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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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武術訓練のお時間 3

「今後の方針をまとめてから、ミーナとも話し合いたい。今日は昨日に続いて、アルゴスとマルケスに付き合ってもらえるか?」

「はい」

 小さく咳ばらいをして注目を集めた王様の言葉に頷くとアルゴス君とマルケス君は嬉しそうに笑ってくれる。

「ママ!!俺達のカッコイイの、いっぱい見て!!」

「僕はあんまりだけど、アルゴスは凄いんだよ〜!!僕たち、頑張るからね!!」

 ぴょんと椅子から下りた子供達は握りこぶしを自分の両脇に寄せて言う。

「皆で訓練頑張ろうね」

「「お〜っ!!」」

 私の言葉に勇ましく声を上げたアルゴス君とマルケス君は、同時に拳も振り上げた。

「ミーナ、動きやすい格好に着替えてから、兵舎隣の闘技場へ。 アルゴス様、マルケス様は案内をお願いします」

「「任せて!!」」

 ソルゴスさんに胸を張って見せる子供達に、王様がニヤリと笑いながら告げる。

「アルゴス、マルケス、きちんと案内しないとミーナに格好良い所を見せる前に昼餉や晩餐になってしまうぞ?」

「・・・・大丈夫、だよな?マルケス」

「・・・・頑張る」

 寄り道する自信があるのか、一気に意気消沈した二人に助け舟を出す。

「アルゴス君もマルケス君も良い子だもん。寄り道しないで案内してくれるよね?」

「「うんっ!!」」

「俺達、良い子だから、大丈夫!!」

「良い子だから、寄り道もしないもんね〜」

 元気良く返した後にアルゴス君もマルケス君も良い子アピールをしている。王様だけでなくこの場に居る大人達は込み上げる笑いを隠す為だろう、無表情になったり、口元を手で覆ったりしているが、体が微妙に揺れていてうまくいっていない。そう言う私もだ。ごまかす為にがばりと子供達を抱きしめる。

「案内よろしくね?」

「任せろ!!」

「任せて〜!!」

 良い子という魔法の言葉はアルゴス君とマルケス君のやる気の起爆剤として有効だったようだ。




                    □■□■□■□■




 良い子効果が持続した子供達に無事に案内されたそこは、すり鉢場のコロッセオだった。すり鉢の上部から中部までは観戦用の石造りのベンチがずらりと並べられ、私達の居るすり鉢の底部分は平面に整えられた物凄く広い土のグラウンドだった。たまにジョギングに行く運動公園のグラウンドから見積もって直線距離で3km以上はあるだろう。その広いコロッセオのあちらこちらでマッチョな方々が汗を流している。

 厨房の料理人さん達も凄かったけど、戦闘の訓練している人達はやっぱり違うわ〜。

「では、準備運動をした後に、闘技場を半周、走って下さい。もちろん、私も走ります」

「なんで走んなきゃダメなんだよぅ。今日はママも居るし、走んなくても良いじゃ〜ん」

 眉をハの字にした情けない表情で零すアルゴス君の隣でマルケス君も激しく頷いている。

「なんと言われてもこれは譲れません。体を作ってからこその武術です」

 ソルゴスさんの断言に、彼がどれだけ子供達を思っているのかがわかる。たまになら良いよねとばかりに基礎訓練やウォーミングアップ、クーリングダウンを怠ると事故に繋がる恐れがある。それを知っているからこそソルゴスさんは、言葉は少ないが、平常時の訓練は基礎となる土台作りを怠ってはいけないと譲らなかったのだろう。

 彼の気持ちはアルゴス君とマルケス君が大人になってふと気付くものかもしれないが、子供達が知識を貪欲に吸収しようとしている今こそ、知ってほしいと思った。

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