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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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魔術勉強のお時間 1

「「ママ、起きた〜?」」

「どうぞ。起きてるよ」

 きちんと四回ならされたノックに返事をすると、アルゴス君とマルケス君は嬉しそうに抱き着いてきた。

「「ママ!!おはよ〜!!」」

「おはよう。アルゴス君、マルケス君」

 腰にぶら下がるようにしている二人の頭を撫でるとニコニコと全開の可愛い笑顔を浮かべてくれた。

「ママ、普通になったな!!よかった〜」

「うん。本当だね〜。昨日はお顔真っ赤っ赤だったもんね。燃えちゃうかと思っちゃった」

 大きく一つ頷いたアルゴス君と、ほぅとため息を吐いたマルケス君が私の顔を見ながら言った。

 ごめんね。事情伝えてないから、心配させちゃったよね。

 小さな胸を痛ませてしまっただろうアルゴス君とマルケス君に心の中で謝罪する。いや、二人だけではない。私に関わってくれた人達全員にだ。昨夜、子供達が出て行った後に宣戦布告した私の顔を見た王様やディーバさんやソルゴスさんは本当に心配してくれた。「水をたくさん飲むように。今夜は風呂に入らないように」と釘を刺された上に、彼等の命を受けた侍女さんにベッドに押し込まれてしまった。皆に心配をされている事実が、心苦しいのはもちろんだが、なんだかくすぐったくも嬉しい。

「心配かけてごめんね?昨日、お風呂に入れなかったから今から入るけど、アルゴス君とマルケス君はどうする?」

「「お風呂?」」

「そう。お風呂」

 お風呂と言いきるのも勿体ないが、お城で奨められたのは、天然かけ流し温泉だった。初めて案内された時は、その贅沢さに歓喜の声を上げてしまい、侍女さんに失笑されてしまったけれど、嘲笑ではなかったので、甘んじて受け入れた。

 腕を組み、眉を寄せて難しい表情をしている子供達は、大人の真似を背伸びしてしているようで笑みを誘われる。アルゴス君が口を開く。

「お風呂、臭いしな〜」

 確かに硫黄の匂いが鼻につくが、お湯の温度は熱すぎずぬる過ぎずの調度良いものだった。

「うん。それに、ね〜?」

 あまり気乗りしない態度の二人にならばと告げる。

「じゃあ、待っててくれる?」

 慌てたように顔を見合わせた二人は叫ぶ。

「「行く!!ママとお風呂!!」」

「ん。じゃ、行こっか」

「「うん!!」」

 だが、この時、私は疑問ではなく、「待っててね」と断言するべきだったのだ。「後悔、先に立たず」とはよく言ったものだ。私もそうと知っていればアルゴス君とマルケス君を誘わなかった。



   □■□■□■□■



 お風呂からあがってグッタリする事があるなんて、こちらに来るまでは思いもよらなかった。

 子供たちと初めて入浴した時、ママとの入浴にはしゃいでいるとばかり思っていたのだが、そうではなく、入浴が嫌で逃げ回っていたら予期せず始まったママとのおっかけっこにはしゃいでいたらしい。

 ぐったりしている私を尻目に、毛玉ちゃんとなったアルゴス君とマルケス君は四ツ足を踏ん張って体を揺らして水分を飛ばした後、大忙しとばかりにお互いにペロペロと披毛を舐めあっている。これはまさかのグルーミングだろうかと思っていると、二人にぷりぷり怒られた。

「匂い取れちゃっただろ〜?もぅ!!」

「ママは匂い取れちゃっても平気なの?」

 匂い!?匂いが消えるのを嫌がるなんて、やっぱり二人のグリグリはマーキングなんだ!!

「マルケス!!ベッド行こ!!」

「あ!!待ってよ〜」

 王様達のような大人な獣人さんも匂いが落ちる事を嫌がるのだろうかと考え、香水の香りはしなかったが嫌な体臭も感じなかったかと思い出す。つらつらと考えている間に戻ってきた二人は、頭をグリグリこすりつけた後、くんくんと私の匂いを嗅いでいる。

「弱いな」

「取られちゃう〜」

 真剣な声音の毛玉ちゃん達には悪いが、我慢の限界に達した私はガバリと胸に抱きしめた。

 もふもふさせて〜!!

「ママの匂いを着けてくれんのか!?」

「僕達、ママのだね〜」

 嬉しそうに目を細めた毛玉ちゃん達は頬にスリスリしてくれる。ふと頭に浮かんだフレーズは、誰が言い出したかは知らないが、熱烈に共感する。

 可愛いは正義だっ!!

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