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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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月夜の酒宴 7

 正直に言うと、人を見る目と判断力のありそうなソルゴスさんならともかく、エリゴスさんは外交職に向いていない。善良過ぎるのだ。外交職は腹黒い人間か、ONとOffのスイッチを素早く切り替える事が出来る公私混同しない人間でないと、いろんな意味で潰される。

 おそらく、エリゴスさんはそれを自覚している。素直に感情を出すからこそ外交相手に軽んじられ、足元を掬われてきたのではないだろうか。だからこそ、適性ありとディーバさんから聞いて私を威嚇する。

 昼間、ディーバさんが「獣人は希望と能力により職に就く」と言っていたが、外交は「好き」と言う気持ちだけでは出来ない。魑魅魍魎の中に放り出され、腹の探り合いに終止するからこそ、やる気だけはあるが純粋なエリゴスさんでは駄目なのだ。ディーバさんもだ。入社二年目の、殻が沢山こびりついたひよっこの私の手腕に感嘆し、持ち上げるようでは駄目なのだ。

 総じて、彼等は純粋で優しすぎる。長である王様はともかく、支え発展させる立場に居る彼等が強か者で無ければならない。他国に攻め入る意志があったならば、戦力がいくらあっても敵の裏の裏を読め、戦略を練る頭脳がなければ潰されかねない。

 私はアルゴス君とマルケス君の居る、優しいこの国が好きだ。この地に骨を埋める覚悟も決まった。だから私は、今持てる能力を示し、彼等に見せ付ける。このままの日和見では駄目なのだと。

「ミーナ様。彼が我が国の外交官として活躍しているエリゴスと申します。ソルゴスの兄です。 ソルゴス、彼女がアルゴス様とマルケス様の召喚の儀によりこちらにいらしたミーナ様です」

 熊兄弟っ!!ソルゴスさんのお兄さんですか〜。

 兄弟揃って腕力がありそうなのだから戦闘職務を選んでいれば、ストレスもコンプレックスも抱え込まなくてすんだだろうとしみじみ思う。腕力と戦闘能力がエリゴスさんにあるのなら、それも売りにすれば良い。カードは多ければ多い方が良い。それも質の良いカードであれば最高だ。

「改めまして、エリゴス様、ご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いします」

 何も企んでませんよとばかりに微笑み、頭を下げた状態をキープする私にエリゴスさんが視線を向けたのが分かった。

「酒も飲めない者には余計に任せられんっ!!」

 舌なめずりをして待ち構える猟師の罠に、そうとは知らぬ純粋な熊さんが足を踏み入れる。

「お言葉ですが、私はお酒が飲めないのではなく、飲まないのです」

 ゆらりと頭を振りながら、エリゴスさんへと視線を合わせる。

 さあ、私の売り言葉を買いなさい!!

「はっ!!詭弁だな!!そんな状態でよくも言えた物だ!!」

 吐き捨てるように言うエリゴスさんが、次の言葉を言いやすいように口を開く。

「飲まないだけです」

 私の言葉は虚勢を張っているように聞こえるはずだ。

「ならば、こうしよう。お前に任せられるかどうか、私の前で酒を呑んでもらおう」

 かかった!!

 望んでいた展開に零れそうになる笑みを飲み込み、俯いてみせる。

「出来ないのかな?」

 勝ち誇った響きに不意に顔を上げる。

「出来ます!!」

 キッと睨むようにエリゴスさんを見据え、声を上げた私は意地を張っているように見えるはずだ。

「ミーナ様!!」

 ディーバさんが戸惑った声音で私の名を呼ぶ。

 やーん、心配かけてごめんなさ〜い。でも、今は謝らないです。

「陛下、この者との時間を頂きたい」

 渋面の王様はエリゴスさんの言葉に頷いた。

「許可しよう。だが、二人きりではなく、私とソルゴス、そして記録係としてディーバも出席する事が条件だ。のめるか?エリゴス」

「結構です。では明日、晩餐後で」

 あ〜。明日、お酒が呑めるんだ〜!!う〜れ〜し〜い〜っ!!

さあ、種は蒔いた。この種を成長させるか腐らせるかはまだまだ判らない。

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