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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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波乱含みの晩餐 6

「異性で物を食べさせあう行為は永遠に愛を誓う神聖なものなのです」

 破廉恥と言われた上に説明する事をなすりつけあったものだから、どんな意味を持っていたのだろうと戦々恐々としていたが、結婚式で段取りと式次第を無視して誓いのキスをしたようなものだと理解して、眉を寄せられる行為に代わりはないが、猥褻物陳列罪や猥褻行為罪などに相当しないようだとホッと胸を撫で下ろす。しかし、知らぬ事とは言え、子供達と二回も儀式を行なってしまったのだ。二度ある事は三度あるとも言われるし、何かしたい時はディーバさんに聞いてからにしようと思う。講義を受けるのも良いかもしれない。

 ディーバさんの説明にアルゴス君とマルケス君が瞳を輝かせて身を乗り出す。

「俺達とママはずっと一緒ってこと!?」

「今、僕たちはママと一緒に居ようねって儀式したって事だよね!?」

 わざわざ椅子を下りて二人で手を取り合って「わーいわーい」と喜んでいる。

「いや」

 王様の短い否定の言葉にアルゴス君とマルケス君の動きが止まる。

「成人した男女が月の無い夜に一回だけやるのが正式な儀式として認められる」

「今夜は満月ですし、何度も繰り返していらっしゃいましたし、アルゴス様とマルケス様は成人なさってません」

「つまり、無効だ。儀式になっていない」

 王様とディーバさんの説明を聞いて怒りだすだろうと思われたアルゴス君とマルケス君の顔がくしゃりと歪み、みるみるの間に大粒の涙を流してわんわんと泣き出してしまった。

「ず、・・・・っと、ママ・・・・とっ!!」

「ママ・・・・とぉ・・・・いっしょ・・・・だっもん」

 悲しくて悔しくて堪らないと感じさせる泣き方の二人の姿は胸を締め付ける。はっきりと帰還の有無を宣言していない私が、自分達を残していつか消えてしまうのではないかと不安に揺れていただろう子供たち。彼等に私の軽率な行動で期待を持たせてしまった上に泣かせてしまった。席を立った私はアルゴス君とマルケス君を抱きしめる。帰還への迷いなどもう無い。私はアルゴス君とマルケス君のママになる!!

「儀式なんてしなくても私はアルゴス君とマルケス君とずっと一緒に居るよ」

「「ママ?」」

 私の胸に顔を伏せたまま、アルゴス君とマルケス君が不安げに言外に「なにが言いたいの?」と問い返してくる。

「アルゴス君とマルケス君がもう要らない!!って言うまで私は二人のママだよ。要らないって言われても、二人が迎えに来てくれたこの世界からどこにも行かないよ」

 言い終えたとたん、アルゴス君とマルケス君は音がしそうなほどに勢いよく顔をあげるとそのまま何度も首を縦に降る。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をハンカチで拭ってやると笑顔を見せてくれた。

「ミーナ、さ、まっ!!」

 ディーバさんの鳴咽まじりの呼びかけに顔を上げると興奮したような王様が問い掛けてくる。

「今の言葉は本当か?ここに永住してくれるのか?」

 私を見上げてくるアルゴス君とマルケス君の顔には「永住ってなんだ?」と書いてある。

「私はあちらには帰らず、この世界に住みたいと思います」

 言って、微笑むとアルゴス君とマルケス君は泣き濡れて輝く真ん丸お目々で見つめた後に、全開の笑顔を見せてくれた。抱きしめようとした瞬間、

「おーい!!酒、持ってきてやったぞー!!」

 宣言しながら入って来たのは、宣言通り沢山の瓶を載せたワゴンを押しているルッツォさんだった。満面の笑みを浮かべている彼に、無理だとは解っていても言いたくなる。

 空気読め。

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