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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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波乱含みの晩餐 2

 晩餐までは一時間もないとの事で、全員で執務室から隣の応接室へと移動してから、私達が作ったクッキーを王様とディーバさんとソルゴスさんに受け取ってもらった。子供たちには「独り占めは良くないケド、ママの作ったものは分けたくない!!」と、最後までごねられたのだが、「誰にも食べられずに腐っちゃったら私は泣いちゃうかも」と言ったら、本当に渋々とだったが折れてくれた。

 良かった〜。アルゴス君には「なら、俺達が腐る前に食べちゃうぞ!!」とか言われるかと思った〜。

 王様が包みを解いて、クッキーを口に運ぶ。

「うん。美味いな。よく作ったな。アルゴス、マルケス。難しかったか?」

「面白かった!!面倒臭いな〜って楽すると、くっちーはマズくなるんだ!!」

「バターをふんわりさせなかったり、お粉フリフリしないと、カチコチになっちゃうの!!ルーにいが作ったおさぼりクッキーは美味しくなかったよ」

 ぴょんと椅子から飛び降りて王様の席に行ったアルゴス君とマルケス君は、身振り手振りを交えながら得意げに教えている。ディーバさんとソルゴスさんも柔らかく優しい表情で頷いていた。その表情から二人がアルゴス君とマルケス君を本当に大切に思っている事がわかる。

「ありがとうございます」

 不意にディーバさんから礼を言われて戸惑う。ディーバさんの隣に座るソルゴスさんも私に向けて頭を下げている。

「アルゴス様とマルケス様が気後れする事なく楽しそうに陛下にお話ししているのはミーナ様のお陰です」

「これまではお二人は誰に対しても、どこか壁のような物があった。それが自然体で、しかも笑っておられる」

 ディーバさんとソルゴスさんの言葉にそういえばと思い返す。デスフラグを立てまくった王様との初めての接見で、アルゴス君は攻撃的に、マルケス君は震えながらも必死で王様に訴えていた。今のように気軽に話したり甘えたりはしていなかった。私が二人だけの世界を切り開いたのであれば、可愛いだなんだと浮かれるだけでなく、アルゴス君とマルケス君の成長を責任持って見守らなければならない。背筋を正す。

「ご指導、よろしくお願いします」

 すっと出た言葉と共に頭を下げた私に、「こちらこそ」とディーバさんとソルゴスさんの柔らかい声音がかけられた。頭を上げて、じんわりと胸が温まるのを感じていると子供たちが戻ってきて両隣に着席した。

「突然すみませんが、お聞きしたかったんです。クッキーと言うこちらにない料理の名前が通じていた理由はおわかりでしょうか?」

「憶測でしかありませんがミーナ様が説明されたからだと思います」

「説明・・・・」

 零れた私の言葉に小さく頷いてからディーバさんが続ける。

「はい。ミーナ様の名前しかり、折り紙しかり、すべて、この名前はこう言うものだと説明された時だけ理解出来ました。から揚げやアルゴス様とマルケス様とのオウム返しの時にはミーナ様はそれの名前だけで説明はされてなかったと思います」

 憶測だとディーバさんは言ったが、それが真実な気がする。言われて気付いたのだが、確かに私がから揚げやフライの名前を口にした直後はピー音でしかなかったはずだが、王様にこう言うものですと説明してからはピー音は聞こえなくなり、意味も通じていたように思う。試してみようとアルゴス君とマルケス君に協力してもらう。

「から揚げ」

「「から揚げ〜」」

「ナポリタン」

「「※※※※※」」

「ホットケーキ」

「「ホットケーキ〜」」

「チョコレート」

「「※※※※※※」」

 何個か単語をオウム返しにしてもらった感触から、ディーバさんの憶測は憶測ではなく真実だと確信する。

「「ママ、次は〜?」」

 期待に満ちた、ワクワクとした表情で待たれると、「理解出来たからおしまいだよ〜」とは言えなくなる。

「それじゃぁ・・・・」

 侍女さんが晩餐の知らせを持ってくるまでオウム返しの遊びをし続ける事になったのは何気に疲れました。

 もちろん、子供たちには言いませんよ!!

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