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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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武術訓練のお時間 7

「「お〜い!!ママ〜!!ソルゴス〜!! あっ!!来ちゃダメ!!待ってて!!」」

 子供達の呼び掛けに駆け寄ろうとすると、待ったをかけられた。よくみるとアルゴス君もマルケス君も両手でしっかりとコップを包むように持っている。

「「お水、どうぞ!!」」

 そろそろと慎重に歩み寄った子供達は私とソルゴスさんにコップを差し出してくる。

「アルゴス君、マルケス君、ありがとう!!」

「ありがとうございます」

「「どういたしまして!!」」

 お礼を言う私たちに、アルゴス君とマルケス君はちょっぴり照れたように笑ってくれる。 

「お水、美味しかったんだ〜。独り占め、ダメだろ?」

「だから、飲んでほしかったの〜」

 可愛い!!賢い!!うちのこ一番っ!!

 溢れそうな奇声を無理矢理押さえ込み、衝動のままに子供達を抱きしめた。

「良い子達、見〜つけた!!」

「「きゃ〜!!」」

 腕の中で歓声を上げる子供達を、はからずも私と向きあう形になったソルゴスさんはとても優しい目で見つめていた。



                    □■□■□■□■□■




「振る、だけ、なの、にっ!!」

「な、でっ!!こ、なに、疲、れ、るの!?」

 コロッセオに隣接する兵舎の中でお昼ご飯を済ませた私達は現在、ソルゴスさんの師事の下、刃の無い訓練用の模造刀で素振りの最中だ。もちろん、彼もいっしょに刀を振っている。アルゴス君とマルケス君の言う通り、しっかり握った模造刀を振り上げて下ろす動作は、単純な動作ながら、結構キツイ。明日起きると筋肉痛が確定していると体にしっかり告げられて、ダイエットになる、ワ〜イ、などと浮かれていた過去の自分を殴りたくなる。これは本気の筋トレだ。

「んっ!!でも!!頑、張、る!!」

「「はい!!」」

 奮起するために自分に告げた言葉に、お返事してくれた子供達の前でぶざまな姿は見せられないと気合いを入れられたのは良かったのか悪かったのか。

「はい!!結構です」

 疲れた様子を一切見せず、というより、日々鍛練をしている身からすればウォーミングアップくらいの感覚なのだろうソルゴスさんが、素振りの終了の合図をくれた。もう振らなくて良いと言う安堵からか、私もアルゴス君もマルケス君もその場にへたりこんでしまった。

「ママ、走るのは良くても素振りはダメなんだな〜」

「そうだね〜。一緒で嬉しいね〜」

 ほりゃりと力の抜けた笑顔を見せたマルケス君にアルゴス君は目を丸くした後ににんまりと笑った。

「一緒か!! ソルゴス!!俺達だけが素振り頑張れば、ママをソルゴスみたいに抱っこ出来るか!?」

 おそらく、お膝抱っこ争奪戦を子供達が繰り広げた時にソルゴスさんが、私を横抱きにした事を言っているのだろう。目を丸くしてなんの事かを考えているのだろう彼に言う。

「アルゴス君とマルケス君のお膝抱っこのおねだりを諌めた時の事を言っているのだと思います」

 小さく頷き、口を開いたソルゴスさんより早くアルゴス君が叫ぶように言う。

「そう!!ママは頑張るとムキムキになるからダメだけど、俺達はムキムキになるとママをひょいって、出来るだろ?」

「わ〜。僕もママを抱っこしたい!!」

 目を輝かせて同意するマルケス君に、アルゴス君も頷いている。

「お二人のペースで鍛練に励み、好き嫌い無くなんでもお食べになれば、大人になる頃には出来るかもしれません」

「「はいっ!!よろしくお願いします!!」」

 興奮して目をキラキラ、頬を桜色に染めて頭を下げた子供達にソルゴスさんが優しく微笑む。

「頑張りましょうね」

「「はいっ!!」」

「ママ!!俺達がムキムキになるの待ってて!!」

「ママは、あんまり頑張らないでね?」

眉を八の字にしたマルケス君は、私が叫びださなかったのが奇跡なほどに可愛らしかった。

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