表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
62/184

国の名前と取り巻く環境 1

 鍛練終了後、自分の汗臭さに眉をしかめていると「ママと一緒!!」と手を引っ張るアルゴス君とマルケス君と浴室に直行した。正直、これ以上は疲れたくないなとお風呂嫌いの子供達の行動に警戒したのだが、武術訓練がきつかったせいか、アルゴス君もマルケス君も石鹸をかけて身体を洗っても騒がず、大人しく風呂で汗を流した。拍子抜けすると同時に、面倒臭いなというだけで自分の暗部で子供達に接しそうになった事が、猛烈に恥ずかしくなった。自分が聖人君子などでは無い事は百も承知だ。それどころか表と裏の顔を使い分ける汚い人間だ。

 脱衣所に用意されていた着替えに袖を通して、ソファでくつろぐアルゴス君とマルケス君に頭を下げる。

「ごめんね?」

「「なんのごめん?」」

 突然の謝罪に、子供達はきょとんとする。

「ん。アルゴス君とマルケス君がお風呂ではしゃいじゃったらやだな〜って思ってたの。だから、疑ってごめんなさい」

 言わなければばれないだろうが、真っ白で綺麗な子供達には言わずにはいられなかった。子供達に謝罪も出来ない人間に教育されたくないだろうと思った。

「「なぁ〜んだ」」

 拍子抜けしたような表情をして、私の腕に絡み付いてくる。

「今日は疲れちゃったし、良い子にしてればママが匂い付けてくれるかな〜って思ってた!!」

 ぺろりと舌を出すアルゴス君。

「あ!!これ、ダメな交換こ?」

 慌てたように聞いてくるマルケス君。「怒ってないよ」と笑って、逆に私の事を心配してくれる素直な彼等の姿にたまらなくなって胸にかき抱いて、頬っぺたを擦り付ける。

「ダメじゃない!!それは大丈夫だよ」

「ママ!!俺達がお風呂で良い子してたら、お風呂から出たらママの匂い付けてってお願いは、ダメ?良い?」

「大丈夫なら、ずっとず〜っとしてほしいな〜!!」

 水無月(みなづき) (かえで)という人間をここまで無邪気に素直に愛して受け入れてくれた者が今までいただろうか。否、両親以外には居なかったように思う。

 アルゴス君とマルケス君をきゅっと抱きしめながら決意を固める。二人のママとして胸を張れるような生活を送り、どんな時でも彼等の絶対的な味方であろう、と。

「「ママ?」」

 黙ったままの私に心配そうにアルゴス君とマルケス君が声をかけてくる。「あ、ダメなお願いだったのかな?」と、幼い瞳が訴えている。

「本当にごめんね。お風呂で良い子にしてくれたら、上がった後に三人で匂いを付け合いっこするのはオッケーだよ」

「「本当っ!?」」

 音がしそうなほどに勢いよく振り仰いでくる子供達に頷いてみせると、スルッと腕の中から抜け出し、喜びのダンスを踊りだした。

「♪マッマと〜♪おっ風呂で♪良っい子な♪おっれ達の〜♪匂い♪いっぱ〜い♪うっれし〜い〜な〜♪」

「♪マ〜マは♪僕ら♪の♪ママ♪なんだ〜♪」

 子供達は即興で作った歌を唄いながら、楽しそうにクルクルと回転している。

「ありがとう」

「「どういたしまして!!」」

 ポーズをとって笑ってくれる子供達を再び抱きしめて、この子達の笑顔と心は私が守る!!と決意した私はお互いの匂いを存分に交換しあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=418023835&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ