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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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月夜の酒宴 4

 アルゴス君とマルケス君はよほどショックだったのかクッキーが配られた事にも気付かず、俯いたままだ。苦笑しながらルッツォさんが言う。

「ほれ。おまちかねのクッキー食べろ。食わねぇなら俺が貰うぞ」

 アルゴス君とマルケス君はルッツォさんの言葉にチラリと視線を流した。

「食べる・・・・けど・・・・」

「クッキー・・・・好きだけど・・・・」

 そんなに!?そんなになの!?

 クッキーが食べたいと即答し、はしゃいでいたとは思えない、あまりにも痛々しいと感じさせる二人の様子に、ホットケーキを作るのは三日に一回にしようと決める。ルッツォさんが私に向かってパタパタと扇ぐように片手を振って見せると子供達に視線を流し、続く動作で私を拝んだ。どうやら、彼が子供達の為に何か動いてくれるらしい。頷いて、軽く頭を下げるとルッツォさんはとても良い笑顔を返してくれた。

「アルゴス、マルケス、ミーナにお月様をもっと食べさせてって、お願いしたらどうだ?」

「したじゃん」

「そうだよ。ルーにいも見てたでしょ?」

 とうとうテーブルに懐いてしまった子供達はぐんにゃりと力無く、それでもぷりぷりと怒りながら答える。ニヤリと笑いながらルッツォさんが続ける。

「ああ。だけどな?一週間に一回ってのは毎日食べたいって言われたミーナの答えだろ?」

 それは言葉遊びだ。

 ルッツォさんの言葉に隠された意味が分かったのだろう子供達はガバッと音がしそうな勢いで頭を上げると私の腕にしがみつく。それはもう素晴らしい笑顔を浮かべて。

「ママ!!俺達、もうちょっとお月様、食べたいな〜」

「ママ〜。僕たち、七回ご挨拶しなくても良いと嬉しいな〜」

 即答、断言してしまいそうなはやる心を押さえつつ、答える。

「三日に一回ならどうかな?三回、おはようございますとおやすみなさいのご挨拶するの」

「「三回?」」

 きょとんとした顔で私を見た後、アルゴス君とマルケス君は指折り数える。

「明日の次の次!?」

「いっぱいじゃないね〜」

 よほど嬉しかったのか、アルゴス君とマルケス君は椅子から下りると、「やったー!!やったー!!」と笑いながら喜びのダンスをし始めた。

「アルゴス、マルケス、お月様とはそんなに美味なのか?」

 子供達の一連の行動に興味を惹かれたらしい王様へ子供達は自分達の席へと戻ると、身振り手振り交えながら話しだす。

「くっちーは固いけど、お月様は甘くてふわんふわんなんだっ!!」

「お月様はホットケーキって言うんだよ?まぁるくて可愛くて美味しいの!!」

「ミーナ、今度は私も食べ・・・・」

「「ダメ〜!!」」

 言葉を遮られた王様は子供たちに渋面をみせる。私は思わず笑いながら、アルゴス君とマルケス君に聞いた。

「アルゴス君、マルケス君、独り占めはしないんじゃなかったの?」

「あっ!!そうだった!!」

「でも、ママじゃなくても良いんじゃない?」

 慌てたようなアルゴス君にマルケス君が言うと、お互いの顔を見合わせ、にんまりと笑う。

「「ルーにいに頼んで!!」」

「俺かよ」

 ルッツォさんが声を漏らして椅子にぐったりと身を預ける。アルゴス君とマルケス君はくるりとルッツォさんに体を向けた。

「「ルーにい、がんばって!!」」

 この可愛い子供達には誰も勝てないに違いない。

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