国の名前と取り巻く環境 5
「なぁ、さっきから気になってんだけど、なんか、ちび達、行儀良くね?それにミーナちゃんが帰る話ししても普通じゃね?」
始祖様の言葉に、アルゴス君とマルケス君はにんまりと微笑む。フォレストで起こった事象が分かると言っていたが、個人の出来事はカウントされないのかと首を傾げてしまう。
「はい!!ママはず〜っとここに居てくれるから大丈夫なんだ!!」
「教えてくれる人のお返事は、はい、か、いいえ、なんだよ〜。言葉遣いは後で教えてくれるって!!」
嬉しそうに説明する子供達に始祖様が、とても良い笑顔で頷いた。
「なら、他国の使者が来ても良い子出来っか?」
ん?他国の使者?まさか!?
「二人とも、待っ……」
始祖様が何も知らない振りをして子供達を誘導しようとしているのではないかと思い至り、口を挟んだが、
「「はい!!良い子だもんっ!!」」
アルゴス君もマルケス君も始祖様の口車に引っ掛かってしまった。頭を抱えているのは私だけでは無い。始祖様と子供達以外は全員だった。
「なんだ?どした〜?」
ニヤニヤと笑いながら声をかけてくる始祖様に、にっこりと極上の笑顔を浮かべて、手招きして見せる。
「お?なになに?ミー ぃでぇ〜っ!!痛い!!ちょっ!?ミーナちゃっ!!」
いそいそと顔を寄せてきた始祖様の耳を両手で左右に引っ張った。私の暴挙に子供達と男性陣は目を丸くしている。
「何も知らない子供達を嵌める人には必要ありませんよね?これからは子供達に限らず、自分の用件を話し、他人の意見をきちんと聞くと約束して下さいますよね?」
「分かった!!分かったから!!約束するっ!!自己完結しないから!!」
「分かって下さるなら良いのです。これで、森に詐欺同様の行為を働けば、始祖様であろうとも叱られると刻まれたんですね」
耳から手を離し、ぶらぶらと振る私に男性陣は青い顔で頷く。アルゴス君とマルケス君も両手で自分の耳をガードしている。脅かしすぎたかなと半笑いを浮かべてしまうと、いち早く立ち直ったディーバさんがフォローしてくれる。
「始祖様は自業自得です。アルゴス様、マルケス様、悪い事をすると大人でも罰を受けるんですよ?わかりましたか?」
「「はいっ!!」」
良い子のお返事をした子供達に、皆が微笑む。
「アルゴス君、マルケス君、怖がらせてごめんね」
「大丈夫!!よくわかんないけど、じ〜じが悪い子だったんだろ?」
「だから、ママはごめんなさいいらないよ?」
子供達の言葉に、思わずキュッと抱きしめてしまうと、二人は嬉しそうに笑ってくれた。
「始祖様の話に被せるようになりますが、今回来るのはオーシャンの使者です」
ディーバさんからに「話を変えましょう」とアイコンタクトが来たのですぐに乗ってみる。
「オーシャンも、この国のように王になる種族は定められているのですか?」
「はい。ヴォルケーノの王は鷹、オーシャンの王はワニです」
「ワニ!?ウミワニですか?」
「はい。その通りです」
怖っ!!ウミワニ、怖ぁっ!!確か、人間も襲って食べちゃうんだよね!?
イリエワニが本名で、海水に耐性がある事からウミワニとも呼ばれているそれは成熟すると体長五メートル、体重五百キロを超える個体がザラだとリアリティ動物番組で見て震え上がった覚えがある。野生生物と違って獣人だから問答無用で攻撃されないとは思うが、出来れば人型以外の姿ではお会いしたくない。
「がぶぅっ!!」
飽きてしまったのか、自分も見ろという意思表示なのかはわからないが、ワニの真似をするアルゴス君にマルケス君が悲鳴を上げた。
「え!?ママ、食べられた!?」
「なんでっ!?」
マルケス君の悲鳴に目を丸くしたアルゴス君もまた、慌てふためいてる。
「「どうしよう〜!!」」
本気で心配している子供たちには悪いが、ついにこらえきれずに吹き出してまった。すると、一気に笑いは伝播して、皆を笑顔に導いた。最初はきょとんとしていた子供達も最後には一緒に笑っていた。