魔術勉強のお時間 2
「癒しの魔法や毒消しの魔法など、なんらかの異変を治す、回復の魔法を使う時はご自分の生きると言う力を魔法の力に変えて行うのです。ですので、自分の体調が悪い時は魔法は使わずに薬に頼りましょう。さもないと、毒状態に陥っている場合や相手が死にそうだった場合は助ける代わりに自分が死んでしまう事もあるのです」
なるほど。魔術師は自分の生命力を魔力に変換して、相手を回復させる事が出来る、と。けれども、命を癒すには命を削らなければいけない為、みだりに回復魔法を使ってはいけませんと言うわけか。
ディーバさんは子供達に分かりやすいように言葉を選んで授業を進めて行く。言わずもがなですが、現在、私はアルゴス君とマルケス君に交じって、ディーバさんの魔法についての授業に参加しています。
「朝ご飯、もう食べちゃった」と子供達に言われたので、アルゴス君とマルケス君がノリで言った可能性もあると侍女さんに確認し、本当だと分かった私は、自分の朝食は断った。その後に訪れたディーバさんが、「アルゴス様とマルケス様とご一緒に魔法の授業に参加されませんか?」と誘ってくれたのだ。入浴中に失った体力を回復させる為にソファに懐いているより、授業に参加する方が健全で有意義だと思い、二つ返事でお願いした為に、アルゴス君とマルケス君と机を並べて聴講中です。
「え〜?おくすりまずいじゃん。俺、キライ〜」
「違うよ。アルゴス。お薬は僕たちが使うんじゃなくって、回復してちょうだいって言ってる人に使うんだよ」
「そうだよね?」と目で訴えるマルケス君にディーバさんが笑顔で頷くと、子供達も笑顔になった。
「な〜んだ。良かった〜」
「でも、魔法を使う人を選ばないと死んじゃうよって事だよ?怖いよ」
眉をハの字にして言うマルケス君の声が震えている。
「大丈夫!!マルケスが嫌だって言っても無理矢理しようとしたら、俺が噛み付いてやる!!ママも居るし、マルケス、泣く事無いよ」
小さな胸を反らして、必死にマルケス君を慰めるアルゴス君は頼もしく可愛らしい。そんなアルゴス君にマルケス君も上目遣いで怖ず怖ずと問い返す。
「本当?」
「「もちろん!!」」
アルゴス君と期せずしてハモった言葉にマルケス君も満面の笑みを浮かべてくれた。アルゴス君も笑いながら言う。
「ほら!!ママも一緒だぞ!!」
「ママもアルゴスも一緒?」
「もちろん。でも、どうすれば良いか知らないから怖いって思うんじゃない?だったら、物を教えてくれる人の話はしっかりと聞いて分からない物はそのままにしないで教えてもらお?」
問い掛けてくるマルケス君に答えると、アルゴス君もまた真剣な表情で聴き入っている。ちらりとディーバさんを伺うと、目元を赤く染め、ハンカチ片手に激しく頷いている。
「知識は目には見えないけれど、すごい宝物なの。無駄になる事は無いの。この世界の事はなんにも知らない私は宝物をなんにも持ってないから、今からお勉強して、宝物をいっぱい集めようと思うけど、アルゴス君とマルケス君はどうする?」
単純にお勉強しようと誘うよりもゲーム感覚でやった方が良いのでは?と思った私がアルゴス君とマルケス君を誘うと二人とも目をキラキラさせて言った。
「俺達もやる!!」
「うん!!ママと一緒にいっぱい集める〜!!」
「じゃぁ、ディーバさんにお願いしてみようね」
私の言葉に子供達は椅子を降り、気をつけする。二人に習って私も立ち上がると、ハンカチを仕舞ったディーバさんは優しく微笑んでくれる。
「「「よろしくお願いしますっ!!」」」
「アルゴス様、マルケス様、ミーナ様、宝物をたくさん集められるように皆でがんばりましょうね」
頭を下げた私達に、ディーバさんが優しく言ってくれた。