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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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武術訓練のお時間 6

「はい。よく頑張りましたね」

「アルゴス君!!マルケス君!!頑張ったね!!エライ!!」

「ぶはっ!!や、った?」

「も、はし、なく、て、良い、の?」

 途中、勢い余ったのか毛玉ちゃんになって疾走したアルゴス君にマルケス君も続いてしまった為、走り直すハプニングもあったが全員無事に完走した。グラウンドに大の字に寝そべった子供達が、息も絶え絶えにソルゴスさんへと問いかける。

「はい。大丈夫です。もう少し落ち着いたら、水を飲んでもよろしいですよ」

「「水〜」」

 ソルゴスさんの言葉にのろのろと動き出す子供達に釘をさす。

「いますぐはダメだよ?気持ち悪くなっちゃうよ?」

「「え〜!?」」

「気持ち悪くなるお勉強したいなら止めないよ?」

「「う゛〜」」

 ちょっぴり意地悪を言った私を、アルゴス君とマルケス君は恨めしげに見上げてくる。

「なんで、ママ、平気、な、だ、よぅ」

「そ、だよ。な、で?」

「無理に話さなくて良いからね?ゼハゼハが収まったら、お水飲めるからね」

「「ぅ・・・・はい」」

 呼吸が整わずに苦しいだろうに、「うん」ではなく「はい」と言い換えて返してくれる子供達が愛しくて、傍らにしゃがみ込んで頭を撫でる。

「時間がある時に走ってたから、平気に見えるんだと思うよ?いきなりは体壊しちゃうけど、アルゴス君もマルケス君も、ちょっぴりづつで距離を増やして走ってれば平気になるんじゃないかな?」

 ソルゴスさんに視線を向けると頷いてくれる。

「アルゴス様もマルケス様も今日は本当に頑張りました。無理をせずに少しづつ自分のペースで鍛えていけば良いのです」

「「はい!!」」

 元気にお返事した後、噎せて涙目になっていた子供達は、傷付けるのが分かっているから声に出して言えないが、とても可愛らしかった。

「じゃ、俺達、水飲んでくる!!」

「ママ、ちゃんと待っててね〜?」

 走り終えてから十分後、ソルゴスさんからも「もう大丈夫だろう」と許可が下りたアルゴス君とマルケス君は、水呑場へと駆けていく。

「鍛えてる皆さんの邪魔はしないようにね?」

「「は〜い」」

 その背中に声を掛けて見送っていると、隣に立つソルゴスさんが口を開いた。

「ミーナ」

「はい?」

「走る前に、私の気持ちを・・・・その・・・・」

 次の言葉が出ないソルゴスさんに、勝手に予測して聞き返す。

「代弁した形になった事ですか?」

「ああ。何故、分かった?」

 怒られるかと思った言葉はホッとしたように返された。

「勝手をしてすみませんでした」

「何故、謝る?」

「あれは、ソルゴスさんの口を借りた私の本音だからです」

「ん?」

「失礼ながら言葉が足りないようでしたので、子供達に準備運動と基礎訓練の大切さと、大人の気持ちを補足させていただきました」

「魔術で心を読んだわけでなく?」

 ソルゴスさんの言葉に思わず目を丸くしていると、彼自身も驚いたように目を見張った。

「そうです。それに私は魔法は使えません」

「そうなのか」

 王様と居る場面が多かったからかソルゴスさんは無口だと思っていたが、そうではなく、場を弁えて一歩下がった姿勢を崩さなかっただけなのだろう。言葉は少ないが、今は表情が豊かなせいで補っている。

 なんか、お兄さんって感じ。どっしり構えて、包容力もあって、でしゃばらず、締める所は締めてて、良いな〜。

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