波乱含みの晩餐 4
エリゴスさんの登場で落ち着くかと思ったお膝抱っこ争奪戦は、ソルゴスさん式お膝抱っこの望みを叶えようとするアルゴス君とマルケス君の共同戦線へと展開してしまった。エリゴスさんの登場を援軍到着ととらえたようで各々が説明してどうにか自分達の味方に着けようと奮闘している。
どうにか諌めようと席を立ったものの、口を挟む隙が無い。
「だからな?エリゴスもママに言ってくれよ!!」
「ママがソルゴスみたいにしてくれれば、僕たちは一緒に食べれるの!!」
エリゴスさんは必死にお願いしているアルゴス君とマルケス君の話を微笑みながら聞いている。子供たちの要望を飲んだらエリゴスさんは私に「願いを何故に叶えないのか。そんな事も出来ないのか」と詰め寄ってきそうで恐ろしい。私の自意識過剰で単なる被害妄想である事を祈りたい。
「な〜、エリゴスぅ〜」
「ね〜、エリゴスも一緒にママにお願いして〜?」
私がうだうだ考えこんでいる間にアルゴス君とマルケス君はエリゴスさんに可愛らしくおねだりしていた。
かっわい〜!!あんなおねだりされたら、誰でも頷いちゃうって〜!!
だが、二人のおねだりに口を開いたのはエリゴスさんではなく王様だった。
「アルゴス、マルケス、食事をする気が無いなら部屋に戻れ」
「「ペコペコだもん!!」」
王様の言葉に、二人はエリゴスさんの足にしがみついてプッと頬を膨らませた。
「ならば、自分たちの席へ落ち着け」
「「だって!!」」
納得いかないのだろうアルゴス君とマルケス君は、悔しそうに王様を見つめている。
「失礼」
ソルゴスさんの声が聞こえたと思った瞬間、視界が揺れた。
「え!?」
困惑の言葉が口をついた時には、ソルゴスさんの腕の中にお姫様抱っこで納まっていた。
ぅわ〜!!恥ずかしい〜!!おーろーしーて〜!!
ソルゴスさんは危なっかしい様子は一切見せず、涼しい顔で抱き上げたままだ。安定感もあるし恐怖心は抱かないが羞恥心は湯水のように湧いてくる。
なんで抱っこしたの!?ソルゴスさん!!お願いします!!おろして下さい!!
「アルゴス様、マルケス様、ご覧の通り、ミーナ様は大変華奢でいらっしゃいます。お二人を足一本で支えるなど無理です」
まさかとは思うが、子供たちへの説得と証明の為に私はお姫様抱っこされているのだろうか?確かにアルゴス君とマルケス君には手っ取り早く証明出来るだろうが、他にも方法はあったのではないかと泣き言をもらしたい。
「どうする?アルゴス、マルケス」
恥ずかしさに俯き、自分のお腹を見つめていた私の耳を王様の言葉が飛び込んで来た。その声音は面白がっているとしか思えないものだったが茶化してはいない。
「「ママ、ごめんなさい。嫌いになった?」」
はっと顔を上げ、アルゴス君とマルケス君を見ると、大きな目にうっすらと涙を浮かべて不安そうに私を見上げていた。ソルゴスさんは少し歩くと、アルゴス君とマルケス君の目の前に私を下ろしてくれた。
「嫌いになるわけないよ。私はアルゴス君もマルケス君も大好きだよ」
「「ママ!!」」
胸に飛び込んできたアルゴス君とマルケス君をぎゅっと抱きしめる。
「アルゴス君とマルケス君を一緒にお膝抱っこ出来なくてごめんね」
「「いーのっ!!」」
ぐりぐりと頭を擦りつけながら二人は言ってくれる。
「あ!!ソルゴスさんに頼んで鍛えて貰えば少しは・・・・」
「「ダメーッ!!」」
物凄い勢いで私の提案を遮ると、必死の形相で懇願してきた。
「もう言わないっ!!言わないから!!」
「ムキムキはやだ〜!!」
マルケス君の泣き言に王様は爆笑している。
「本当に良いのか?ミーナが鍛えれば、ソルゴスのように膝に抱っこしてもらえるんだぞ?」
「「いらない!!」」
アルゴス君とマルケス君の首がもげそうな勢いで左右に振られる。さっきまで私にソルゴスさん式お膝抱っこをねだっていたとは思えないほどだ。
なんで嫌がるのかな?良い考えだと思ったんだけどな〜。