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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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月夜の酒宴 2

「笑うな〜!!」

「そうだよっ!!ご飯は大事でしょ〜!?」

 笑いの発作が治まらない私達に、顔を真っ赤にして子供達が叫んだ。アルゴス君は椅子に立ち上がって両手を振り回しているし、マルケス君は椅子だというのにぴょんぴょんと跳びはねているのでバランスを崩して落っこちないかとひやひやしてしまう。

「そうだね。ご飯は大切だね」

「「ママも大事だよ!?」」

 はっとしたように顔色を変えた子供達は椅子に座り直すと私にぴったりとくっついてくる。

「ママは大好きだけど、ご飯は食べないとおっきくなれないだろ?」

「うん!!ママも僕たちと一緒にいっぱい食べれば、おっきくなれるよ?いっぱい食べよ?」

「そうだな!!ママ!!いっぱい食べておっきくなろ!!」

 アルゴス君とマルケス君には申し訳ないが、彼等が必死になって弁解すればするほど、可愛らしさと笑いのスイッチが押されていくような気がする。それに、私がもりもりご飯を食べても肥えるだけで、二人の言う所の成長には繋がらない。

 なんでこんなに可愛いのかな〜!!これが萌えってやつなの!?

 あれもこれもと自分達の前に料理をかき集めているアルゴス君とマルケス君にストップをかけた。

「食べ過ぎるとお腹いたくなっちゃわないかな?一度にいっぱいより、毎日、なんでも食べるほうが良くない?」

 じっと私の言葉を噛み締めるように聞いていたアルゴス君とマルケス君は眉を寄せる。

「「お腹痛いのは嫌だけど」」

 アルゴス君が困ったような表情で続ける。

「でもな?ママ、俺たちがおっきくてなってもママがちっちゃかったら大変だろ?」

 なにが大変なのだろうかと心の中で首をかしげる。マルケス君が真剣な表情で言う。

「うん。そうだよね。ママがちっちゃいままだと僕たちが歩いた時に怪我しちゃうかもだもんね」

 んん!?

 マルケス君の言葉から、アルゴス君もマルケス君ももりもりご飯を食べれば、人間がアリを知らず踏み潰すように、私を踏み潰せるほどの巨人に成長できると思っているようだと悟る。王様やソルゴスさんを見る限り、二人の理想の成長の仕方は出来なさそうだが、傷付けないように諌めるにはどうすれば良いだろうか。

「ママをプチッとしたら嫌だ!!」

「絶対、僕たち、泣いちゃうよ。だから、ママも頑張って食べて?」

「頑張んのは良いけどな?」

 黙って話を聞いていたルッツォさんが真剣な表情を作ってアルゴス君とマルケス君に話しかけた。口元がひくついているが、子供達は気付いていない。

「腹壊すと縮むぞ?」

「「えっ!?」」

 目も口も真ん丸に開いて絶句した子供達に、ルッツォさんは神妙に続ける。

「腹が壊れんだぞ?なんでも壊れたら元に戻すのは難しいだろ?壊れたもんがおっきくなれると思うか?」

 ルッツォさんの言葉に真っ青になったアルゴス君とマルケス君は、集めた料理を皆に返しはじめた。

「まだ大丈夫だよな!?」

「いつもと同じくらいだよね!?ルーにい、僕たち、縮まないよね!?」

 必死の形相で問い掛ける子供達に、ルッツォさんは俯いて肩を震わせている。おそらく、口を開けば笑い出してしまうからだろう。しかし、子供達はそうは思わなかったようだ。

「「ダメなの!?」」

 叫んで私にひしっとしがみつく。

「大丈夫だよ。アルゴス君もマルケス君もお腹痛くないでしょ?」

「「うん」」

 真剣な表情のままに頷く二人に微笑む。

「なら、大丈夫」

「「よかった〜」」

 言葉の通りに、安心した二人は私の膝に身を預けてきた。

「「ママも一緒におっきくなろうね!!」」

 笑顔で言ったアルゴス君とマルケス君に、とうとう我慢できなくなったらしい王様が吹いていた。

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