと吐き出すアルゴス君。涙目のアルゴス君の背中を摩りながら折り紙について説明していると扉がノックされた。扉越しに侍女さんから、アルゴス君とマルケス君の行方を知らないかと問われ、ここに居ると答える。

 数分後に現れたディーバさんに「何も告げずに部屋を抜け出してはいけない」と二人はこってりと絞られている。「助けて〜」と視線を寄越す毛玉ちゃん達は身もだえするほど可愛いらしいのだが、善悪の判断がつかない大人になってはいけないと、私は心を鬼にして助け舟を出さなかった。

 私だって辛いのよ!!わかって!!毛玉ちゃん!!

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