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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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夜中の攻防 6

 本文中に酒の飲み比べシーンがありますが、決して皆様へ奨めているわけではありません。成年、未成年者問わず、絶対に真似をしないで下さい。

 お酒は二十歳を過ぎてから!!美味しいと感じられる量で留めるものです。


 真似をして急性アルコール中毒で病院に搬送されたり、最悪、死んでしまっても当方は責任をおいかねます。


 繰り返します。絶対に真似をしないで下さい。

「始め!!」

 合図と共に私達は目の前に置かれた小瓶と酒盃に手を伸ばす。そのまま、手酌で注いだ酒を口に運ぶ。

 美味っしい〜!!久しぶりにガッツリ飲めるなんて、手が進むわ〜。

 今日、用意されているのは白ワインだ。昨夜、味見として出された時には、味と見た目的に、赤、白ワイン、シードル、イチゴ酒、オレンジ酒と言った中々のバリエーションだったのだが、「特に気に入った物はどれだ?」とルッツォさんに問われて答えた酒だったので白ワインが選ばれたのだろう。もしかすると、「アルコールに弱い」と告げた私の為に好きな酒をと気を使ってくれたのかもしれない。

 口辺りも良く美味しいお酒に、否応なしにテンションも上がる。

 注いで飲む。

 注いで飲む。

 繰り返す動作は止まらない。

「ミーナ様、大丈夫ですか?」

「はい」

 見ていられなくなったのかディーバさんに問われるが、勿論とばかりに頷いて応える。

「エリゴスも大丈夫か?」

「・・・・はい」

 王様に問われたエリゴスさんも応えている。

「失礼します」

 コック服を着た料理人さんらしき男性と侍従さんが慌てたそぶりでエリゴスさんの耳にそっと囁いている。勝負の邪魔をしてはならぬと鏡を使うより人を使った方が良いと判断されたのだろうか?

 ディーバさんが小さく頷いた後、侍従さんと料理人さんはホッとしたように出ていった。

「勝負に使っている瓶が足りなくなりそうだとの事なので、大瓶も使います。こちらは小瓶十個分が入ります。よろしいですね?」

「「はい」」

 足りなくなるくらいに飲んだかな?と自分の卓を確認すると、大量の小瓶が隙間無くみっしりと林立していた。ペースを緩めるかと思っているとエリゴスさんが挙手した。

「アルコールに弱いと宣言したわりにあまりにも余裕を伺わせる!!不正をしている恐れがある。給仕と酒盃を新しく入れ替えて貰いたい!!」

 そりゃ、疑うよね〜。顔色は変わっても、態度は変わらずケロッとしてればね〜。

 至極当然の要求だと納得した私に、彼の給仕役としていた侍従さんと私に着いていた方が入れ代わり、エリゴスさんがチェックした後に新しい酒盃を手元に頂いた。

 あ〜。やっぱり美味しいわ〜。アルゴス君、マルケス君、私、頑張るからね〜!!

 飲み進める中で、ちらちらと送られてくる視線が無くなったなと目で伺うと、エリゴスさんは食卓に俯せていた。

「大丈夫ですか?」

「だい・・・・じょ・・・・」

「ダメですね。陛下、お開きでよろしいでしょうか?陛下?」

 席を立ち、エリゴスさんの脈拍をとりながら言うと王様もディーバさんもソルゴスさんも目を丸くして私を見ている。弱くは無いが早い脈拍は処置が遅れれば生命活動を脅かすと伝えている。

「皆様、説明は明日必ず致します。ですので、お開きでよろしいですね?」

 少し強めに断言すると勢いに飲まれたのか、皆が首を縦に振った。エリゴスさんを両脇から抱えた侍従さんに指示を出す。

「本人が拒んでも意識がある内は水をとにかく飲ませて下さい。飲ませたらトイレへ。トイレより戻ったら水を飲ませるを繰り返して下さい。体内のアルコールが排出される事で薄くなります。ただし、意識が混濁していたり、無い状態では絶対に水を飲ませないで下さい。殺してしまいます。眠りに入りそうでしたら、仰向けや俯せは窒息死に繋がる場合もありますので、左右どちらかの横向きで寝かせて下さい。また、お手数ですが、30分に一度は呼吸確認して下さい」

「ミーナの言う通りにしろ」

「はい」

 私の言葉に頷いた王様が侍従さんに素早く指示してくれた。

 いや、急性アルコール中毒で死なれても困るし。事故死させても困るし。

「一つだけ。ミーナ様は医者なのですか?」

「いえ。酔っ払いの対処に詳しいだけです」

 強い口調で告げた私に遠慮したのだろうディーバさんの問いに答えると何かを聞きたそうに王様は口を動かしている。

「どうしました?」

「いや、ミーナは体調不良はないのか?」

「ありがとうございます。大丈夫です」

 答えた私に心底ホッとした様子を見せる王様達の姿に、頭を下げる。私をこんなにも心配している人達に、いくら自分の交渉のカードだと言っても、秘密にしている事が心苦しくてたまらなくなる。

「ご心配かけました。明日、全てをお話します」

 私はそれしか言えなかった。

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