国の名前と取り巻く環境 4
「いえ。このままミーナ様に各国についてと、お願いしたい事をお話してもよろしいでしょうか?」
「はい。もちろんです」
ディーバさんの問い掛けに頷きながら返すと、始祖様も乗ってきた。
「じゃぁ、ついでにミーナちゃんのこれまでとこれからについて話すわ」
笑いながら告げた始祖様に、顔を真っ赤に染めたエリゴスさんがテーブルをばんっと勢い良く叩いてキレた。子供達共々、私は目を丸くしてしまう。
「人一人の事に、ついでとはなんですか!!始祖様と言えど、言って良い事と悪い事があります!!」
思わぬ人から、私と言う人間の事を思って他者を叱って貰った事実にポカンとしてしまった。なんとも言えない嬉しさが込み上げると同時に、始祖様には怒りなど湧いていないのにと、冷静に思ってしまう。
私の気持ちを考えてくれたエリゴスさんと、言葉のあやととれる始祖様に、なんと言えば良いのだろうと思案していると、膝の上のアルゴス君が、びょんとお尻で小さくジャンプした。
「「カ〜ッコイイ〜!!」」
子供達が声を合わせて興奮している。確かに他人の為に怒り、叱ってくれたエリゴスさんはカッコイイ。
「俺達は、エリゴスみたいになりたい!!」
「うんっ!!でも、ディーバみたいに魔法も使いたいしソルゴスみたいにムキムキにもなりたいし、陛下みたいにどかんとしてたい!!」
「どかんとしたい」とはどんなだろうかと思いつつも、興奮で頬を桜色に染め、瞳をキラキラ輝かせているアルゴス君とマルケス君の頭を優しく撫でる。
「なんだよ〜?俺は抜きかよ〜?」
「「はいっ!!」」
ニヤニヤ笑う始祖様に、子供達は勢い良く真剣な表情で答える。
「俺達は、ごめんも出来ない大人になりたくないもんっ!!」
「そうだよ。じ〜じ、格好悪い」
さすがにばつが悪そうに笑った始祖様は、素直に謝ってくれる。
「ミーナちゃん、俺が悪かった。ついでなんて言ってすまなかった。だが、説明しておかなきゃなんないのは本当だ」
「はい。お気になさらないで下さい。 エリゴスさん、私の為に始祖様を叱っていただき、ありがとうございます」
私の言葉にエリゴスさんが目を丸くした。
「別にミーナの為に言ったわけではない!!」
プイッと横を向いたエリゴスさんには失礼だが、ツンデレ具合に笑みを誘われた。
やっぱりエリゴスさんはツンデレ王だ!!
「「エリゴス、かっこよかった!!ママを助けてくれてありがとう〜!!」」
アルゴス君とマルケス君の可愛い御礼に、エリゴスさんは血管が切れて卒倒するのではと心配に成る程に顔を真っ赤に染めたまま、口を酸欠の金魚のようにはくはくと動かした。そんな彼を、隣に座るソルゴスさんが宥めている。
「じゃ、俺からな?まず、儀式で来た者がフォレストから帰還した例は無ぇんだよ。だから、こちらから元の世界にミーナちゃんが帰れるかはわかんねぇんだ」
「それは何故ですか?」
突然始まった始祖様の説明に間髪入れずに問うてしまう。
「うん。俺が得る事の出来る知識は森の知識。これを頭に入れといて?そんで、フォレストで起こった事象はすぐに森を介して俺へと蓄積されるんだけど、裏を反せば、フォレストで確認されなければ俺にはなんもわかんね〜ってこと」
それはつまり、フォレストの誰かが体験して得た知識や事象は、始祖様が実行していなくても知識として得る事が出来るが、誰も知らない物は森も彼も分からないと言う事なのだろう。
「強引な解釈になるのですが、始祖様は記録媒体として在る為に、追加知識や新しい事象誰かがフォレストで体験しなければ、その知識は更新されない、という事でよろしいでしょうか?」
「うん。間違い無ぇよ。だから、ミーナちゃんがちび達に作ってやったクッキーやホットケーキの存在は知ってるけど、帰還出来るかは知らねぇってわけ」
頷きながら答える始祖様の言葉に反応したアルゴス君とマルケス君が途端に騒ぎ出した。
「俺達、じ〜じにくっちーあげてない!!」
「そうだよ!!独り占めになっちゃう〜!!」
慌てる子供達を宥めていると、王様が口を開いた。
「始祖様はすぐにお帰りになられるのですか?」
「ん〜にゃ。飽きるまで居る」
パタパタと右手を左右に振る始祖様に王様が小さく頷いた。
「だそうだから、アルゴスもマルケスも明日にでも渡せば良い」
「「はい!!」」
飛び出して行きそうだった子供達は、ホッとしたように大きく頷いた。